心地よい
一面の花畑。
空気は澄み、気温も申し分ない。
花畑に人影は ない
小動物の気配もない。
唯一居るのは蝶だけ。
羽音を五月蝿く鳴らし、鱗粉を撒き散らす
うざったらしい。
花畑にはカキツバタ、イベリス、ブーゲンビリアそれとアカいバラ。
この花々だとどうしてもバランスが悪いと思ってしまう。
花を押し潰しながら寝そべった。
背中にはバラの棘が刺さる。
でも、そんな事はどうでもよくなってしばらく仰向けの状態で寝ていた。
するとまだ眠たくもないのに、段々と意識が遠のく気がする。
無意識に顔を横に向けると、
黒い斑点のあるアカいバラがあった。
下には赤い液が滴っていた。
🇪🇸 「………」
今日は曇り。
視界にペンキが垂れているようにぼやけている。
カーテン越しの外の世界
太陽は厚い雲に隔たれたれ、地球に十分な光を与えることなく役目を終える
重い足を動かしてふらつきながらもリビングに向かう。
いつもと何ら変わらない家。
視線も私に向いたままだ。
一時は精神が壊れそうになったが、最近は
どうにか繋いでいる。
スペインしかいない家に食器が擦れるカチャカチャとした音が響く。
朝食はコーヒーだけ。
ほのかに苦い香りがキッチンを包む。
🇪🇸「…………」
前のスペインからは想像のできない程の酷い隈が今までの生活を物語る。
今日はヨーロッパの国々での会議だ。
スペインは国の化身。
ストレスのせいであまり体調は良くないが
私情で今後に関わる会議を休むことは許されない。
朝食を済ませ、しっかりとした生地のスーツを着こなして家を出る。
いつもなら何でもない道も不安感に襲われて今すぐにでも引き返したくなってしまう
それでも、自分は国の化身だ。
皆の頼れる存在に、太陽になってなくては
いけないのだ。
寝れない、寝させてくれなかった夜に沢山考えた。
考える時間だけはあった。
歩きだし会議をするビルに向かっている途中、少し人が出てきだした。
周りの雰囲気も明るくなりだし、より自分が浮いているような気がした。
すると前から1人の女が歩いてきた。
スペインを見るなり小走りで駆け寄って、
国民「スペイン様!」
🇪🇸「…ッあぁ、…おはよう。」
いきなり話しかけられたものだから、言葉が詰まってしまった。
すこし、ぎこちなかっただろうか。
国民「最近見なかったので心配してたんですよ?」
🇪🇸「すまなかった…、…すこし風邪を拗らしていてね」
国民「そうですか…気を付けて下さいね!
この辺でも風邪が流行ってるみたいですし…」
🇪🇸「そうなのか…私の風邪もそれだったのかもしれないね……」
適当に風邪をひいたという嘘をついたが、 話が合っていたようだ。
国民「それじゃあ、私はこれで」
🇪🇸「あぁ、またな」
少し話した後、再び歩きだす。
今の会話で分かったのは周りから見て自分がおかしくないと分かった。
よかった。
他の国々にあーだこーだ言われるのは面倒だからだ。
そうこうしている間にビルの玄関に着いた
ビルのロビーには沢山の警備員が後ろで手を組み周りを見回している。
こんな堅苦しい雰囲気に自然と心拍数が上がる。
会議室があるのは25階。
エレベーターに乗りボタンを押す。
何階もある大きなビルというの事もあって
エレベーターの中はとても広かった。
ニジュウゴカイデス
エレベーターの扉が開く。
少し踵が高くなった革靴がコツコツと音を鳴らす。
長い廊下にはその音はとても響いた。
会議室の扉の取っ手を引こうとするが、手が止まる。
一度深呼吸をして改めて扉を引く。
会議室に入ると、1人
🇬🇧「久しいですね、スペイン」
そう敬語で話し、紳士ぶっているのはイギリスだ。
🇪🇸「あぁ、そうだね。
会えて嬉しいよ。」
そう返すと、イギリスは座れと言うように
椅子を引きこちらに優しい笑顔を向ける。
「ありがとう」
言葉に甘え本革と思われる椅子に座る。
椅子に座ると溜め込んでいた疲れがどっと
流れ込んできた。
しかし、それを悟られる訳にはいかない。
気合いで乗り越えることにした。
🇪🇸「まだ私とイギリスだけかい?」
🇬🇧「そうですね、まぁたまには2人で話すというのも良いんじゃないですか?」
こうやって2人で話すのは久しぶりだった
🇬🇧「最近はカナダが反抗期でしてねぇ…」
🇪🇸「そりゃあ、カナダだって独立したんだから」
🇬🇧「まだ親心があるという物ですよ」
🇪🇸「良い親だ」
何気ない会話を続ける。
イギリスはゆったりとした調子で話しているが、話の内容が尽きないようで口が止まることはない。
アメリカのマシンガントークは親由来なのだろう。
そろそろスペインも疲れてきたころ、
🇫🇷「こいつどうにかしてくんない!?」
🇩🇪「………………。 」
互いの頬をつねり合いながら部屋に入ってきたのはフランスとドイツだ。
🇬🇧「なにやってるんですか……」
🇫🇷「こいつがなに言っても離さないのよ!」
🇩🇪「離しませんよ☺️」
そう話している間にもドイツの力は強くなる。
🇫🇷「いたたたたたっ!?!?」
涙目になりながらも必死に抵抗をする。
🇫🇷「早く離してよ!!」
🇩🇪「ならあの土地、僕にくれませんか?」
黒く染まった目で微笑む。
フランスはハッとしたように
🇫🇷「EU!!!!助けて!!!!!!」
いきなりうるさくなった部屋に、頭痛が酷くなる。
🇪🇸「……ドイツ、そろそろ離してあげては…?」
🇩🇪「すみません…笑」
仲介をしようとしたが無意味だったようだ。
ドイツは平謝りだけだ。
フランスはもう手を離し、降参と言うように手をあげている。
それでもドイツは離さない。
🇫🇷「まってッ!!!!本当にッッ…!!
メイク崩れちゃうから!!!!!」
涙で目元のメイクが崩れることを危惧しているようだ。
フランスは男だが女子力が高く、口調も女性らしい。
今日はメイクもバッチバチに決めており、時間がかかりそうなのが見て分かる。
🇫🇷「イギリスも助けてよ!?!?」
イギリスは無言で近寄り、ドイツの腕を掴む。
すると、ドイツの腕を力任せに引っ張った。
🇫🇷「いっっっったぁ!?!?泣
ッもう少し優しく出来なかったの!?!?」
🇩🇪「なにするんですかイギリスさん!」
イギリスにヘイトが集まる。
🇬🇧「止めさせるためには引っ張る以外に方法はありませんでした。
結果良ければ全て良しです、方法は問いません。」
🇫🇷「ブリカスが!!!」
🇬🇧「それに貴方がた、うるさいんですよ。
迷惑です。静かにして貰っても?」
🇩🇪🇫🇷「…………。」
その一言で二人はふて腐れたように黙り込む。
🇬🇧「まぁ、分かってくれたら良いんです。
……あと、聞き捨てならない事がもう1つ
…ドイツ。」
いきなり指名されたドイツは目を見開き焦っている様子だ。
🇬🇧「…あの土地ってルール地方とザール地方の事ですよね?
また大戦でも起こすつもりですか?」
🇩🇪「う”っ………」
🇬🇧「お父様方と思考回路が同じですね。」
🇩🇪「あ”ッッッ…………」
ドイツは父親に対し嫌悪感を抱いているようで、同じと言われたことによりかなりのダメージが入ったようだ。
🇬🇧「あの土地で争わないようにという理由でECSCが出来たのでしょう?
そんなこともお忘れで?
安泰を守るために作られた決まりです。
言葉を慎みなさい。」
ドイツに何重も正論を重ねるイギリスに
フランスが口を開いた。
🇫🇷「ねぇ…イギリスってEU抜けたよね。
安泰だとか言えないでしょ。」
🇬🇧「ア”ッ…………」
フランスに言い返され、イギリスは何も言えなくなってしまった。
ガチャ
🇮🇹「―――…なんね~、……って。
なにやってるんね…?」
目の前には床に倒れ悶えるドイツとイギリスの姿が。
🇷🇺「…あー、…殴り合いしてたのか?」
🇫🇷「んなわけ。」
その後もスウェーデンとノルウェー、オーストリアが合流し、全員が揃った。
🇬🇧「…それでは、会議を始めます……。」
🇮🇹「まだ引きずってるんね。」
会議が始まる前に様々な事があったが、ようやく議論が始まった。
正直言って、すでに体力は限界に近い。
とにかく頭が痛い。
そして、意識が朦朧とする。
終わるまで耐えれたら良いが、自信は無い。
🇬🇧「それでは、これで会議を終わりたいと思います。
解散!」
一度手をパンッと鳴らすと、国々が続々と帰ってゆく。
皆が会議室から出て、部屋の中には静寂が広がっていった。
🇬🇧「さて、私も帰りましょうかね……、
………?」
イギリスが目を向けた先には俯いたスペインが居た。
🇬🇧「スペインさん、帰りましょう?」
数秒の沈黙が流れたあと、
🇪🇸「…ッあぁ…、すまない少しぼーっとしていた…。」
🇬🇧「しっかりしてくださいね?」
イギリスの声には少し心配の色が浮かんでいた。
スペインは椅子を立つが、少し足取りが不安定だ。
🇬🇧「スペインさん、大丈b ーーー」
バタンッ
🇬🇧「スペイン!?!?」
コメント
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初コメ失礼します! 個人的にめちゃくちゃ西欧が好きでして、スペインが出てくる話少なすぎてしょげてたところでこのお話見つけてアカウント持つ前からずっと見てました! 🇩🇪🇫🇷と🇬🇧🇫🇷も好きなんですが入ってて嬉しかったです!メイク気にするフランスが可愛い😍口喧嘩でまさかのフランスの勝利が面白かったです!空気読まずに入ってきたイタリアも可愛かったです。 スペインぶっ倒れたけどオランダは見てるんでしょうか…? 可愛いに溢れる西欧ありがとうございました😭 長文失礼しました!