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8 - ◆ 7話 子どものMINAMOトラブル

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2025年12月27日

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◆ 7話 子どものMINAMOトラブル
市内の小学校。

教室は明るく、緑の植物が窓際に並び、

子どもたちの机には文具と──

小さな専用MINAMOケースが置かれていた。


小学四年の 藤木ひより(10) は、

肩につかないくらいの髪を後ろにまとめ、

水色のシャツに薄灰のスカートという元気な格好。

額には子ども向けのミニMINAMO。

レンズ上部に丸い緑のマーカーが付いていてかわいらしい。


国語の授業中、

ひよりは視界の右端をチラチラ見ていた。


『漢字の書き順、教えますか?』


MINAMOがそっと促す。


ひよりは口を開かず、

喉をこっそり震わせる。


「……あとで。」


その音のない返事は、

周りには聞こえないはずだった。


しかし──

彼女は癖になっていた。


また震わせる。

また震わせる。

また震わせる。


先生が黒板に向いている間も、

無意識に“会話”を続けてしまう。


前の席の男の子、

佐久間れん(10) が振り返って小声で言う。


「ひより、めっちゃ喉動いてるよ。バレるって。」


れんは黄緑のパーカー、

髪は短めで、子ども用MINAMOをちょこんと着けている。


しかしひよりは気づかない。

視界に出るアシストが便利すぎて、

知らないうちに“頼りきり”になっていた。


その時──


「ひよりさん。」


先生の静かな声が飛ぶ。


教壇に立つのは 雨宮(あまみや)先生、45歳。

淡い緑のシャツに灰のカーディガン。

落ち着いた雰囲気で、優しさと厳しさの中間のような表情。


「授業中の無声発話、控えましょう。

 黒板を見ていなかったね?」


ひよりはビクッと肩を上げた。


「ご、ごめんなさい……」


周围から、クスクスと笑い声。

恥ずかしさで耳が熱くなる。


先生は優しく続ける。


「みんな、最近多いです。

 便利なのはわかるけど、

 “考える力”がMINAMOばかりになってしまう。」


黒板に大きく書かれる。


今日から導入:

“アナログ時間(15分)”


教室がざわついた。


「えー!外すの?」

「見えないと不安だよ」

「黒板の字ちっちゃいし……」


雨宮先生は静かに頷く。


「だからこそ練習するんです。

 MINAMOは素晴らしい道具だけど、

 “外の世界を見る力”も大事。」


そう言って、

先生自身もメガネを外す。


クラス中の子どもたちも渋々外し、

ケースにしまっていく。


ひよりも外すと──

視界が、急に軽くなった。

教室の色味が自然に感じられる。


(うわ……空気がちがう……)


周りを見ると、

数人の子が喉を動かすクセで困っていた。


れんも手首を軽く返しては、

「……あ、出ないんだった」と苦笑している。


ひよりはひそかに安心した。


(みんな同じなんだ……)


その時、

黒板の文字が少し遠いことに気づく。


今までMINAMOが補正してくれていたのだ。


ひよりは手を挙げた。


「先生……あの……

 黒板、ちょっと見えにくいです。」


雨宮先生はにっこり笑った。


「大丈夫。

 ちゃんと見えるように字を大きく書くからね。

 アナログの時間は、みんなで作っていくものです。」


教室に静かな空気が流れる。


MINAMOが当たり前になった世界で、

“外す時間”は逆に新鮮だった。


ひよりは、

ほんの少しだけ胸が軽くなるような気がした。


(アナログって……ちょっと悪くないかも)


外したMINAMOは、

机の上で淡く光っていた。


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