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昔から、僕たちの周りは荒れていた
「いちいちうるせぇんだよ!!
何でてめぇに逐一俺が何したか報告しなきゃいけねぇんだ!!? 」
「俺の金だ、俺の勝手だろ!!!」
「あんたの勝手な訳ないでしょ!!?
勝手にお金使ってるくせに偉そうにしないで!!」
いつも2人は大声を出し合って怒鳴りあい、罵倒しあっている
機嫌がいい時なんてない
ずーっと不機嫌
そんな様子を僕たちは、隙間からそーっと覗いている
だって、よく観察しておかないと、しんでしまうから
「ちっ、てめぇと話してちゃ埒が明かねぇな」
「こっちのセリフよ!
あんたと話してたらほんとイライラする……」
「おい、餓鬼共」
その一言から、いつも始まる
何の躊躇もなく髪の毛を強く掴まれて、そのまま引っ張りあげられる
そのせいで髪の毛が何本も抜け落ちていく
いたい、なんて言ったって止めてくれやしない
泣こうが喚こうが、力ずくで自分の思い通りの玩具にする
そういう男なのだ、こいつは
ゴッゴッと鈍い音が部屋に響き渡る
「あ~やっぱ誰かを思いっきり殴んのってスッキリするよなぁ……
気兼ねなく殴れんのもいいわ~」
いつものように飛んでくる拳
容赦なく顔面に叩きつけられるそれは、恐怖と痛みの象徴だ
その時の年齢は僅か6歳
そんな子供が大の大人から殴られればどうなるかなんて一目瞭然
だけど自分が満足するまで殴りつけてくる
その時の鬱憤が晴れるまでずっと
だから、その動きをよく観察しておく
いつも、どこを重点的に殴るか
どこに当てられたら痛いか、苦しいか
よく見て、よく考えて、行動する
そうやって、どうにか生き延びる
それがこの時の自分たちの生き方だった
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唯一の心の拠り所は、自分の片割れだった
「い”っ………!!」
「だいじょうぶ……?
きょうは、フォンセばっかだったね……」
「わたしにもやればよかったのに…
そしたら……フォンセは……」
「そんなこといわないでよ……
どうせどっちかはやられるんだ、それならルーチェがやられないほうがよかったよ」
「おんなのこなんだから、きずはないほうがいいよ」
「……それじゃあ、きょうはフォンセにおおくごはんあげるね!」
「ほら、きょうはパンがとれたの!
めったにたべられないから、フォンセにおおくあげるね!」
「ありがとう、ルーチェ」
お互いがお互いを傷つけない
むしろお互いに優しくして、支え合う
この関係性は心地よくて、この関係性に救われてた
「……おそとには、なにがあるんだろうね」
「……さぁ、ぼくたちはでたことがないから……」
「……おそとも、ぜんぶおうちのなかみたいなのかな?」
「…どうだろ、わかんない……」
「でも、わたしフォンセがいるなら、おそとがどんなところでもいいよ」
「わたし、フォンセさえそばにいてくれればいきていけるもん」
「ふふ、ぼくもいっしょだよ、ルーチェ」
2人でにっこりと笑ってみせる
でも、やっぱりルーチェも外には出たいみたい
『早くここから出られたらいいのに』
ずっとそう、願ってきた
そう願い続けて、僕たちは育っていった