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112 - 第8話:碧いコロッケと遠い国

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2025年04月16日

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第8話:碧いコロッケと遠い国



🧳 シーン1:遠い国から来た碧族


夕刻、陽が傾く時間帯に現れたのは、長身の男の碧族。


肌は浅黒く、長い外套の裾には異国の刺繍が揺れている。髪は片側に編み込まれ、碧素のアクセサリが静かに光っていた。


「……すみません。コロッケ、とは……何ですか?」


カウンターに立つタエコは、一瞬目を丸くしてから笑った。


「おお……懐かしいもん聞いてくれたな。うちがまだ“人間”やった頃、よく作っとったんや」





🍽️ シーン2:記憶を再構築する揚げ物


タエコは端末にそっと触れる。


《FRACTAL_COOK_MODE=HUMAN_RECIPE》《COATING=CRISPY》《HEARTTRACE=ON》


刻まれたじゃがいも、碧素で育てられた肉片、衣となる光繊粉。


油と重力を制御するフラクタルが、青く光りながら「じゅっ」と音を立てて揚げていく。


出来上がったのは、ほんのり青く光る、サクサクのコロッケ。

隣には、記憶刺激ソースと、ほのかな酸味の碧素漬け野菜。


「ほら、揚げたてやで」





🥹 シーン3:涙の理由


男は箸を取ると、コロッケにかぶりついた。


そして目を細め、深く息をつく。


「……懐かしい匂いが、する」


彼は碧族になったとき、すべてを捨てたつもりだった。

だが――あの日、母親が握ってくれた肉入りの団子。その味の記憶が、湯気の奥からそっと戻ってくる。


「こんな遠い場所で、また会えるとは……」


タエコは何も言わず、厨房に戻った。

背中で聞こえたのは、コロッケの音と、静かにすする音だけ。





味は、国を越え、過去を越えて、心に帰ってくる。

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