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「良かった……ルディックは私の事……見えるんだね」
「見えるよ、それに警備室をしてた時君の声がずっと聞こえてきてたんだ」
「…………本当は成仏してママを安心させたい、だけどきっと……ママを私を殺したあの男の事を恨んでる、だからあの醜きあの男が捕まるまでは生き霊として現世に留まる事にしたの、それにねルディックに会いたかったから」
「ユリメア…………」
こうしてルディックは亡霊になって現世に現れた彼女と不可思議な日常を過ごしていく。「ルディック、警備……中々手こずってるみたいだね、怖くない……?」
「怖くないなんて言ったら嘘になる、君は知ってると思うけど、俺は恐怖を感じる事が何よりも苦手なんだ、しかもあの店は元々から妙な噂が無数にずっと流れてたくらいだし、それに機械人形の挙動が何だか暴走してるように感じたんだよ」
「暴走……?」
「ああ、動きがやたらと攻撃的になってまるで怒ってるみたいに、何か知ってる事ない?」
「多分……あの男が機械人形達を改造して基本プログラムを改竄してるんじゃないかな‥…もしくは他の関係者による仕業……」
そう言い、ルディックとユリメアは対話し、情報共有をし合った。
「ルディックってほんとに不思議だね。私が亡霊の姿になって現れてるのに全然怖がってない、君は根っからの怖がりだった筈なのに」
「怖くなんかないよ、だって俺達二人は幼い頃からの幼馴染の仲だったろ?君が死者になっても変わらない安心感さえこの瞬間、物凄く感じれるよ」
「なんだか、嬉しい…だけどもう昔みたいにぎゅって抱き合えないね、それに一緒になって遊べもしなくなっちゃった……ごめんなさい」
そうやらユリメアはそうぼやくように言った。虚しくも散ってしまった幼きたった一つの生命。昔ながらのたった一人の幼馴染と再会出来たと思ったら、自分はもうこの世に居ない死者になっていた、無惨にも殺害され、死んだ自分自身を悔やむ。
でも、そんな彼女にルディックはこう言い返した。
「何でユリメアが謝る必要があるんだ、君は殺されたんだから犠牲者…つまり被害者なんだ。君は何も悪くなんかない、悪いのは君を殺害したその男だ、どんな姿であろうとも君がこうして姿を見せてくれただけでも嬉しいよ、だってあの誘拐殺人事件の噂を聞いた時……俺も信じられなかった。たった一人の幼馴染が突然誰かに殺されてこの世を去ったなんて……受け入れられないよ」
そう彼はユリメアに心の内を打ち明けた。
すると感情が高まり、涙をポツン……ポツンと溢していくユリメア。彼女はもう抱き合えない、そう分かっていても彼の、自分にこんなにも寄り添ってくれている優しさに甘えていたい‥……そう思ったユリメアは透明に透ける身体でそっとルディックに飛びついた。
「一緒に暮らそう、君には安心した顔であの世に戻って欲しいから」
「ありがとう………」
彼女がそう言って微笑んだその時、透明な身体が色を取り戻し、はっきりと彼女の姿が視認出来るようになった。
でも、もう死者となってしまった彼女の姿は……彼以外の人物には見えないようだ。
「何だか、本当に不可思議だ……ユリメア、君は死んだ筈なのに……まるで目の前に居る事で君が殺害され死亡しこの世から去ったっていう出来事が夢や幻だったんじゃないかって、妙な錯覚に陥るよ」
「私自身も、とても不思議な気持ち 」
その後、二人で楽しい時間を寛ぎ……午後十時頃になると警備に向かい始める。時間は深夜十一時、今日も恐怖の警備時間がやってくる。
「はあ、今日も何とか乗り切るか」
「ルディックならきっと乗り越えられるよ、私はそう信じてる」
「亡霊姿の幼馴染に励まされるって何だか奇妙な話だな、けど頑張るよ。俺は殺害殺害されて亡くなってこの世を去った君の分まで生きるって決めたんだ、無念を晴らす為にもな」
「ありがとう」
こうして、ゆっくり足を踏み入れる。異様に空気感が変わり、以前よりも異様な不気味さが際立って居心地が悪い。
「此処に立ち入る度にあの男に対して憤りと憎しみ…殺意が湧いてくるよ、あの男が……俺の大切な幼馴染の命を奪った彼奴の事がほんとに憎いよ」
「ルディック、心を落ち着かせてやってこう、気持ちは……分かるよ」
「分かってる……分かってるんだよ、でも……あの男のせいで君が死んだって事実は否定しようのない事じゃないか」
「……………それでも、死んでも尚こうやって一緒に居られてる、それだけでも…もう十分だよ 」
ユリメアと共に今日も恐怖心と闘いながら、慎重に警備室へ足を踏み入れる。
「そういえば、ユリメア……君は殺されて機械人形の中に押し込まれたんじゃ……何でこうして自我を保って現世に居られるんだ?」
「もうウィザードボニーとはお別れしてきたよ、完全に魂の定着から離れたから、だから今の私は魂と死んだ肉体だけの存在……本当の身体はウィザードボニーの中に閉じ込められたまんまって事、もう気がついてるんでしょ?機械人形達が暴走してる事に……私、あの子達に宿っている子供の達の亡霊の魂を解放して、あの男に反撃したいの。あの誘拐殺人事件から数年は経過してるけど、だからといって殺害した張本人を許した訳じゃない」
「だから、一緒にあの男を……ウィリアム・アフトンを地獄の底まで追い詰めよう、彼奴を地獄に突き落とすまで、安心して成仏も出来ない」
「そうだね」
そうして、話しているとあっという間に警備の時間になった。今夜も引き締めて挑もう。
「機械人形達には細心の注意を心掛けてね、惑わされてガワを被らないようにしないと……あの子達、暴走してるから‥せめてもの成仏をさせてあげたい」
「犠牲者の亡霊同士、その分痛みを分かち合っていたんだな」
警備が始まった途端、息つく暇もない程に襲いかかって来ようとする機械人形達。
彼は傍に憑いている亡霊少女のユリメアから暴走状態になった事による機械人形達の行動パターンの変動分析に耳を傾けながら、慌てる事なく冷静に警備に目を向ける。
「ルディック、頑張ろう!大丈夫、私が傍にいるから!危険が及びそうに、危機的状況の時は助けるから……!」
「ありがとう、ユリメア。この世から去って死んだ肉体の亡霊‥‥生き霊になっても尚、こんな俺の事を忘れないで居てくれて」
「それは君だって同じじゃん、私の方こそお礼言わせて……ルディック、私の死後も私の為に悲しんでくれて、そして何より私の事を記憶から忘れないで居てくれてありがとう」
そんな他愛ない何気ない対話を挟み、警備をしていく事警備開始から約二時間、三時間と…順調に機械人形達の行動を読み、それに応じた対処を。
怖がりで臆病者な性格の彼だが、昔ながらの付き合いである今は亡き者となった『たった一人の幼馴染』のユリメアが傍に居る事で怖くても怖けず立ち向かえる勇気を貰えたようで、堂々とした姿勢で挑めている。
「あと、もうちょっとで何とか今日の警備ノルマは完了だな、それに警備員として雇われてしまった以上……それに君の仇を取って無念を晴らすまで、何があっても諦めたくないんだ……それくらい、君を喪失した傷は深く、あの男が何よりも許せないんだ、君を殺害して闇に葬ったウィリアム・アフトンって奴が……」
「ルディック…………」
こうして揺らぐ事のない、強い復讐心を胸に抱え込みつつ残りの警備時間を