人通りの少なくなる住宅街。
石畳や砂利で、どこまでも伸びる景色に白い結晶が舞い降りる。
街中を偶然歩いていた子供がそれを見た瞬間、笑顔になるのが僕は好きだ。
そして、街に降り積もるであろう小さな結晶たちもまた、誰かを笑顔にすることが出来る。
窓から見える、ただの景色だけど、僕はそれがとても好きだった。
傘をさして外に出た日はいつも雨降りだった。
雨は苦手だった。
発達し切っていない自身に、容赦なく幾本と刺さる湿気が頭痛を催すから。
結晶が舞い降りる日には、親から頑なに「外には出るな」と言われていた。
だから宙を舞うあの結晶を食べようとする犬でさえ、いいなと、心底羨ましく思った。
メリークリスマス!
今日はみんなの大好きなクリスマス。
窓から見える景色に彩りがあるのはきっと、その中でみんなが楽しんでいるからだっておとうさんは教えてくれた。
「マッチ売りの少女」っていう絵本を買ってもらった。
雪の降る街の中で、おとうさんに叱られないためにマッチを売る話だけど、最後は死んじゃう。
あまりの悲しい物語に僕が泣いちゃうと、おとうさんはぼくを叱った。
マッチのおんなのこは、こんな気持だったのかな。
親の言いつけを破ったある日、あの結晶の降る夜のこと。
僕はこっそりと外に抜け出した。
あんまり外に出たことは無かったから、僕は道がわからなかった。
でも次々と降ってくるあの結晶をじゆうに掴めることがうれしくてたまらなかった。
手を伸ばせば手中におさまる綺麗な結晶が、手の中ではおともせずに消えていく。
なんとも言えない、すごく弱い、ちいさいいのちにぼくはすこし泣いちゃった。
目が痛くなったとき、ぼくは白につつまれていた。
左目のすぐそばにある結晶におもわず息をふきかけてみたけど、溶けなかった。
くちの中がつめたい。
体にチカラが入らないのを、ぼくは知らなかった。
辺りを見回せばみえる、みずいろにひかる「たいよう」。
たすけてを言いたくても、声が出ない。
『〇〇。眠くなってきたらなんて言うんだい?』
あぁ、これならいえそう__
『おやすみなさい!』
「おや…み…、さい…」
『マッチ売りの少女』
大晦日の晩に貧しい少女が雪の降る町の中、マッチを売り歩いていました。
途中、馬車をよけた拍子に靴が脱げ、裸足になり、帽子も被らず震えながら一日中歩いてもマッチは売れません。
家へ帰ればお父さんに叱られるに決まっています。
あまりの寒さで凍えてしまった少女は家の影に佇み、マッチを一本取り出して擦ってみました。
「シュッ」と火花が出ました。
手をかざすと暖かくストーブの前に座っているような気がしました。
でも、すぐに消えてしまいます。
そして、二本目、三本目と擦る度にガチョウの丸焼きや美味しそうなごちそう、クリスマスツリーが見えてきました。
次から次へと何本も擦った時に少女を一番可愛がってくれた死んだおばあさんが現れました。
そして、おばあさんが消えてしまわないようにマッチを一束ぜんぶ擦ってしまいました。
すると、少女はおばあさんに抱きかかえられながら空高く天国へ舞い上がっていきました。
そこはもうお腹を空かせることもなく、寒さに震えることもなく悲しいことは何一つないところでした。
大晦日の日に少女はいっぱいのマッチの燃えがらのなかでこごえ死んでしまったのです。
新年の朝、こごえ死んだ少女の姿を見た人々は「かわいそうに、あまりに寒かったのでマッチを擦って暖まろうとしたんだね」とお祈りをささげました。
しかし、少女の見た素晴らしい幻のことを知っている人は誰もいませんでした。
コメント
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何度もコメントしてしまうほど魅入る作品で本当に凄いです…😭幼いながら厳しい教育を受けてきたことが文章中から存分に分かりました!!続きも頑張って下さい!!
語彙力天才ですかね???
童話入れるって発想すごすぎ でもそれ読んで感動しただけなのに怒るって何で...