ロシア→アメリカ
ロシアがアメリカの血を飲む描写があります
前作と前々作と同じ世界観(キャラの矢印や関係性など)
最近暗い話が好きすぎる
いきなり視点が三人称からロシア視点に変わります
◇◆◇◆◇
「はあ……はぁ……」
1人きりの部屋に荒い呼吸が響く。汗をコートで拭うのは北の大国、ロシアの化身である。彼は手に血に塗れたナイフを持ち、ベッドへ倒れ込んでいた。
「クソが……殺しの案件2つも回しやがって……」
国である以上、殺しや拷問など表沙汰になってはいないが、そういう穢らわしい仕事を受け持つこともある。
ある時は無能な政治家であったり、ある時は優秀過ぎて気付かなくて良かった事に気付いてしまった一般人や弁護士であったり等、その種類は様々だった。
多くの国はその物騒な案件を毛嫌いしており、どうかその案件が自分に回って来ませんように、と祈るばかりだった。だが、その点においてロシアは異質だ。いくら殺しの案件が回って来ても平気な顔で受け持ち、淡々と任務をこなす。
殺しに罪悪感を感じ無いわけでは無い。ただロシアは他の国よりも、他の生き物よりも独特なのだ。しかし流石に一日に2度も殺しをするとなると息が詰まる。
疲れた、というのもあるがそれよりも。
「はあ、はあっ…」
荒かった呼吸がやたらと熱を帯び始める。顔が暑く赤くなっていく。
ロシアは俗にいう『快楽殺人鬼』と言うものだった。殺人から興奮を得るというもの。被害者の叫び声や逃げ惑う姿から興奮を感じるもの、殺しをするスリルから興奮を感じるものなど様々だが、ロシアはその後者にも前者にも当てはまらなかった。
「……血」
血まみれのナイフをじっと見る。ロシアは俗に言う血に興奮するタイプの快楽殺人鬼であった。
しかし、血と言っても指を切って少量の血が出たとか転けて血が滲んだとか、そんな子供騙しの血では無い。人が死んだ時に流れる血にロシアはどうしようも無い興奮を覚えるのだ。
ナイフに付いた血を、拭うように舐めとる。
「まっず……」
ロシアは血で興奮するだけなので、血を美味しいと感じる味覚は持ち合わせていない。しかし、体は確実に蒸気していってしまう。
何故血で興奮するのか、その理由はロシアには分からなかった。1度そういう精神科等にも行ってみたが、明確な理由は分からず、医者からは『殺人への嫌悪を紛らわそうと脳が勝手に興奮してしまうのでは無いか』と言われたが、俺が興奮するのは殺人の時に流れる血であるが、殺人への嫌悪なんかは無い為恐らく違う。
殺しだけでなく、血であるからこその理由がある筈だ。例えば、血は……
「……赤色」
思った事を無意識に口に出していた。確かに血と言えば赤だ。小学生の連想ゲームの様な自分の想像力に呆れる。
もっと他。他に血と言えば。赤色と言えば。
「アメリカ…」
また思った事を無意識に口に出していた。口から出たのは世界の大国、あらゆる分野でNo.1をかっ攫うアメリカ。
自身と関係は深いが、決して仲は良くない相手だ。
確か彼奴の国旗にも赤色があった。でもそれだけだ。赤色だったら中国の方が主張がデカイ。なのに何でかアメリカの顔を思い出してしまう。
いつも自分に自信満々で、傲慢で、時に冷酷で、世界の警察を自称する癖に実は自分と日本にしか目が行っていない奴。
心底嫌いで心底憎いはずなのに、アメリカの事を思うと止まらなくなってしまう。
彼奴はずっと俺を見ない。何をしても上辺だけで、奥では何とも思っちゃいない。
ムカつく。アメリカにも日本にも。日本は俺の知らないアメリカを知っている。彼奴はどんな風に笑う。彼奴はどんな風にお前に話しかける。彼奴はお前の前で泣くのか。
彼奴の。
彼奴の血塗れた姿はどんな感じなんだ。
「……はっ!?…俺は今…」
俺は今何を思った?
興奮とは全く違う理由で鼓動が速まる。頭から冷水を浴びせられたみたいだ。背筋に嫌な汗が伝う。
「……寝るか」
そうだ、疲れと寝不足でこんな可笑しな思考回路になってしまっているんだ。無理は禁物だろう。早く寝てしまった方がいい。じゃないと何か仕出かしてしまいそうで怖い。
そう考えると着替える時間すら恐ろしく、俺はベッドに寝っ転がったまま眠りにつこうとした。なのに─────
ガチャッ
「おいロシア!俺のスマホ取ったのお前だろ!!」
「は…?」
扉の開く音と共に今1番会いたくなった奴が入ってきた。
「アメリカ……?」
「日本のスマホゲームしようと思ったら何故か無いし!こんな事やるのフランスかお前くらいだろ!?」
頭を掻きむしり全身で怒りを表現するアメリカに、俺は無意識に喉を鳴らしていた。
何だが体が可笑しい。
脳が乾く。
心臓が五月蝿い。
目が、手が、足が、体の制御が効かない。
喉が渇いた。
「おい聞いてんのか…うぐっ!?」
声を荒らげるアメリカを無視して、ベッドへと押し倒す。ギシッとベッドが嫌な音を立てた。
「ロ、ロシア…?」
頭に血が上っていたアメリカも、俺の様子が可笑しいことに気付いたらしい。抵抗らしい抵抗はせずに、不安気にサングラスの奥の瞳を揺らした。
既に他の血によって汚れたナイフを放り投げ、まだ使っていなかった新品のナイフをアメリカの肩口に当て、
「お前、何する気…ぐぅうッ!?い”ぃ”ッッ!!」
刺した。
途端に吹き出る鮮血。嗚呼、美味しそうだ。
俺は傷口にかぶりついた。そのままゴクゴクと血を吸い上げ飲んでいく。
思ったより美味しくない。当たり前か。俺は血を、人間の肉を美味しいと感じるカニバリズムじゃないし。
でも、なんだかクセになる。
血を飲めば飲む程、喉が潤っていく。興奮からか脳が焼けるように暑い。
それさえも心地よかった。
もっともっとと、傷口を広げるように舌を動かせば、アメリカはあまりの激痛を何とか逃がそうと体をくねらせた。
「ぃ”だッ!い”たぃ”、い”だい”からッッ!!」
絶叫しながらこちらを止めさせようとする姿が愛おしくて、もっと虐めたくなる。
俺は血を口に含み、衝動的にアメリカの唇を奪った。
「んぅう”!?」
無理矢理口の中をこじ開けさせ、俺は含んでいた血をアイツにお裾分けしてやった。
驚愕に目を見開き、痛みに泣くコイツを一体どれほどの奴が見てきたのか。
アメリカは滅多に泣かない。イギリスに植民地にされても、自分のせいで世界恐慌なんて地獄になっても。
嗚呼、でも1度だけ。1度だけ泣いていたらしいな。
第二次世界大戦の終戦時、アメリカは日帝を抱き抱え静かに涙していた。そう、ソ連から聞いた。そういえばソ連はあの時何かを諦めたような顔をしていた。それが何かは分からなかったが。
「ふ、ぐぅ…は、ぁ…」
ボロボロと泣き出したアメリカ。目から次々と流れ出る涙を必死にとり払おうとしている。
「く、ははっ」
そんなアメリカに、思わず興奮と恍惚が入り交じった笑みが零れる。
アメリカがイギリスでもなく、日帝でもなく、日本でもなく、俺のせいで泣いている。
下腹部が先程よりも熱を持った。興奮に目の前が真っ赤に染る。また喉が渇いた。キスをしたい。
そう思うと、また衝動的にキスをした。
今更相手の気持ちを考えたって結果は変わらない。欲望のままに、俺がアメリカへナイフを突き立てた瞬間、俺とコイツの関係は終わった。
「……ぅっ!…かひゅッ、ヒ…!」
怒りからか恐怖からか過呼吸気味になったアメリカを見て、仕方なしに唇を離してやる。
段々と早くなっていく呼吸音とそれに伴い痙攣していく身体。
血まみれになった肩を必死に押え、痛みから意識を逃そうとする姿の何とまあ健気な事。
「…ロ、シアッ…!なん、でッ!お、まえっ…!」
何でこんな事をするんだ。そう言いたいんだろう。
「さあ?何となくだよ」
口から出たのは全くのデマカセ。
しかし、俺の答えを聞きアメリカは目を見開いた。
「どうしたアメ公?特別な答えが返ってくるとでも期待してたか?」
お前は俺の気持ちを受け取らない癖に?と、最後の一言は流石に心の奥底にしまい込んだ。
そうだ。アメリカは傲慢で、冷酷だ。
俺がアメリカに特別な感情を持っていると確信している傲慢さで、その癖冷酷に、俺の特別な感情は一切受け取ろうとしない。
嗚呼、俺はお前のそんな所が憎くて憎くてしょうが無い!今すぐブチ殺したいくらい!!
「……ゴホッ…えほっ…ロシア」
「あ?」
血を吹き出しながら、アメリカが俺へと手を伸ばす。やがて、その手は俺の頬を優しく撫でた。
思わずその手が下がらない様掴み、アメリカの顔を覗き込む。
アメリカは血の流しすぎで顔は青白く、目も焦点があっておらず、口もワナワナと震えている。しかし、何か言おうとしていることは分かった。
「アメリカ?」
「…はあ、はあッ───
─────────嘘吐き」
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こんにちは由珠です!
遂に書けたロシア×アメリカ!
思っていたよりアメリカが可哀想なことになってしまいましたね
反省も後悔もしてないけど
コメント
1件
可哀想は可愛いんだッッッ!(???)