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◇◆◇◆
数十分後……
「よし、終わった」
俺と尊さんがそう声を上げたのは、定時から30分が過ぎた頃だった。
尊さんのデスクの上を見ると、資料は完璧に完成しており
その手際の良さに改めて驚かされる。
さすが主任……と思いながら、俺は自分のデスクの資料を持って主任のデスクに向かった。
「あのっ、残業付き合わせてしまって…すみません。主任のおかげですごく早く終わったので、手伝ってくれてありがとうございました」
俺は、心からの感謝を伝えた。
彼の助けがなければ、今頃まだ一人で途方に暮れていたことだろう。
「……いや、元はと言えば俺が鈴木に任せた仕事だからな。押し付けられたのは今日が初めてなのか?」
尊さんは落ち着いた口調で尋ねてきた。
「え?あ、いや……二回目ぐらいかなと」
俺は正直に答えた。
「だったら次からちゃんと断れ、それで困るのはお前だろ」
彼の言葉は、俺を諭すようだった。
「はい、すみませんでした……」
俺が謝ると、尊さんは小さくため息を漏らした。
そのため息は、呆れというよりも
俺の不器用さを心配しているように感じられた。
そして、俺をじっと見つめると
ふっと口元を緩めて言った。
「……まあお前がこういう無茶な押しつけを断れないタイプなのは分かるが、次からは周りを頼れ、あいつには俺から注意しておいてやるから」
その言葉に思わず胸が熱くなった。
この人は本当に良い上司だ。
俺の性格を理解した上で、俺を気遣ってくれている。
その優しさが嬉しくてたまらない。
「はい…っ、ありがとうございます…!」
俺は思わず笑みが溢れてしまった。
彼の優しさに触れて、心が温かくなるのを感じた。
それから鞄を持って二人で肩を並べ、会社を後にした。
外に出ると、冷たい空気が肌を刺した。
吐く息は白く、夜になれば一段と冷え込んでいくだろうことが窺えた。
身体が冷え切ってしまう前に、早く温かい場所へ行きたいと思った。
そんなとき、へくしゅ…っと、くしゃみが出てしまい、思わず身体を震わせた。
そんな俺の様子を見て尊さんはふっと小さく微笑むと
鞄からマフラーのような柔らかな布を取り出して
それを俺の首に巻きつけてくれた。
彼の指先が、俺の首筋に触れる。
その温かさに、思わず身体が強張った。
「あっありがとうございます…」
「……今日は冷えるから、巻いとけ」
「え、あっ、でも尊さんは……」
「俺は大丈夫だ。」
尊さんはそう言うと、俺の頭をぽんと撫でた。
その仕草があまりにも自然で優しくて
思わずドキッとした。
彼の指先から伝わる温もりが、俺の頬を熱くする。
「……ありがとうございます、すっごくあったかいです」
俺は、彼の心遣いに感謝した。
マフラーの柔らかな肌触りが、冷えた首元をじんわりと温めてくれる。
「あぁ、なら良かった」
そうしてタクシーを拾って乗り込むと、俺と尊さんの間には尊さんの片手が置かれていて
それと同時にそれだけの距離があるということだ。
その距離が、今の俺たちの関係性を表しているようにも感じられた。
(……尊さんの手、俺より少しデカイけど、爪も綺麗に手入れされてる…さすがは主任)
俺は思わずその手をじっと見つめてしまった。
彼の指は長く、節くれ立っていて
男らしいのに、爪はきちんと手入れされていて
そのギャップに胸がときめく。
触ってみたくなって、忍び込ませるみたいにそっと自分の指を絡ませようとすると
それに気づいた尊さんにパッと手を引っ込められてしまった。
(…うそ…尊さん、あんまり俺に触られたくない、のかな)
少しショックを受けてしょんぼりしていると
しばらくしてから尊さんが「ほら、着いたぞ」と言って降りる準備をしているので
慌てて財布を出そうとすると
「今もう払った」
「え……いつの間に……?」
「お前がぼーっとしてる間に」
尊さんは平然と言う。
その言葉に、俺はまたしても彼のペースに乗せられていることを自覚した。
そんなやりとりをしてタクシーを降りると、俺は改めてぺこりと頭を下げてお礼を言った。
彼のさりげない優しさに、心が温かくなった。
そして着いたのは、見慣れた俺の家だった。
「尊さん、今日も俺の家でいいんですか?」
俺は、期待と不安が入り混じった声で尋ねた。
「お前の家って…お前のこと送っただけだが」
尊さんは当然のように言うので
昼間にあんなキスをされて夜にお預けされたことを思い出すが
たしかに今の今まで夜に一緒にいるとかは言われていないことに気づき
急激に恥ずかしくなる。
顔が真っ赤になるのが自分でも分かった。
「あ…っ、そ、そ、そうですよね!俺ってば尊さんとまだいれるって勝手に…」
慌てて言い訳をする俺に「…ふっ、今のは冗談だ」と笑いかけてくる尊さん。
その笑顔は、俺の心を一瞬にして解き放つ。
「へっ?冗談……?」
「言ったろ、続きは夜にって」
「も、もう!…尊さん、本当にこのまま帰っちゃうのかと思ったのに…尊さんの冗談、分かりにくいです…っ」
俺は、半ば拗ねたようにそう言った。
「悪い、ちょっとからかってみたくなってな」
その表情に、俺はまたしても彼の掌の上で転がされていることを自覚した。
そうして家に入ると、上のスーツを脱いだ。
その間、尊さんにも適当に寛いでもらうことに。
尊さんはリビングのソファに深く腰掛け、部屋を見回している。
彼の存在が、この狭い部屋をいつもよりも広く感じさせる。
淹れたてのコーヒーを二つのマグカップに注ぎ分け、一つを尊さんに差し出した。
湯気立つカップから立ち上る芳醇な香りが、あっという間に部屋全体を満たしていく。
その温かく心地よい香りに包まれながら、尊さんはゆっくりとマグカップを受け取った。
俺は自分のカップを一気に飲み干すと、改めて尊さんの方へと向き直った。
その瞬間、やっとお互いの視線が絡み合う。
彼の瞳の奥に、昼間の職場で見せるそれとは異なる
甘く、そしてどこか妖しい光が宿っているように見えた。
その視線に、俺の心臓は小さく跳ねた。
「あのっ…尊さん」
声が少し上ずってしまったのは、きっと気のせいではない。
「なんだ」
彼の低い声が、静かな部屋に響く。
「その…今日も、頭撫でて欲しいんですが…」
俺のその一言で、二人の間に流れていた空気が、まるで質量を持ったかのように変化したのが分かった。
緊張と期待が混じり合った、甘く重い空気。
尊さんは何も言わず、ただ俺の隣に腰掛けると
そのままゆっくりと、慈しむように俺の頭を撫で始めた。
彼の大きな手のひらが、優しく俺の髪に触れる。
その心地よさに、思わず目を細めてしまう。
まるで猫のように、彼の温かい手のひらに擦り寄ってしまいたくなる衝動を必死に抑えた。
しばらくそうして彼の温もりを感じていると、ふいに彼の指先が俺の頬に触れた。
驚いて顔を上げると、尊さんの顔がすぐ目の前にあった。
彼の息遣いが感じられるほどの距離。
そのまま、柔らかく唇が重なり合う。
一度だけでは終わらず、何度も角度を変えて繰り返されるキスに
俺の頭はぼうっとしてくるのを感じた。
思考が霞み
ただ彼の唇の感触と、甘い吐息だけが俺の意識を支配する。
「んっ……はぁ…たけ、るさ…んっ…」
息継ぎの合間に、か細い声で彼の名前を呼ぶと
尊さんは少し笑って、また深くキスをしてきた。
だんだんと深くなるそれに、俺の思考は完全に溶けていくような感覚を覚えた。
まるで甘い蜜の中に沈んでいくようだ。
気がつけば、俺はソファの上に押し倒されていた。
尊さんの手が、ゆっくりと俺のシャツの中に滑り込んできた。
素肌の上を滑る彼の指先に、背筋に粟立つような快感が走る。
思わず身を捩ったが、彼はそれを許さなかった。
俺の胸の突起を、指で転がすように弄ばれると、口からは甘ったるい声がこぼれてしまう。
そんな俺の反応に気を良くしたのか、彼はさらに執拗に攻め立ててきた。
「あっ……あぅ……んんぅ……!」
胸への愛撫だけで、俺はすっかり感じ入ってしまい、もう彼に抗うことなどできなかった。
全身の力が抜け、ただ彼のなすがままになるしかない。
「なあ雪白…今日は後ろで上手にイけたらご褒美やるけど、するか?」
耳元で囁かれる言葉は、俺の理性を麻痺させるのに十分だった。
もう拒否する選択肢など、どこにも残されていなかった。
「ふぁっ……は、いっ……ごほうびっ……ほしぃっ……」
息も絶え絶えに答えると、尊さんは満足げに微笑んで、俺のズボンと下着を一気に脱がせた。
ひんやりとした空気が肌に触れ、一瞬体が震える。
「クッションに顔埋めてていいからうつ伏せなれるか?」
「はっ…はい…っ」
俺は尊さんに言われた通りにソファの上でうつ伏せになり
目の前のクッションを抱え、彼に背中を向けた。
「こ、これで……いいんですか」
顔だけを振り向くと、ローションを手に取り、手のひらに馴染ませる尊さんがいた。
彼の視線が俺の後孔に注がれているのが分かり、全身が熱くなる。
俺の腰を掴むと、ゆっくりと後孔に指を差し入れてきた。
既に慣らしてあったそこは柔らかく広がり、待ちわびたようにきゅうっと彼の指を締め付けた。
「おい、締め付けんの早すぎだろ」
「っ…だ…だって……」
恥ずかしくてついクッションに顔を埋めると
尊さんは楽しそうに笑って、俺のナカをかき混ぜ始めた。
「ひっ……あっ!あぁんっ……!」
指を出し入れされる度に、クチュクチュと濡れた音が部屋に響き渡る。
まるで耳からも犯されているような感覚に陥り
全身が熱を帯びていく。
「雪白…そんな声も出るんだな」
彼の声が、俺の耳元で甘く響く。
「ち、違っ…今のは、違くて…っ」
「何が違うんだ?ほら」
「ひぅっ……!?」
突然強く前立腺を押されて、目の前にチカチカと星が散った。
全身に電流が走るような衝撃
「ここ、好きなんだろ?」
そう言って、彼は何度もそこばかりを攻め立ててきた。
その度に俺の口からは意味のない言葉が漏れ、腰はビクビクと痙攣を繰り返す。
もう限界だと思った瞬間
ずるりと指を抜かれてしまい、喪失感に後孔がヒクついた。
「や、だ……抜かないっ、で…たけ、るさん…の、指…ほしぃ……」
つい強請るような言葉を口にすると、背後から息を呑む音が聞こえて来る。
「…仕方ないな」
そう言うなり、尊さんは俺の腰を持ち上げると
一気に2本の指を突き入れてきた。
「〜〜〜〜〜ッ?!!」
あまりの衝撃に、声も出せずに絶頂を迎えた。
視界が真っ白になり、全身が震える。
そんな俺に追い打ちをかけるように、尊さんはバラバラと指を動かしてくる。
「あっ!あぁんっ!やっ……イった、ばっか……だからぁ!」
「はっ……雪白、お前んナカすげー締め付けてくる」
「ひぁっ!あ、あっ!またイクッ……イッちゃっ……」
再び絶頂を迎えそうになった瞬間
ずるりと引き抜かれてしまい、俺は切なく後孔をヒクつかせた。
あまりの物足りなさに、俺の腰は勝手に揺れてしまう。
「っあ……も……欲しぃ、ですっ……」
懇願するように言えば、尊さんは「なにがだ?」と意地の悪い笑みを浮かべた。
その表情に、俺は少し苛立ちを覚える。
「いっ…意地悪っ……」
もう欲しくてたまらないのに、彼は俺にご褒美を与えてくれる気はないらしい。
思わず顔だけで振り返ると、尊さんは俺の顎を掴んで上向かせた。
「何が欲しいか、ちゃんと言えたら挿れてやるよ」
尊さんは俺の耳元に唇を寄せると、吐息交じりに囁いた。
その声が、俺の理性をさらに揺さぶる。
俺は涙目になりながらも、小さく呟いた。
「…たっ…たけるさんの……ください」
「俺のナニをどこに欲しいんだ?」
「うぅ……」
そんなやり取りにすら興奮してしまっている自分がいることに、羞恥を覚える。
俺は羞恥に震えながらも、震える唇でもう一度言葉を紡いだ。