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(わっ、すっごく綺麗な人)
光を帯びると青く反射する銀髪に、深い海の底のようなサファイアの瞳を持った青年。
前に、あや君に聞いた、ゆず君と同年齢の俳優・眞白レオがそこに立っていた。どうやら、台本の読み合わせがしたいらしく、ゆず君を呼びに来たとか。ゆず君は俺と顔を合わせると、嫌だというように、俺の腕にしがみついた。まるで、見せつけるかのように、ギュッと引っ付いては、眞白レオの方を見る。
「…………祈夜、台本の読み合わせがしたい」
「え~見て分からないんですか? 僕、今忙しいので」
「そちらの方……は?」
「無視かよ」
低い声が聞えた気がするけど、ゆず君じゃないよな、なんて思いつつ、俺は、腕にしがみつく、ゆず君をどうにかしないとと、彼をみた。
別に、レオ……君の事を嫌っている感じではないけれど、話したくない、みたいな雰囲気が伝わってきて、この二人の間に何かあるのかと感くぐってしまう。特別何があるというわけではないらしいが、撮影に関わる事なのに、良いのかと、俺はゆず君に尋ねた。
「ゆー、ゆず君。いいの?」
「何がですか?」
「レオ……君が、台本の読み合わせがしたいって。映画をよくするためには必要なことじゃない?」
「……」
「ゆ、ゆずくーん?」
俺がそういえば、よりいっそ、面倒くさそうなかおをして、レオ君をみるゆず君。その姿は、駄々をこねた子供のようで、真剣な顔で態度で、映画の撮影に臨んでいるレオ君と、全くその気じゃないゆず君が対比しているなあ、とも取れた。
この気持ちのすれ違いってかなり大きいし、撮影に関わってくるんじゃないかと、ヒヤヒヤしてしまう。
けれど、ゆず君はいやだって言ったら、いやっていうし、へそ曲げたら、やらないと知っていたので、あまり強く言うことが出来なかった。
ここは、レオ君に説得して貰うしかないなあ、と思っていたけど、レオ君は、俺の方をじっと見て、不思議そうに首を傾げた。
「えっと、貴方は、誰ですか。関係者じゃない……よな」
「あ、うん……まあ、えっと。ゆず君に連れてこられて」
「えー酷いですよ。紡さん。僕のせいにして。紡さんが、撮影現場みたいっていったんじゃないですかぁ」
「いやいや、いってないからね!?」
何で、そんな平然と嘘をつくんだ、と思いながら、俺は全力で否定した。その必死な否定の仕方が伝わったのか、レオ君は、大きなため息をついた。もしかして、俺にも呆れているのかと思っていると、レオ君は、ゆず君の腕を掴んだ。細くて白い腕だけど、力を入れているのが筋をみて分かったし、ゆず君痛いんじゃ無いかと、ヒヤヒヤした目で見る。ゆず君は大丈夫なのかと、彼の顔を見れば、ストンと感情が落ちたように、心底どうでもいいみたいな虚ろな瞳で、レオ君をみていた。
とても、同じ人間に向けるような瞳ではないそれに、悪寒が走る。
怒った顔も、泣いた顔も、色々あるけど、こんな感情をそぎ落としたような顔、初めて見るから、何というか、そっちの方が人間味がなかった。
(ゆず君何で?)
そんなに、嫌いなのだろうか。演じることが。
と、俺は考えながら、ゆず君をみる。ゆず君が何も言わないので、レオ君が、俺のフォローに入るように、声をかけてくれた。
「祈夜、他人に迷惑をかけるのはダメだ」
「真面目君」
「……すみません。祈夜が」
「ううん、ついてきちゃった俺もあれだし。レオ君ってしっかりしてるんだね」
「そうですか」
と、首を傾げるレオ君。
ゆず君と比べれば、という意味だけど、ゆず君が決して悪いとはいっていない。でも、ゆず君はそれがカチンときたのか、俺の腕をギュッと締め付ける。痛いくらいに締め付けるものだから、思わず眉間に皺が寄ってしまった。
「ゆ、ゆず君痛い」
「紡さんは、真面目君の方が好きなんですか? 僕に魅力無いですか?」
「い、いやそういうことじゃなくてね……」
俺が、どういいわけ……どう説明すれば良いのか考えていれば、監督らしき人の声がかかり、スタッフ役者一同集まることになったようだ。レオ君は、先にいっていると、ゆず君を取り残していってしまう。
「ゆ、ゆず君いかなくていいの?」
「行きたくないです……僕、紡さんと一緒にいたい。舞台に、上がりたくない」
「……ゆず君?」
本音? と俺が、ゆず君の顔を覗こうとすれば、ゆず君はパッと顔を上げて、「じょーだんですよ」なんていつもの調子でいった。
「『俺』がいなきゃ? 撮影始まらないですし? あんな真面目君よりも、僕の方が出来るので。リードしてあげなきゃってくらいです。連れてきて何ですけど、先に帰ってもらっても大丈夫ですからね? 何か迷惑かけちゃいましたね。あはは~紡さんすみませんでしたあ」
なんて、いって腕から手を離す。その手が頼りなくて、思わず手が伸びてしまったが引っ込めた。ここで、彼を引き止めて何かがかわるわけじゃないから。それに、撮影が押したら、もっと迷惑がかかると。
俺が言える事なんて何もないから、と諦めて、俺はゆず君を笑顔で送り出すことだけを考える。すうっと息を吸って、それから俺もゆず君には劣るけど、笑顔でいう。
「いってらっしゃい、ゆず君」
「はい、いってきます。紡さん」