テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
星のおまつりが終わってから、村は少し静かになった。でも、広場に飾られた布や鈴はそのままで、
風が吹くたびに、あの日の音や笑顔を思い出させてくれた。
わたしはお兄ちゃんと手をつないで、
ゆっくり森の入り口まで散歩した。
お兄ちゃんの歩みはまだ少し弱いけれど、
顔には前よりもずっとはっきりした笑顔があった。
「ミナのおかげだよ」
お兄ちゃんがそう言って笑ったとき、
わたしはあわてて首をふった。
「ちがうよ。わたしはちいさなことしかしてないの。
花を持ってきたり、卵を守ったり、手紙を書いたり…」
するとお兄ちゃんは、立ち止まってわたしの手をぎゅっと握った。
「それが一番大事なんだよ。
小さなことでも、だれかを想ってやったことは、
本当に大きな魔法になるんだ」
その言葉を聞いたとき、胸がじんわりして、
女王さまの声を思い出した。
──「あなたはもう魔法を持っているのですよ」
わたしは空を見上げた。
そこにはいくつもの星がきらきらしていて、
まるで女王さまが「よくやったね」とほほえんでくれているみたいだった。
「また、あしたも」
わたしは小さくつぶやいた。
あしたも、あさっても、そのまた次の日も。
小さな手でできることを探して、
大切な人と笑顔をつないでいこう。
──こうしてミナの小さな手は、優しさと幸せをつなぐ、本当の魔法になったのです。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!