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113 - 第9話:バリア・スープの夜

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2025年04月17日

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第9話:バリア・スープの夜


🏗️ シーン1:失敗と、夜風と


塔のふもとの《碧のごはん処(ミドリ)》。夜風が冷たくなりはじめた頃、ひとりの若い碧族が扉を開けた。


作業服の袖に土の跡。ヘルメットを抱えたまま俯いた彼は、目元に小さなフラクタル焼けの痕がある。


「……タエコさん、失敗しました。杭が、ずれて……」


タエコは、彼を見つめて黙ってうなずき、手を動かしはじめた。




🍲 シーン2:守るためのスープ


すずかAIの声が厨房に響く。


「情緒安定指数:下降。再起動用食事が適当と判断」


タエコはレシピコードを呼び出す。


《FRACTAL_COOK_MODE=PROTECT》《MEMORY_TRACE=TEAM_OLDLOG》


鍋に注がれる濃厚な碧素スープ。中には栄養価の高い根菜と、衝撃緩和のためのフラクタルゼラチン。


「このスープはな……昔、仲間を守るために作ったやつや。戦闘の中でも食えるようにな」


青い光がスープの縁でふわりとゆれ、湯気が静かに上がる。




🍜 シーン3:見えるだけやで


若い碧族は、黙ってスプーンを口に運ぶ。


ほろりととける具。染みわたる温度。


やがてぽつりとつぶやく。


「……タエコさん、なんでみんな、強く見えるんでしょう」


タエコは笑って、こう言った。


「見えるだけやで。あんたが知らんとこで、あの子らも誰かに守られてたんや」


若者は、スープをすくいながら、小さく「……ありがとうございます」とだけ言った。




“守る味”は、ひとりじゃつくれない。

誰かが、そうしてくれたから。

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