「穂乃果ちゃんは、悠人さんのいとこじゃないってことですか? 私達に嘘ついて、本当は2人、付き合ってたってこと? 自分の恋人をアシスタントにして? そんなバカなことって!」
梨花ちゃんは、かなり取り乱した様子で、畳み掛けるように叫んだ。
「みんなには申し訳ないことをした。確かに、彼女はいとこではない。嘘をついてしまったことは反省している。でも、穂乃果は何も悪くない。俺が全て……悪いんだ。それと、アシスタントにしたのは、彼女にその才能があるからで、それ以外の理由は無い」
「最低。あの子、あんなすました顔してずっと私を騙してたのね。自分は悠人さんと付き合ってるって、私を見下してたんだわ。許せない」
梨花ちゃんの汚い言葉に、思わず耳を塞ぎたくなった。
「あんな才能の無い子、悠人さんがシャルムに連れてきた時からおかしいと思ってた。才能ある私を引きずり下ろして、あの子をアシスタントにして、公私混同もいいとこだわ! 酷すぎる!」
穂乃果は何も悪くない、でも、今、梨花ちゃんにそう言ったとしても、今の彼女には何も伝わらないだろう。
「落ち着いて聞いてくれ。俺は、まだ穂乃果と付き合ってもいない。ただ、俺が穂乃果を好きなだけだ。これから、彼女にはきちんと自分の気持ちを伝える。ただ、もし穂乃果にフラれるようなことがあっても、この先、君と付き合うことは絶対にないから。悪いがもうこの話はしないでくれ」
仲間に対して冷たい言い方だと思った。だけど中途半端に期待させる方が嫌だった。
梨花ちゃんには、正直、何の興味も無い。
美人だとは思うが、性格に問題があることは前からわかっていた。腕が良いことを過信し過ぎて、上から目線で人を見くだすところがある。そういうところを自分で早く気づいてほしい。
梨花ちゃんに全てを話してしまった以上、放っておくと、きっと穂乃果にもつらい思いをさせてしまう。
今すぐに……穂乃果に会いたい。
自分のダメなところも全部さらけ出して、彼女に告白したい。
もう一度、この想いを伝える――俺は、そう決意した。
「すまない、俺は先に帰る。梨花ちゃんには才能がある。それを、これからも伸ばし続けてほしい。そして、俺以外の男性を見つけて幸せになってほしい」
女性を1人で残して去るのは抵抗があったが、俺の気持ちはもう止められなかった。
シャルムを出て、急いでマンションに向かった。
中に入ってみたら、真っ暗なリビングで穂乃果はなぜか泣いていた。
――何があった?
俺はそのまま電気もつけず、穂乃果の側に駆け寄った。
穂乃果は、俺に気づき、涙に濡れた顔を両手で隠した。
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