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#1 ワードパレット【街/コート/抱きしめる】
ロさんに彼女います。います。
夏が過ぎ、冬を迎え入れようと寒くなってきた秋頃。白い息を吐き待ち合わせの場所へ向かう。時間に余裕があったので、すっかりクリスマスを迎え入れようとしている街並みをゆっくり見渡しながら軽快に足を進める。暫く歩いていると周りと一回り違う背丈の天の文字が記してある雑面を付けたよく知る人を見かけた。サイズがあっているはずなのに鍛えているせいで何故か小さくみえるコートを着て、誰かを待っているように見える。ここで会うのも偶然だろうし、声をかけようと近づき肩をポンと叩く。
「よ、ロボロ。誰待っとんの?」
「うお、なんやお前か。…あー、彼女や彼女。今日久々にお互い休みやからデートする事なってん。」
彼女。そう、こいつには半年前から付き合っている彼女がいる。なんでも、職場で出会っただとか。結婚まで考えてるらしく、真剣な付き合いらしい。
「お前は何しにきたん?外出るん珍しいやん?」
「んー?俺も彼女と待ち合わせ。」
「え゙、お前いつの間に彼女できたん?」
彼女なんて嘘、自分がずっと好きなのはこいつ。思えば、こいつに彼女ができてからまともに顔を合わせられなかった。半年前までこいつの隣には自分が居たのだから。
「ま、ミユちゃんに隣奪われてもたから俺の隣にも置いとこかなってね。」
「奪われたって…笑
酷いこと言わんでよ、俺やって真剣やねん。」
知ってる、そんな事嫌なほど分かってる。自分だってこんな事言いたい訳では無いのに、口が走る。
「分かっとるよ…、分かっとる、そんなん。ただ、俺は……やっぱ、やっぱ。……何でもあらへん。」
「なんや、言うてみ?」
言えない、言えるはずない。今幸せそうなこいつに自分の気持ちを伝えたとこで変わるものはない。なのに知って欲しいなんて思ってしまう。今、好きだなんて伝えたら困ってくれるだろうか。
「…俺は、ずっと傍におった俺が1番お前の 事だいすきやったのにな、って、思っただけ。」
「っえ…?」
焦って吐き捨てたその言葉に少し照れが見えるが困惑している。そうなるのも仕方がない。こいつの中では長年隣でバカしてたただの”マブダチ”なのだから。
「だから、そゆこと。か、彼女とか嘘やから。」
長く沈黙が続く。その場にいたたまれなくなり、踵を返して待ち合わせ場所へと足をまた進める。
「俺も、俺も好きやったで、シャオロンのこと。」
「…今更よお言うわ。」
今更そんなことを言われてもあいつの中の1番は彼女で、自分では無いことなんてとうの昔に分かってた。
「分かってたはずやのになぁ……っ、」
「…ごめん。」
自然と涙が溢れ出る。困らせるって分かってるのに止めようとしても止まらない涙を拭いながらロボロの方を向く。
「っええかぁ…!絶対幸せにならんと許さへんから、後からシャオロンにしとけば良かったなんて嘆きにきてもなんもしてやらんからな…!!」
泣きじゃくり、嗚咽混じりに吐き捨てる。目元は擦りすぎたのか赤く、鼻も同様。するとロボロが近付いてきてあろう事か抱きついてきた。
「…アホやなあ、ずっとシャオロンが良かったって思っとったのに、もう間に合わん?」
「間に合うわけないやろ、ミユちゃんどうすんねん。」
抵抗しないで抱きしめる自分もどうかと思うが、ほぼ婚約している彼女を投げ出すこいつもどうかと思う。暫く暖を取るように抱き締めあっていたが、彼女がこちらに向かってくるのが見える。時計を見ると自分の待ち合わせもすっかり過ぎているころだった。
「ほら、ミユちゃん来てもうたよ、離れてロボロ。」
「…なあ、」
「……ダメ、俺とお前はこれでおしまい。」
ロボロの言うことを察して、塞ぎ込むように遮り離れる。彼女がロボロを見つけて小走りでこちらに向かって来るのがチラついた。やはりやられっぱなしでは性にあわないので仕返しとして次は顔を近づけ、彼女に見せつけるようにキスをした。
「…やっぱコッチでもうおしまい、またな。」
ロボロと彼女が驚愕してこちらを見ているが、無かった事のようにその場を去る。これで俺も
「ずるい男になれたかなあ…。」
おしまい
あとがき
ずるい男になれたかなって誰をめざしてんだって話ですけどコレロボロなんですよねえ。なんでかって言うとロボロさんシャオロンが好きって伝えてから俺も好きだったなんてずるいこと言ってらっしゃるもんでそれにシャオロンは「ずるい」と思ったんでしょうね…ねえ。われながら良い文書けました対あり!