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私は個人で絵のモデルをやっている。けれど今日は絵のお仕事ではない。数日前、小学生の男の子に助けてもらったことがあった。その子から文化祭にぜひ来てほしい、と頼まれたのだ。
小学校の文化祭なのに、外部にも開放されていて、一般の人も入れるらしい。いろいろあった学校なので、あまり来たくはなかったけど、あの子に絶対来てね、といわれてしまって、断りきれなかった。うう、どうなるんだろう。
「お姉ちゃん! こっちだよ!」
待ち合わせ場所に行くと、あの子が元気よく出迎えてくれた。まわりにはたくさんの人がいて、みんな楽しそうにしている。この子も私服だ。学校の制服じゃない。
「はい、入校証。これがあると自由に出入りできるから。じゃ、僕クラスの準備があるから後で来てね。お化け屋敷やってるから」
あっ、行っちゃうんだ。一人にしないでほしかったけど、しょうがないね。渡された紙を見ると、「3-A」って書いてある。えっと……あそこかな?
廊下を歩いていると、いろんなものが置いてある。教室の前には看板が立てられている。なにか催し物をしているみたいだけど、なんだろう? あ、ここは喫茶店になってるのか。へー。小中一貫校だからか、小学校の文化祭にしてはなかなかこったお店があるのね。でも、廊下を歩いていたら、小学生がこっちをみながら「変態女が来た!」っていってるのが聞こえた。うう、それは誤解なんだってば。
やっと着いた。ここが3-Aか。扉を開けると、暗い部屋の中に細い通路が続いている。とても教室を改造しただけのお化け屋敷には見えない。もともと、教室が広いのかな?それにしても、本当に誰もいない。薄暗くて、ちょっと怖いかも。奥に進むと、だんだん人の声が大きくなってきた。そして、女の子たちの笑い声も聞こえる。この先にいるみたい。
「きゃああああ!!!」
悲鳴!? やっぱり誰かいるんじゃない! 私はびっくりして、思わずきゃっと叫んでしまった。
「あ、小鳥遊さん?」
名前を呼ばれたので振り向くと、そこには見知った顔があった。あの時の男の子だ。
「あ、こんにちは……」
よかったぁ、幽霊とかじゃなくて。
「楽しんでいってね」
そういうと男の子は顔を引っ込めた。どうやら先に進んだ方がいいみたい。私はまた歩き出した。すると、突然後ろから何かが迫ってきた。私は驚いて振り返ると、そこには大きな人形がいた。それもただの人形じゃない。首のないマネキンのような姿だった。手には包丁を持っている。まさか本物じゃないよね……。
その人形は私の目の前まで来るとピタッと止まった。そして持っていた包丁を振り上げた。びっくりした瞬間、なぜか人形の動きがぴたりと止まってしまった。こういう演出かな? よく出来ているなぁ。私が感心していると、ふいに視界の端で白い布のようなものが動いた気がする。
あれ? 気のせいかな。もう一度見ると、今度ははっきりと見えた。白い服を着た女の子がいる。
「うわっ!」
私は驚きの声をあげた。だって、その子は白装束を着ていて、頭に三角巾をしているのだもの。よくみるとその子の顔に見覚えがある。どこかで見たことがあるような……
「あ、あのときの露出狂のお姉さんだ」
彼女はそういって笑った。うう、それは誤解なのに……。(続く)