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#仕事
#裏切り
#モテテク
実家に差し押さえの赤紙が貼られた翌日
パニックに陥った義父母は、拘置所の直樹のもとへ駆け込んだという。
私は九条さんのネットワークを介し、その面会の様子を詳細に把握していた。
「直樹! お前、なんてことをしてくれたんだ! この家は私たちの終の棲家なんだぞ!」
「うるさい! そもそも母さんたちが、詩織を追い詰めすぎるからこんなことになったんだろ!」
かつて私を「他人」として結託して虐げた家族が、今や生き残るために互いの喉元を噛み切り合っている。
報告を聞きながら、私は冷めた紅茶を一口啜った。
「……醜いわね。本当に」
報告書によると、追い詰められた直樹は
家を守るための「交渉材料」として、義父母にある秘密を漏らしたらしい。
『……分かったよ。実は、地方の貸金庫に、誰にも教えていないプラチナのインゴットと、限定品の高級時計のコレクションがある。数千万にはなるはずだ。それを売って、詩織に一部渡して示談に持ち込め』
どこまで愚かなのか。
私に一円の誤差も許さない節約を強いて
陽太の習い事の月謝さえ「無駄だ」と切り捨てていた裏で、自分だけは着々と「いざという時のための贅沢品」を溜め込んでいた。
私はすぐに弁護士を通じて、その貸金庫の存在を特定し、保全手続きを執った。
直樹が「最後の切り札」だと思っていたその財産を、私は彼らの手には渡さない。
(直樹。あなたが大事に隠し持っていた『思い出の品』……。それを、あなたが最も嫌う形で換金してあげるわ)
数日後
私は、直樹が心血を注いで収集していた限定品の高級時計コレクションを、あえて「公開チャリティオークション」に出品した。
その売上金はすべて、直樹のせいで倒産した企業の遺児たちの奨学金として寄付される。
オークションの結果を知らせる通知を、私は拘置所の直樹に送りつけた。
自分の宝物が、自分を破滅させた「被害者」たちの助けに使われる。
プライドの高い彼にとって、これ以上の屈辱はないはずだ。
一方、家を追い出されることが確定した義父母からは、深夜に泣きながら命乞いの電話が入った。
『詩織さん、お願い、せめて庭の離れだけでも貸して……行くあてがないのよ!』
「お義母様。……私が家を追い出されそうになった時、あなたは『実家に帰れば? あ、もう実家もないんだったわね』と笑いましたよね?」
私は、録音しておいた当時の音声を再生し、彼女に聞かせた。
「その言葉、そのままお返しします。…猶予はありません。明日の朝までに、退去を完了させてください」
私は静かに通話を切り、スマホの電源を落とした。
夜の静寂の中、私は新しい家計簿の「特別利益」の欄に、寄付金の総額を書き込んだ。
【残り60日】
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