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#すれ違い
ruruha
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#一次創作
ruruha
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「おはよう、海良ちゃん。大寝坊だねぇ」
「二度寝してた…」
土曜日の朝。誰もが二度寝をするだろう。一度起こされて、寝落ちして、目覚めたのが10時。中島さんに怒られると思っていたが、本当に生活リズムに厳しくないようで、軽く注意される程度で済んだ。
「ご飯今から食べるとお昼食べられなくなるし…軽くなんか食べる?」
「いらない。お腹空いてないから」
「ちゃんと食べなきゃ倒れちゃうよ?」
「大丈夫」
部屋に戻り、ベッドに横たわる。もう寝る気にはなれない。ふと目を閉じて、また目を開けると男の人の顔があった。
「うぉっ」
「おはよ」
確か、鶴とかいった人だ。戸籍がなかった人。
近くで顔を見ると、すごく顔が整っていることに気づく。黒い髪に隠れる目は、左右で少し色が違うように見えた。気のせいかもしれないけれど。
「おはようございます…えっと、」
「鶴でいいよ。なんだっけ。海良?」
「あ、はい。海良です」
そこで話が途切れてすごく気まずくなる。部屋を出ようと立ち上がった瞬間、鶴に声をかけられた。
「海良の制服が届いたって」
「あ、はい。ありがとうございます」
制服という単語を聞いて少し気が落ちた。私は月曜日から新しい中学校に行くのだ。
「よく似合ってるわ〜。ハンガー貸さなきゃね!」
「ありがとうございます」
中島さんが物置の奥に行くのを見て、少しソファに横たわる。慣れない場所での生活は、気を張りすぎて疲れる。
「海良ちゃんごめんねー。ハンガー1個しか残ってなかったの。買ってこなきゃ」
「あ、じゃあ私暇だし買ってきます」
「本当?じゃあお金渡さないとね」
中島さんからお金を受け取り、百均へ向かう。そういえば土地勘がないのに一人で来てしまった。スマホがあるしおそらく大丈夫だろう。
数分歩き、辺りを見回す。そして、スマホの画面と見比べた。
「迷った、な…」
最悪だ。とにかくこれに尽きるだろう。
こんな歳にもなって迷子とか、恥ずかしすぎるし泣けてくる。
マップの使い方がよくわからず、とりあえずスマホとにらめっこする。不安で情緒がおかしくなりそうだ。このままいなくなってしまおうか。
そう考えていた時、後ろから声をかけられた。聞き馴染みのある声に。
「見つけた…」
「鶴…」
走ってきたのか、鶴の首元には汗が垂れていた。
「中島さんが、海良は土地勘ないのに一人で買い物に行ったって聞いたから」
「でも、どうしてここが」
「俺もよくここで迷ったから。ここら辺道が複雑なんだよな」
今の言葉から、本当に鶴は生まれた時から施設にいたんだと思った。一人で歩かないといけない時があって、この辺りをよく通るのだから。
「俺も買いたいものあったし、一緒に行く」
「あ、はい」
そのまま並んで歩く。少し鶴の顔を覗いてみた。
「中学楽しみ?」
唐突に聞かれてびっくりしたが、顔を覗かれて怒ったわけではなかったので安心する。少し間を空けて答えた。
「楽しみです。友達何人できるかなとか、新しい制服も」
「本音で大丈夫だよ」
「…えっ?」
急にそう言われてびっくりしたわけじゃない。図星だったからびっくりしたのだ。
「海良ってさ、色々考えて会話するタイプでしょ。別に俺にそんな気遣いいらないよ」
「…いや、本当に、楽しみで」
「制服が届いたって知った時、あんなに暗い顔してたのに?」
ダメだ。この人には敵わない。
何を言ってもこの人はお見通しなのだ。私が言い訳しようと、この人はきっと言葉を完全に止めてしまえる。
「正直、行きたくありません」
「そっか」
鶴はそれ以上、何も言わなかった。
だから、私もそれ以上、何も言わなかった。ただ、沈黙の場であれだけ居心地が悪くないと思ったのははじめてだった。
その後はあまり覚えていない。ぼーっとしていたからかもしれないけれど、記憶があいまいなところが多い。絵里にも上の空だと言われた。
月曜日、転校してから登校初日だ。すごく行きたくない。でも絵里もいる。きっと前の学校よりいい所だ。でも、それでも…。
ぽすっ
「…鶴」
「大丈夫?」
真っ直ぐ私を見つめるその目は、とても綺麗で、鋭くて、優しかった。
「行きます。絵里もいるし、大丈夫です」
「…そう」
鶴と良祐は同じ学校のようで、そのまま高校へ向かった。他の子達も学校へ行く。それを中島さんたちが見送っている。私も行かなければならない。
「行こっか、海良ちゃん」
「うん」
大丈夫。きっと大丈夫。
そう、心に言い聞かせていたのに。
「はぁっはぁっはぁっ…ッ」
私はまた、逃げてしまった。もう嫌になる。自分も、周りの人間も、みんなみんな大っ嫌いだ。
少し走って、道がわからなくなった。とりあえず近くの公園に腰を下ろした。そして、スマホを見て自分の位置を確認する。随分遠くまで来てしまったらしい。こういう時は長く走れるのに、シャトルランでは30回程度で限界が来るの、どうにかしてほしい。
「どうしよ…」
絵里になんと言おう。荷物も全部教室に置いてきた。中島さんに聞かれるかもしれない。鶴に、失望されるかもしれない。
「それだけは嫌だ…え?」
「何が嫌なの?」
はっとして前を見た。そこには、いるはずのない鶴がいた。なぜ、という疑問はすぐに浮かんだけど、それは相手も同じだろうし、とりあえず質問に答えることにした。
「なんでも、ないです」
答えになっていないけれど、鶴はそれ以上聞かず、隣に座った。
「俺ら、学校バックれ仲間だなw」
そんなはずない。
仲間と言われて、嬉しいだなんて。
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