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祝宴の喧騒は完全に消え去り
世界には俺とリリアーヌの二人しかいないかのような静寂が部屋を支配していた。
豪華な天蓋付きベッドの上
リリアーヌは薄いシルクのナイトドレスに身を包み、窓から差し込む青白い月光を反射して
まるで彼女自身が淡く発光しているかのように見えた。
(……いや、無理だ。無理無理無理。抱けるわけないだろ、こんな聖域!!)
俺はベッドの端に腰掛けたまま、膝の上で拳を握りしめていた。
これまでの人生、どんな難解な公務も、どんな狡猾な政敵も、俺の「社畜スキル」と「効率化」で粉砕してきた。
だが、目の前の「最推しと結ばれる」という、前世の俺なら発狂して喜ぶはずのミッションを前に
俺の全システムは完全にフリーズしていた。
「……デューク? どうかした?」
リリアーヌが、戸惑ったように俺の背中に声をかける。
その声に含まれた微かな熱っぽさと、期待と不安が入り混じったような震えに、俺の背筋に電流が走る。
(だめだ、尊すぎる……ッ!!)
俺みたいな、前世で死ぬまで働き詰めただけの男が
この至高の芸術品のような肌に触れて、あんなことやこんなことをしていいはずがない。
これはもはや、人類の至宝に対する器物損壊罪
あるいは聖域侵犯の重罪に相当するんじゃないか!?なんて考えてしまう。
「あ、ああ、ごめん。リリアーヌ……いや、あの、君が、あまりにも綺麗すぎて……俺みたいなのが、その、君を汚していいものかと思って……」
俺が本気で悩み、視線を泳がせながらブツブツと独白に近い言い訳を並べていた、その時だった。
「……はあ、本当にバカ」
背後で、衣擦れの音がした。次の瞬間、視界が急転回する。
「うおっ……!?」
不意を突かれた俺の肩を、リリアーヌの小さな手が力強く押し込んだ。
バランスを崩した俺は、抗う間もなく柔らかなシーツの上に仰向けに倒れ込む。
視界が開けると、そこには俺の上に跨り、両手を俺の胸について見下ろしてくるリリアーヌの姿があった。
月光を背負った彼女の顔は、これ以上ないほど真っ赤に染まっていて
大きな瞳には羞恥と、それを上回るほどの「怒り」が宿っていた。
「私が……っ、私がここまでしてあげてるのに、抱いてくれないなんて………怒るんだからっ!」
「リリアーヌ……っ」