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🏗️ シーン1:失敗と、夜風と
塔のふもとの《碧のごはん処(ミドリ)》。夜風が冷たくなりはじめた頃、ひとりの若い碧族が扉を開けた。
作業服の袖に土の跡。ヘルメットを抱えたまま俯いた彼は、目元に小さなフラクタル焼けの痕がある。
「……タエコさん、失敗しました。杭が、ずれて……」
タエコは、彼を見つめて黙ってうなずき、手を動かしはじめた。
🍲 シーン2:守るためのスープ
すずかAIの声が厨房に響く。
「情緒安定指数:下降。再起動用食事が適当と判断」
タエコはレシピコードを呼び出す。
《FRACTAL_COOK_MODE=PROTECT》《MEMORY_TRACE=TEAM_OLDLOG》
鍋に注がれる濃厚な碧素スープ。中には栄養価の高い根菜と、衝撃緩和のためのフラクタルゼラチン。
「このスープはな……昔、仲間を守るために作ったやつや。戦闘の中でも食えるようにな」
青い光がスープの縁でふわりとゆれ、湯気が静かに上がる。
🍜 シーン3:見えるだけやで
若い碧族は、黙ってスプーンを口に運ぶ。
ほろりととける具。染みわたる温度。
やがてぽつりとつぶやく。
「……タエコさん、なんでみんな、強く見えるんでしょう」
タエコは笑って、こう言った。
「見えるだけやで。あんたが知らんとこで、あの子らも誰かに守られてたんや」
若者は、スープをすくいながら、小さく「……ありがとうございます」とだけ言った。
“守る味”は、ひとりじゃつくれない。
誰かが、そうしてくれたから。