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すっごく生き生きしちゃって。
(でも、何か安心した)
ずっと目覚めなかった彼が、いきなり私の前に現われて、ヒーローみたいに私を助けてくれた。本音を言うと、リースが良かったけれど、グランツが元気そうに……と言う言い方があっているかは分からないけれど、回復して、こうして私を守ってくれている。その事実に感激していた。まあ、気になることは沢山あるけど、それは後々考えるとして。
「護衛騎士……ね」
「っ……エトワール様、俺は」
「ううん。それはあとにしようか。ごめんねグランツ、回復して間もないかもだけど、私の事守ってくれる?」
「勿論です。エトワール様。俺は、エトワール様のためなら、命をも投げ出す覚悟を持っています」
ああ、重い。
まあ、それがグランツだったと、久しぶりに彼とまとも? な会話が出来て安心する。こんなことで安心する私も現金な奴かも知れないけれど、今は少しでも、信じられるものが欲しいのだ。そして、自分自身への信頼も取り戻したい。
過去に裏切った人であっても、今は、味方してくれるし、かつての輝きがそこにあるなら、私はそれを信じたい。
ラヴァインとかグランツとか、途中敵側として私達と対峙したわけだけど、今は違うって言えるから。まあ、許したわけじゃないし、不信感というか、好感度が私の中で下がった状態からのスタートだけど。きっと、それでもグランツは回復してくれるだろう。
問題は、こんな風に残酷な裏切りの連続と、不信感を植え付けてくる相手の方だ。災厄よりももっとたちが悪い。
思えば、災厄……混沌は、人の悪い感情の集まりだったから、あんな風になっていたけれど、ファウダーはまだ純粋だったというか……だからこそ、今回の明確な悪意を目の前に、私は嫌な気持ちになっていた。人を陥れるのはいつだって人だから。
(こうやって、精神的に追い詰めていくのが、エトワール・ヴィアラッテアの作戦なら、私はその作戦にくっしたりしない)
必ず悪事を暴いて、ダメだというと決めた。色んな人を引っかけ回して、それで、自分は幸せになろうだなんて、そんなの間違っていると。幸せに……愛される方法はもっと他にあると、私は彼女に教えてあげたい。
私がそうであったように。
(ま~ゲームの世界の性格じゃあ、もしかしたら、話し合いなんて無理かもだけど)
ああいう、キツい性格の人は苦手なんだ。何というか、本当に悪役! ていうのを、詰め込んだよな。そういうようになってしまった原因はあれど、だからといって気を引くために横暴な振る舞いはして良いというわけでもないし。
グランツは、ラヴァインを見て、お互いに目配せし合い、空いているスペースに目をやった。
「三分……いや、一分で良いです。持ちこたえて下さい」
「誰にいってるのさあ。王子様……一分?三分……いや、五分だって持ちこたえてみせる。だから、エトワールのこと、頼んだよ」
「頼まれる筋合いはないです。初めからこうしていた」
「だから、生意気なんだって。エトワールだけじゃなくて、俺の事も信じてよ」
「……貴方自身、信じられる人間だと思ってるんですか?」
「全く。悲しいはなし」
と、ラヴァインは肩をすくめた。自分自身で、信じられない人間だと思っているのか、とわた者も思いつつも、私は、二人を交互に見る。
矢っ張り関係性が分からない。でも、グランツがラヴァインのことを信頼しているということだけは分かったし、伝わってきた。何か、通ずるものがあるのだろうかと、私は思いながらアルベドの方を見る。きっと、また長いこと離ればなれになるから。
彼の、満月の瞳が私を捉え、何処か悲しそうに彼は眉をひそめた。まるで、自分は選ばれない男だと悲観するような、そんな顔。
(……そうか、ううん。でも……)
彼を選ぶ……そんな選択肢があった、未来もあったかもしれない。でも、私が選んだのは彼じゃなかった。
アルベドがどんな感情を私に向けていたか分からない。光と闇、相反する存在。それとも友人、友愛……親愛? 戦友ともいうかも知れない。少なくとも、彼の中には確実に、私のパートナーだったというそういう意識も感情もあったはずだ。そう信じているし、そう見えた。
けれど、その中に少しの恋心があったのなら。
選ばれなかった、と悲観することも、嘆くことも、あるだろうと私は、思ってしまう。
恋の先に選ばれるのはいつだって、一人だ。
「アンタだって、分かってたでしょ」
「エトワール様、何か言いましたか?」
「ううん、何でもない。早くして」
「俺が知らないうちに、我儘になりました?」
「どうだろう」
我儘、と言うよりかは、見たくないものを見ない、取捨選択をしただけなようなきもする。それを、我儘と捉えるか否かは、個人の自由だけど。
もう一度、アルベドを見れば、何処か諦めたように、フッと寂しげに瞳を揺らしながら笑っていた。「少しの別れだ」といわんばかりに私を見つめている。
本当に少しなら良いんだけど。
(ごめん。アルベド……私は、私のしたいことをする。だから、それを邪魔するなら、敵だって認識する)
例え、心が味方であっても、私は私のやるべきことを死体。それを、阻止しようとするなら敵だって認定する。そうやって、自分で割り切っていかないと、五日壊れそうな気がしたから。それだけは、嫌だった。何としてでも、自分の心を守らないとと。
「エトワール様、少し揺れるので、しっかり捕まっててくださいよ」
「うん、信じてるから」
信じてる。
その言葉を、グランツにかければ、彼は何処か気が重いというように顔をしかめる。その言葉が、彼に刺さると分かっててわざといったのだ。だから、彼に被せる責任を重くする。これ以上、私の手を煩わせないでと。
「分かりました。信じてください」
「グランツ」
私の言葉に対し、グランツは、信じてくださいと、いう。心から絞り出したような、辛い声を聞いて、反省しているんだなあと思った。聞きたいことは山のようにあるけれど、それは後回しにしてあげようと、思う。
「エトワール」
「何?ラヴィ」
「俺もあとで追いつくからさ、待っててよ」
「フラグ立ててどうするのよ。そういうの、死亡フラグっていうの」
よく聞く台詞に、私はラヴァインをしかりつける。だって、そんなの死亡フラグじゃないかと、私は思ったからだ。先にいってろといって生きていた人をまず見たこと無い。フィクションの話だと思われがちだが、口にする、言葉に出すというのはかなり力になり、悪いものも良いものも寄せ付ける。それに、ラヴァインはこれからアルベドと、ラアル・ギフトを二人相手しなければならないのだ。
荷が重すぎる。
ここで、三体二で戦えば……と思ったが、病み上がりのグランツに、麻痺が抜けないラヴァイン。その二人を庇いながら戦うことなんてまず私には不可能だった。かといって、ラヴァインをここで見捨てるわけにも……とは思ったが。
私は、ラヴァインの目を信じることにした。
「逃げる気ですか」
「逃げる?そうですね、貴方たちは危険なので、エトワール様に近づけさせることは出来ません」
「亡国の皇子風情が……何度裏切れば気が済むんですか」
「裏切りってそんな簡単な言葉じゃないですよ。覚悟がいる。裏切りは、覚悟のある人間しか出来ないんです」
そういって、行く手を阻んだラアル・ギフトに蹴りを入れるグランツ。ラアル・ギフトは対人戦に弱いのか、ひるみ、後ろへ下がった。そのすきに開けた退路を、グランツは走る。だが、魔法を使って先回りされたら……と、不安も残る。
「大丈夫です。ブリリアント卿に貰いました」
「何を?」
と、私が聞く前に、彼はオパール色に輝く、石をとりだした。見たことのあるもの、それは魔法石だった。多分転移魔法の。
グランツが詠唱を唱えると、ぷわっと魔法石が輝き私達の身体を光が包み込んだ。