「…え?」
私は目を見開いた。
だってそこは、さっきまでの世界とは全然違っていたのだから───
私は佐藤 灯(さとう あかり)。今年で高校1年生になる。地元の高校に通っていて、今は夏休みの真っ只中だ。
「おーい、あかり!いくらなんでも早すぎでしょ!?」
同級生の奈々が声をかけてくる。私達は噴水前で待ち合わせをしていた。
「ごめんごめん、ちょっと楽しみで」
私が笑いながら言うと、
「うわぁぁ、肝試しするのに楽しみとか、正に“肝が据わってる”ね」
奈々はおどけて笑ってみせた。私も苦笑で返す。
行こっか、と私達は歩き出した。
そもそも、なぜ肝試しに行くという話になったのか。言い出したのは奈々だった。
「ねぇ、今度の休みにさぁ、暗闇トンネルに肝試しに行かない?」
暗闇トンネルというのは本当の名前ではなく、長いトンネルなのに照明が無いから暗闇トンネルなのだそうだ。
クラスメイトからあがるのは「うひょー、勇気あるね奈々」「ちょっと私は用事があるから行けないなぁ」「肝試し?つまんねぇー」等々。
結局私以外は肝試しに行くという人はいなかった。
歩いて20分くらい経った。
ついに到着。
山のすぐ近くにある小さなトンネルは、暗闇トンネルと呼ぶには相応しい、真っ暗なトンネルだった。
私は首に掛けたカメラに手を触れる。心霊モノが好きなので、いつでも心霊写真が取れるようにと自分でお金を貯めて買った。
「マジで真っ暗だぁ…」
「特になんも無さそうだけど…とりあえず行こか!」
───この時の私達はあんなことになるなんて、知る由もない。
私達はトンネルの中へと歩き出した。