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#戦国時代
眠狂四郎
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#戦国時代
眠狂四郎
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#軍師
眠狂四郎
153
(なんだ……このボロボロの軍隊は。)
片腕を失った者。
左右で違う武具を身につけた者。
明らかに奴隷だったと分かる者までいる。
(どうやら、グランは本当に負けたのだな。)
ノーラの代表バンデットは、城門を開くか否か、
その決断を胸に司令官のもとへ向かっていた。
(この男次第だ。)
そう覚悟を決め、天幕へ通される。
「おめーがバンデットか!」
頭を上げた瞬間、場違いなほど明るい声が飛んできた。
「おい、例のモン持ってこい。」
副官が合図を送ると、兵が馬一頭と目録を運んでくる。
「ごめんなあ。グランも今、大変でよ。」
男は頭をかきながら笑った。
「カンナルでは、うちの連中を助けてくれたんだって?」
「ガラリアの隊長も何人かやったらしいな。」
「おめえ、すげえじゃねえか。」
そして親指で自分を指し、
「まあ、ノーラも俺が来たからには、でーじょーぶだ。」
にかっと笑った。
(……グランの司令官が、俺のことを知っている。)
(それより――。)
(なんだ、この人は。)
バンデットは、ただ呆然とその男を見つめていた。
「あっ、ちょっとそこで待っててくれ。」
マルスにそう言われ、バンデットは戸惑いながら立ち尽くした。
その間に兵たちは手際よく木箱を積み上げ、即席の壇上を作り始める。
マルスは軽やかに飛び乗ると、居並ぶ兵士たちを見渡した。
「もうすぐここにバルカが来る!」
一瞬で兵たちの視線が集まる。
「おめーたちは幸運だ!」
「雪辱の相手が、向こうから来てくれるんだからな!」
兵たちの表情が変わる。
「このままバルカの影におびえ、負け犬として一生を終えるのか!」
「それとも奴を倒し、おらと一緒に栄光をつかむのか!」
マルスは拳を高く掲げた。
「おらは、ぜってーおめえたちの先頭で剣を振るう!」
「ついてこい!」
おおおおっ――!
地鳴りのような歓声が響いた。
マルスは満足そうにうなずくと、今度は後方に集められた奴隷たちへ向き直る。
「腕相撲に負けた諸君!」
どっと笑いが起こる。
「もう一度だけチャンスをやろう!」
「この街を守り、バルカを追い返せ!」
「そうすりゃ約束どおり、おめえたちは自由だ!」
そう言って、自慢の腕を力強く叩く。
「この筋肉にかけて約束しよう!」
「おらは約束を守る男だ!」
先ほど以上の歓声が巻き起こった。
その光景を見つめながら、バンデットは呆然としていた。
(……なんだ、この軍団は。)
寄せ集めの敗残兵。
傷だらけの兵士。
元奴隷たち。
それなのに――。
誰の瞳にも、確かな希望の火が宿っていた。
(ひょっとすると……。)
(この人なら、本当に街を守れるのかもしれない。)
そのとき、演説を終えたマルスが戻ってきた。
「ところで。」
まるで世間話でもするような口調だった。
「あの城門、くぐらせてもらえるのか?」
バンデットは戦慄した。
マルスはバンデットを伴い、ノーラへ入城した。
城門をくぐった瞬間、グラスは眉をひそめる。
人々は道の両脇から無言で一行を見つめ、
その視線には歓迎よりも警戒の色が濃かった。
(……空気が悪い。)
長年戦場を渡り歩いた勘が告げていた。
グラスはすぐさま部下を呼び寄せる。
「荷駄は城壁近くへ集めろ。」
「警備兵も配置しろ。」
「それと市民に伝達だ。許可なく城壁へ近づくな。」
「住民との揉め事も厳禁だ。」
「はっ!」
兵たちは素早く持ち場へ散っていく。
一方、その頃――。
そんな空気などまるで気にも留めず、マルスは城の中央通りを堂々と歩いていた。
やがてノーラの有力者たちが待つ広間へ案内される。
扉が開くなり、マルスは満面の笑みを浮かべた。
「おっす! おら、マルス!」
「よろしくな!」
一同が唖然とする中、マルスは隣に立つグラスの肩をぽんと叩く。
「細けえ話は、こいつから聞いてくれ!」
見事な丸投げであった。
グラスは小さくため息をつくと、一歩前へ進み出た。
「……それでは、今後についてご説明いたします。」
「……城門が閉じられている?」
斥候の報告を受け、バルカはわずかに眉をひそめた。
カンナルの大勝以来、進軍はあまりにも順調だった。
グラン軍は壊滅し、各地の都市は大軍の姿を見るだけで門を開く。
第二の都市カンパでさえ、戦うことなく降伏した。
それなのに――。
「こんな小さな街が、どうしてだ?」
バルカは地図へ視線を落とした。
ノーラは城壁こそ備えているが、兵力も物資も乏しい地方都市にすぎない。
抗戦して勝てる相手ではない。
「斥候を出せ。」
「城内の様子を探れ。」
「はっ!」
バルカは腕を組み、遠くに見える城壁を見つめた。
(ボロボロの軍が入城したという報告もあったな。)
敗残兵か。
あるいは行き場を失った難民か。
最初は、その程度に考えていた。
だが――。
(何かが違う。)
勝てぬ戦を挑むほど、グラン人は愚かではない。
門を閉ざした以上、そこには何らかの理由があるはずだった。
「さて……。」
バルカは小さく笑う。
「どうしたものか。」
コメント
1件
ああ、この第62話、めちゃくちゃ熱かったですね…! マルスの“おっす!”からの演説シーン、もう胸が熱くなりました。ボロボロの寄せ集め軍団なのに、希望の火が灯る瞬間の描き方が本当に上手い。バンデットが「この人なら」と心変わりする流れも自然で、読んでいてこっちまで希望が湧いてきました。それにしても、最後のバルカの「何かが違う」という違和感…次が気になりすぎます!