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「あれの小さい奴らはボコボコにしてきたから本当にコイツだけしか残ってないな。」
「私一人じゃやっぱ倒すのは困難だったわ。少なくとも『現時点』では…。」
「多分私も一人だと倒せる気はしないけど、今回は二人で来てるから行けるね。」
「それで?プランはどういうプランかな?」
「そんなもんは無い。」
「わぁおビックリ。ノープランでやり合うおつもりで?」
「正直また拳でやってもいいんだけど、それだと進歩してないわけで、私的には望ましくない訳よ。」
「本格的に『剣士』じゃなくてもいいもんねそうなると。 」
「ていうことだから拳無しでやり合うつもりなんだけど、アルナさんから頂いたこの剣でも決定打にはなり得ない火力なんだよね。」
「正直な話こいつとやり合うならプリンは最低でも鋼鉄の剣とかじゃないと話にならないかもね。」
「てなると、やっぱり時間はかかるけど隙を見て攻撃を繰り返すしかないかな?」
そう話すプリンに対し、ミーシャは口元に手を当て少し考えた後ある提案をする。
「…一個試したいことがあるんだけどいい?」
「何を試すの?」
「あんたのその剣に『魔法を付与』することが出来るのかどうかってこと。」
「魔法の付与か…。確かに考えたけど私は魔法使えないし、【魔法複合】もあくまで魔法同士の掛け合わせで物質に付与することとは別なわけだから無理じゃ?」
ミーシャの提案はプリンも一度は考えたものではある。しかし、剣に魔法を纏わせる為には魔法も剣も一定の熟練度が合ってそのうえで何かしらのスキルが無いと出来ないと彼女は考えており、それは現時点では現実的では無いため切り離して考えていたが、どうやらミーシャが言いたいことはそうではなかったようだ。
「擬似的な付与はできるんじゃないかと思ってて、多分想像してるのは刀身に炎とかを常に纏わせて攻撃するとかだけど、それは恐らく別のスキルがあるから無理だと思うの。でも、例えばかがり火があったとしてその炎を剣で斬ることはできるじゃない?」
「まぁ、そうだね?」
「その要領で事前に魔法を用意しておいてそこを剣が通り過ぎる分には特に何も問題ないなら同じ箇所に魔法と物理攻撃が滞在することだってできると思わない?」
「ちょっと私が頭悪くて理解できてないんだけど…。」
「つまり私が先に魔法で攻撃を仕掛けるじゃない?ファイアとかだと当たったあと消えちゃうけどウィンドだとしばらくその場に残る仕様なので、その状態になってる箇所に狙いを定めて剣を振るうことで擬似的な魔法付与として使えるんじゃないかと考えたわけよ。」
「なるほど?もしそうだとして風との組み合わせは何が起こるの?」
「火力アップはもちろんのこと、切れ味にも補正が入るんじゃないかと私は読んでるのでもしそうならキングレオに確実にダメージを与えることが出来るはず。」
「よし分かったそれで行こう!私はミーシャの指示に従うわ」
「それ純粋に思考放棄してるってだけでしょ…。」
「まぁ、そうとも言う。」
「上手くいく保証はほとんど無いけどやるだけやってみるか。【魔法複合】で【風】と【土】を合わせてさっきの『ソイルニードル』からファイアを飛ばす要領でウィンドを飛ばすだけ。ヒットしたらそこをプリンが攻撃する、簡単な仕事よ。」
「それじゃあ少しでもヘイトを稼ぐために私が一気に距離詰めてあげる。ま、ミーシャのでも少し借りるけど。」
「何すんのよ?手間がかかることはやりたくないんだけど?」
「大丈夫すぐ自分の準備に取りかかれるから。」
そう言い彼女はインベントリを開いて初期装備の一つ『初心者の盾』を取り出しその上にプリンが乗る。
「いい?ミーシャはさっき回避に使った爆発を私の真下の地面に放ってくれる?その反動で私は前にすごい勢いで飛べるし、その勢いを使って先制攻撃も可能。更に【つむじ風】で多少空中での制御も効くから仮に相手に避けられても避け方次第では追撃可能!」
「……。馬鹿みたいな作戦だけど、私の体じゃないし派手に飛んできなさいな。」
「私飛ばしたら直ぐにさっきの準備お願いね!」
「はいはい…。やるだけやってみますよ。」
プリンの馬鹿みたいな策に乗ってあげて、彼女の望み通り盾の下目掛けて【魔法複合】を発動し意図的に失敗し爆発を起こす、その反動で後ろに転がるミーシャだがプリンの希望通り爆発が推進力となってものすごい勢いでキングレオに突撃する姿が回る視界の中でも見て取れた。
「うぉぉぉぉぉぉ!!?思ってたよりも勢いパないけどその分この剣の一撃は重たいぞぉ!!?」
勢い任せのその一撃は制御ができてないものではあるが運良くキングレオの左翼に飛んでいき見事左翼も切り落とすことに成功する。が、着地を考えていなかったためそのまま減速せず壁にぶつかり体力がごっそり削られてしまった。
「イッッッッタァァァァァァァァァイィィィィィ!?
タイリョクハンブンイジョウケシトンダァ!!?」
その光景を遠くで見ていたミーシャは『だろうなぁ』と思いながら準備していた【魔法複合】を発動しキングレオに仕掛ける。そして大声でプリンに伝える。
「準備完了したからあんたも準備なさい!私を道具として使ったんだから成果見せて!」
「昔のギャグ漫画みたいに私の激突時の形が壁に残るくらいの衝撃受けた人に言うセリフですかねぇ!?結構痛い目に合ってるんですけどぉ!?」
「これ逃したら私ら勝てないから頼んだわ!」
「無責任な人ですねぇ…ホント!!」
めり込んだ壁から抜け出し少し距離を置いて【魔法複合】が来るのを待つ。キングレオも背後からの奇襲と真正面からの殺人的な加速による攻撃で両翼をやられており彼にとってはプリンが最も警戒すべき『敵』なためむやみたらに動くことはせず、同じように距離を置き彼女の動きを監視し続ける。わずかな時間ではあるが両者ともに少しの動きも見逃さないように集中している為か疲労がどっと出てくる。その沈黙を切り裂くようにミーシャの【魔法複合】によって作られた『ソイルニードル【風】』がキングレオの足元に発生しキングレオはその違和感に気が付き直ぐにその場を離れる。プリンも彼を逃さまいと一定の距離を保ちながら彼を追いかける。そして『ソイルニードル【風】』が発動し土の棘は交わされたがその後発生した複数の小さな風の渦はキングレオを捉えており逃げた方面に飛んでいく。羽を失ったキングレオは空に逃げることが出来ないため下がる選択をとるが背面には壁があり逃げ場はなく風を避けようとその上をジャンプで飛ぼうものなら目の前の女剣士に斬られてしまう、それを理解した上で彼がとった行動は一か八か同じような魔法による相殺。瞬時に魔法陣を床に描いて同じ風魔法を発動する。練度はキングレオの方が高く設定されているためか已の所まで迫ったミーシャの風の渦はかき消されてしまい一転してキングレオが優位に立つ。この時点で策としては失敗に終わった為勝機はほとんどないが、プリンは諦めが悪かった。どうせやられるならワンチャンに賭けてみたい。そう思い作られた風の渦に身を投げて特攻する。
「プリン!策は破られたからもう勝機はない!ここは大人しくやられて出直した方が……。」
「タダでやられるほど私は諦めよくなくてね!」
ほとんどない体力で風の渦に飛び込んだプリンだが、彼女の中のスキルではなく本能としての『勘』がこの場を打開した。彼女の持つ【つむじ風】を発動し一瞬でもいいからと攻撃の無力化を図りそれが成功する。展開された瞬間かき消されてしまうが、『出た』時は自分にダメージが無いことを理解し消えた瞬間に再び展開してまた消えたら展開してを繰り返していき、敵の風の渦を攻略していく。そしてあと少し抜けたところにキングレオが居ることを把握し【つむじ風】を出すことをやめて無理やり前進してキングレオの顔目掛けて剣を構えて振るう。この時キングレオが発動させた風の渦がプリンの剣にも纏うこととなり単純な火力と切れ味に補正が掛かっていた。来れないと油断したキングレオだが、獣特有の超反応ですかさず引っ掻きに行くが【見切り】をこのタイミングで切る事で風の渦からも抜け出しつつキングレオの攻撃も避けてそのうえで確定でダメージを与えられるこの奇跡のタイミング。そこでスキルを使用し体力ゲージがミリのところでキングレオに大ダメージを与える。が、それでも僅かに火力が足りず彼は少し仰け反りこそしたがカウンターで今度はもう片方の手でプリンを横に吹き飛ばしプリンを倒す。
「ワンチャン…あったんだけどなぁ………。」
そう呟きながら彼女は光の粒になって消えていく。プリンがやられた事を確認するために一瞬吹き飛ばした方向を見たがそれが間違いだった。残されたミーシャの方を向いた時には『ファイア』が迫ってきており重症の彼ではもう避けることが出来ず直撃してしまう。それでもまだ体力が残っていたのだが、それも見越してか彼女の持つ全ての魔法を駆使しており、『ファイア』に気を取られた隙に『ソイルニードル』で後ろ足を貫き動きを封じて『ウィンドウォール』によってさらに視界不良を誘発、そしてその風の渦の間から『アイスランス』を放つことでより勢いの増した氷柱がキングレオを貫き咆哮をあげて彼も光の粒となりウィンドウが表示されたあと経験値とドロップアイテム、そして新たなスキル【復讐者】というものを手に入れてキングレオ討伐は幕を閉じることなった。