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デビュー前時系列
⚠︎︎メリーバッドエンド🔞
💛side
深澤辰哉という男は、不思議な男だ。
出会った時から、それは常々感じている。
ちょっとふざけてて、面白くて、周りをよく見てて、責任感もあって、それでいて優しい。
無邪気に笑って、だけど歳上の余裕というのもあって。
6人になってから、色々あった。
それを誰よりもずっと支えていたのはふっかだった。
それが9人に増えた。
そこから、ふっかはより掴みどころが無くなったと思う。
分からなくなっていた。
深澤辰哉という男が。
「照。今日から俺、ここで暮らすから」
深夜23時。
突然鳴ったインターホン。
ドアを開けるなり、ふっかがそう呟いた。
小さなカバンだけしか持ってないくせに、とち狂ったかと思った。
「……なんで」
「家に帰りたくないから〜」
「酔ってんの」
「なぁんにも呑んでないよ」
わはは、と笑って、招いてもないのにズカズカと入ってきた。
俺の横を通り過ぎるふっかからは、シャンプーの匂いがした。
でも、いつもと違う香り。
風呂に入ってるくせに、着ている服は今日仕事で会った時と同じ。
この時間帯に仕事はなかったはず。
どこか妙だった。
廊下を先ゆく、少しおぼつかない足元。
俺が見逃さない訳もなくて。
やっぱり酔ってんのか、なんて思ったが、酒の匂いは一切しなかった。
「…どこ行ってたの」
「…散歩してたら、照に会いたくなったの」
「嘘だろ」
「……ホント」
少しだけ口角を上げて、ふっかが微笑んだ。
どこか寂しそうに。
その顔は少しやつれてて。
ここ最近、仕事が段々と増えてきてはいるが、それでもデビュー前だ。
忙しさなんてたかが知れてる。
ふっかがグループの為に頑張ってることも分かってる。
人脈が広いことも、先輩や後輩関係なく幅広く交流があることも。
プライベートを詮索するつもりは一切ない。
仕事だっていつも通りだ。
気にする必要は無いのに、どことなく引っかかりがあった。
「俺、ソファーでいいよ」
「当たり前だろ。勝手に転がり込んできたのに」
「でも…帰れって言わない」
「言っても帰んないでしょ」
「照は優しいね」
そう言ってソファーに倒れ込んで、すぐにふっかから寝息が聞こえた。
近づいて、ふわふわの髪を指先で掬った。
閉じられた瞼の端、少し赤らんでる。
その意味を俺は知る由もなくて。
それから数週間、ふっかは俺の家に当たり前のように帰ってきた。
洗面所に置かれた歯ブラシ、使わないシャンプー、数着だけの少ない服。
俺の部屋に、ふっかの私物が少しだけ増えた。
一緒にご飯を食べる日もあれば、たまに帰ってこない日もあって。
仕事では顔を合わせていても、家に帰ればまた雰囲気が違う。
どこか思い詰めたように眉間に皺を寄せたり、ベランダでボーッとしてたり。
急に夜中に外に出ていく日もあった。
話しかけても「なんでもないよ」としか言わない。
色々抱えてるものもあるだろう。
俺よりも必死にもがいてきてる。
いつ出来るか分からないデビューに焦る気持ちも分かる。
でも、ふっかは何を思ってる?
暗闇に溶けるように消えていくふっかを掴めないまま、同居は続いていて。
今日も帰ってこないふっかを待つこともなく、ベッドで寝ていた。
少し暑苦しい夜。
ちょっと寝苦しさを感じていた。
寝返りを何度も打って、喉が乾いて目を覚ます。
水、と思って起き上がろうとした時、玄関が開く音がした。
帰ってきたのか、と思って、起き上がるのを少し待つ。
足音はリビングに行く前に、俺の部屋の前で止まった。
それから、ドアノブが引かれる。
咄嗟に目を瞑った。
ゆっくりと近づいてくる足音に息を潜めた。
また香りの違う、強いボディソープの香り。
ギシ…とベッドが鳴った。
俺の腹の上に、ふっかの頭が乗っかったのが分かった。
……泣いてる?
あのふっかが、声を押し殺して泣いてる。
ぎゅっとシーツが手繰り寄せられた。
思わず、ふっかの名を呼んでしまった。
ビクッと身体を跳ねさせて、ふっかが顔をあげるのと同時に、目を開けた。
暗闇でふっかの顔はよく見えない。
「…どした?」
「っ、……照…」
ふっかの口から、ありえない言葉が零れ落ちた。
もしかしたら夢なのかもしれない。
喉の乾きなんてとっくにどこかに消えていて。
掴んだふっかの腕はいつも以上に細かった。
「……照は、俺が抱いてって言ったら抱けるでしょ…」
「なに…」
「……おやすみ、照」
ふっかの手が瞼に重なる。
止めたかったのに、そのまま起き上がって問い詰めればよかったのに、やけにその手のひらの温度が心地よくて。
気付けばまた眠りについてしまっていた。
朝起きると、ふっかはいつも通りソファーで寝ていて。
コツ、と軽く拳で小突くとゆっくりと瞼をあげた。
眠たそうに何度も瞬きをして、それから俺を見上げる。
「…おはようね、照」
「なぁ、昨日さ……」
そこまで言いかけて、言葉に詰まった。
抱くってなんの事?
それを聞いてどうする。
それに対してふっかが何かを話したら、俺はどう反応する?
何を返せる?
そう思って、言いかけた口に手を当てて黙った。
ふっかの目が、真っ直ぐに俺を捉えて離さない。
「ごめん、何でもない。レッスン行くぞ」
「…ん」
───また、その笑い方をする。
寂しそうな、悲しそうなその顔は、何かに気づいて欲しいのか。
それとも、聞かないことに安堵してる?
俺にはふっかが分からない。
分からないからこそ、気になって仕方がない。
そんなある日、ふっかの行動の核心をつく話を聞いた。
事務所で打ち合わせをしている途中、トイレに行きたくて席を立つ。
急ぎ足で向かって、トイレのドアを開けようとして、中から後輩たちの声が聞こえた。
それは余りにも現実味を帯びてなくて。
「深澤さんて枕やってんだろ?」
「え!?まじで」
「俺、こないだ見ちゃったんだよね。深澤さんがオッサンに肩組まれてホテル街行くの」
「うわ…。最近、仕事増えてんのそゆこと?」
「俺も言ったらヤラせてくれんのかな」
気持ち悪い笑い声に、気付けばトイレのドアを蹴っていた。
青ざめた後輩を睨み、胸ぐらを掴みあげる。
何となく、あの日のふっかの言葉で勘づいてた。
それを責めることも、問い詰めることも出来なくて。
分かってた。ふっかが何かを背負ってるのも、それを受け止めきれてないのも。
歯がゆい。どうして頼らないのか、リーダーとしてそんなに俺は不甲斐ないのか。
そんな思いすら込み上げてくる。
「……その話、他ですんじゃねぇぞ。あと、二度と話すな。忘れろ」
頷いた後輩から手を離す。
怒ってるのは、自分に対してでもある。
話さなければいけない。
ちゃんとアイツを救わなければいけない。
そう思ってたのに。
雨が降る。
叩きつけるほど酷い雨が屋根を叩く。
23時。
いつも通りにふっかが帰ってくるのを、俺はリビングのソファーに座って待っていた。
しばらくして、鍵が回る音がしたあと、玄関が開いた。
「……起きてたの」
リビングに入ってきたふっかが、驚いた顔をして俺を見た。
座って、と言うと、何かを察したのか、無言で俺の隣に座った。
お互い目は合わせない。
多分、気付いてる。
交差させた指に力が入る。
「…ふっか、お前さ、何してんの」
出た言葉はたった一言。
だけど、きっとふっかは分かってる。
その意味も、俺の気持ちも。
責めてるつもりはない。
それもきっと分かってるはずなのに。
少しの沈黙のあと、ふっかの方へと目線をやった。
何も言わないふっかは、困ったように笑っていた。
───また、そうやって笑って、逃げんのか。
無性に腹が立って、無意識にふっかの肩を掴んで座面に押し倒していた。
「……照」
ふっかが真剣な顔で俺を見る。
一瞬、その顔にたじろいだ。
俺に押し倒されても、動揺のひとつもしない。
ただ、ジッと俺を見つめて、何かを紡がれるのを待っている。
雨の音がより一層強まった。
結局、それ以上何も言えなかった。
ふっかも何も言わなかった。
言わせてもらえなかった、が近いのかもしれない。
朝起きたら既にふっかは居なくなっていて。
その日の夜から帰ってこなくなった。
一度、ふっかの家に足を運んだが不在で。
仕事場で捕まえても、のらりくらりとかわされる。
何度目かの攻防戦。
また逃げようとしたふっかに、いい加減に疲れて、たまらず俺はふっかの手首を掴んで壁に押し当てていた。
「ふっか!!話聞けって!」
「…何も話すことない。お前は与えられた仕事をちゃんとしろ」
「だから…っ、ちゃんと話をさせて。帰ってこいよ」
「…照は、俺を抱きたいの?」
「は……?」
なんで今、その話になるのか。
眉をひそめた俺を見て、ふっかがまた口を開く。
分からない。深澤辰哉という男が俺には到底理解できない。
掴みたくても掴めない人。
強くて、芯があって、愛される人。
だけど裏をかけば寂しくて、孤独な人。
ふっか、お前のやってることはグループの為でも、お前自身の為でもないよ。
「……だったら、見つけてよ。俺を見つけたら、抱かせてやる」
緩んだ手の隙から、ふっかが抜け出す。
まーだだよ、なんて言って、俺に背を向けた。
追いかければいいのに、足が動かない。
その日から、毎晩のように時間があればふっかを探しに夜の街に繰り出した。
猫を探すかのように、路地裏や人気の少ないところも歩いて。
時おりすれ違うふっかに似た人を咄嗟に捕まえては謝って。
仕事では顔を合わすのに、気付けばいつの間にかふっかは消える。
まるでさっきまで一緒にいたのが嘘だというくらい、静かに夜の街に溶け込んで。
夜中でも都心は車も人もまだうるさい。
大勢の中、見つけられる自信なんてないけれど、やめようなんて思わなかった。
俺がやめてしまえば、ふっかはきっと…もっと戻れないところまで行ってしまう。
また雨が降る。
少し長めのレイニーブーツを履いて、傘を差す。
コンクリートに溜まった水溜まりを踏んでは、ズボンの裾が濡れていく。
無限に広がる辺りを見渡して、息を切らして走った。
どこにいる?
何してる?
泣いてない?
疲れたよな。
背負わなくていいよ。
俺らはもう、お前が支えなくても、自分たちの力で這い上がれる。
みんなで、這い上がるんだろ。
お前だけが、傷つく必要はないんだから。
パシャッと水が跳ねた。
暗闇を車のライトが眩しく照らして。
人ひとりが入れそうな、狭い路地裏を覗き込む。
切れかけた街灯がぼんやりと光った暗闇に、目を凝らした。
室外機の奥、見慣れた靴先が見えた気がして 静かに近づいた。
丸まった背中。
膝を抱えるように項垂れて、雨に打たれてびしょ濡れの頭の上に傘を差した。
バタバタと傘を叩く雨音に、 ゆっくりと顔が上がる。
────見つけた。
その言葉を飲み込んで、出た言葉はきっと心からの本心だ。
「……帰るぞ」
俺の言葉に、ふっかが唇をぎゅっと結んだ。
眉根を寄せて、おれを睨むように見上げる。
見つけて欲しかったんだろう?
だったら、もっと嬉しそうな顔をしろよ。
もう泣くな。
帰ろうよ、ふっか。
しゃがみこんで、ふっかに目線を合わせた。
雨か涙か分からないほどに濡れた顔がぐしゃぐしゃで。
俺が怒ったような顔をしてるのを見て、フッと口端を緩めたふっかがまた寂しそうに笑う。
「……見つかっちゃった」
その一言は、俺の心を刺すのに十分すぎるほど重たくて。
だけど、見つけることが出来た、という安堵は確かにあった。
細いふっかの腕を掴んで、足早に俺の家に戻った。
狭い玄関で乱雑に靴を脱ぎ捨てて、そのまま風呂場にふっかを押し込んで蛇口を捻った。
まだ温もりきれてないシャワーがお互いの頭に降り注ぐ。
胸元に引き寄せたふっかが、腕の中で身を捩った。
「……照…」
名を呼ばれても、逃がしたくなくて力を強めた。
小さい。こんなにもふっかは小さかったっけ、なんて思えた。
冷えた身体が小刻みに震えてる。
ふっかを見れば、ふっかも俺を見つめていて。
光の下よく見れば、口端が切れていた。
そっと指を這わせると、ふっかの身体が強ばった。
「……顔はダメだろ」
「…ごめん」
バツが悪そうな顔をして、目を伏せる。
責めたい訳じゃないのに。
苛立ちと、不甲斐なさ。
ふっかの名を呼んで、もう一度俺を見上げたふっかの唇に、そっと唇を寄せた。
だけど、ふっかの手のひらがそれを遮る。
「……キスは、だめ…」
小さく紡がれた声に、舌打ちをした。
自分が思うよりずっと、俺はふっかを求めていたのかもしれない。
それはきっと、ふっかも同じで。
寄せた唇をそのまま下へと滑らせた。
ん、とふっかから甘い吐息が漏れて、それが着火剤へと変わる。
水を含んで重くなった上着を剥ぎ取って、シャツの上からぷっくりと主張する乳首をガリッと噛んだ。
「あ゛アッ…!!?」
俺の髪の毛を掴んで、ふっかが仰け反る。
その腰を支えて、服の上から水分ごと吸った。
舌を這わせて、吸って、また噛んで。
ビクビクと跳ねて逃げようとする身体に腕を回してひたすら唇を這わせた。
「ぅ、ぁあ゛…ッ!!照…っ、照…!!」
「逃げんなよ…見つけたら、抱いていいんだろ」
「待っ…!!やだ、おれ…ッんあ゛…ッッ!!!」
「抱いて欲しいんだろ、ふっか。…言えよ」
「照…ッ、ちが、待って…!ぁん゛ッ、…ぁ゛!」
言えよ、抱いてって。
断らないんだって分かってんだろ。
だったら正直に言えよ。
縋れよ。全部、お前の抱えてるものまとめて俺が消してやるから。
もっと俺を頼ってよ、ふっか。
張り付いたズボンを下着ごと無理やり脱がせて、ふっかの片足を抱えた。
震えながらも、俺の首に回した腕は解かない。
それが答えなんだろ。
キスはさせないくせに、後ろは物欲しそうにヒクついていて。
あまりに扇情的な光景に、目の前がくらくらした。
指を挿れるとすんなりと飲み込んで、拡げなくてもいいくらいに柔らかかった。
それがどういう意味かも、俺は分かっていた。
だから余計に、腹が立つ。
宛てがったモノにふっかの目が揺らぐ。
待って、と静止するのも聞かずに一気に奥を貫いた。
「───ん゛ぁあ゛ァ゛…ッッ!!!!」
「~~~ッ、あ゛っつ゛…!!」
ギリ、と奥歯を噛み締めた。
冷えた身体とは裏腹に焼け付くような中の熱さに持っていかれそうになった。
ふっかの方は俺の肩に項垂れて、その細い身体を痙攣させて。
俺の腹と、ふっかの腹に放たれた精液はすぐにシャワーで流れていく。
熱が籠る。
お互いの息と、シャワーの熱さで、汗も分からないほど白くなって。
夢中で腰を打ちつけた。
ふっかがしがみついて何かを叫んでたけど、シャワーの音でくぐもってよく聞こえなかった。
勢いそのままにふっかの中に欲を吐き出して。
だけどそれでも、治まらないこのやるせない気持ちが苦しかった。
声を枯らして、肩で息を吐くふっかを抱えて、濡れた身体も拭かずに風呂場を出た。
廊下にふたりの身体から落ちる水滴を気にすることもなく、寝室のベッドへとふっかを投げて。
嫌だと暴れるふっかの腰を捕まえて、引き寄せる。
突き出された尻からは、先ほど出した白濁が溢れてきていた。
指の腹で後孔を押し拡げれば、中が畝る。
そこへもう一度ゆっくりと自身を埋めていく。
先ほどよりも甘く締め付けてくるソコは、まるで喜んでいるようで。
ふっかがシーツを手繰りよせて、喉を震わせる。
隠された顔が見えなくて、もどかしい。
「……ふっか、気持ちい?」
「…ッ、ぅ…!ふ…ん、ぅあ゛…!!」
「なぁ、帰ってこいよ。ちゃんと待ってるから…」
「あ゛ッ!!ゃ、あ、あ、ッん゛!!ァあ゛ッ…!!」
「ふっかの好きなもの、ちゃんと用意しとくから。もう、ひとりで頑張んなくていいよ、ふっか… 」
腰をゆっくりと打ち付けながら、ふっかを抱きしめる。
しなった背中が、揺れる腰が、俺を求めてるのに、答えはなくて。
どうしたらふっかは納得してくれる?
オレらが登りつめた先、そこに立つ時にふっかも居るんだろ。
だったら、隣で一緒に頑張ろうよ。
誰もお前を責めないから。
嫌わないから。
ひとりで闘おうなんてしないで。
その小さな手のひらで支えきれないものは、みんなで支えるんだろう?
何のために、俺らが、俺が、いると思ってんの。
なぁ、ふっか。
答えを聞かせてよ。
ふっかの手に被せた手を握りしめる。
指を絡めて、力を加えれば、ふっかもシーツを握る手を強めて。
再び中へと吐精した。
ふっかの腹の奥まで満たすように、一滴も零さないよう奥へと擦り付けて。
ゆっくりとモノを抜いて、ふっかをみると意識を飛ばしていた。
その身体を抱きしめて、横になる。
朝起きた時、逃げないように強くその身体を包んで。
泣き腫らした目元を指で拭って、髪を撫でた。
寝息をたてて安心したように眠るふっかを確認して、瞼を閉じた。
朝が早く来ることを祈って。
翌朝、目を覚ますと腕の中の温もりは消えていた。
まるで最初からそこに居たのが嘘だったかのように。
だけど、濡れた服だけがまだ風呂場に残されていて、確かにふっかがそこに居たことも、身体を求めた事実もあった。
洗面所に置かれた歯ブラシも、使わないシャンプーも、濡れた服と交換するかのように消えた服と、残された数着の服。
ふっかがここで過ごしていた面影はずっとあって。
いつも通りに準備をして、部屋を出る。
事務所に行くと、何も無かったかのように屈託のない笑顔でふっかが笑って、俺におはようと言ってきた。
その笑顔がまた怖くなって、机に置かれたふっかの手に、自身の手を重ねた。
「……帰ってくるんでしょ」
俺の言葉に、ふっかが目を見開いた。
それからまた、優しく微笑む。
俺はこの笑顔の意味を知っている。
これから言われる言葉もきっと。
俺の手から逃れたふっかが立ち上がって、俺の耳元に囁いた。
あぁ、ほら、まだお前を救えないままなんだ。
「……また見つけてよ、照」
そう言って、楽しむようにふっかが笑う。
きっと今日の夜も、ふっかは帰ってこない。
俺はそれを待つことはしない。
ふっかがまたいつでもふらっと帰ってきていいように。
ドアを開けた先、いつも通り仕方ないという顔で出迎える準備だけはして。
だけどやっぱり待てないから、俺は探しに出るんだろう。
ふっかが望むなら、俺はいつでも見つけるよ。
いつか心からふっかが笑えるように。
どんな暗闇からでもきっと見つけ出して、その度に泣いてるお前を抱き締めるから。
だから逃げないで、話をしようよ。
どんな話でもいい。
話したくないことは聞かないから。
これからのこと、たくさん話そう。
今日も俺は、喧騒渦巻く夜の街に繰り出す。
闇に溶け込んで、猫のように隠れて出てこない孤独なアイツを探すために。
待っててよ、必ず見つけるから。
もういいよって声を聞くまで、足は止めない。
靴裏が砂利を踏む。
星のない夜空を見上げて、白い息を吐く。
「もういいかい」
早く出ておいでよ、ふっか。
💛side END.
同時更新の💜sideも見て、もう一度読み返してもらえると嬉しいです| ‹:)⁾⁾
もう一度読み返すと💜の気持ちが移入されて
読み方が変わるんじゃないかなぁと…
視点の違う、想いも違うふたりのお話
いかがでしたでしょうか…😌?
#あべさく
夢花𓂃𓂂ꕤ*.゚
6,825
#あべさく
うめぼし
1,721
めかぶぷりん
248
コメント
3件
ぁぁぁ……読む手が止まりません… そして、涙も止まりません…… (寝られなくなりました🫠) 今から後編を読んできます……!!!!
**感想** めっちゃ重くて切なかった…。ふっかの「見つけてよ」が全部を物語ってる。照の無力感と執着の描き方がリアルで、雨の中見つけた後の「帰るぞ」が刺さった。キス拒否るところも「それだけは守りたい」って感じがして泣ける。R18だけどそれ以上に精神的な重さがやばい。💜sideも読まなきゃ。