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「随分と我儘なんだな」
「何が? あと、さっきの台詞噛んだでしょ。誤魔化せたと思ってんの?」
あれか、悪かった。と、取り直しになった、台詞について指摘すれば、素直に謝るレオ君。こういう真面目で素直なところが大嫌いだ。僕にはない、もの、僕とは違う性格。
ライバルだっていわれているけど、全然違うのに、ライバル扱いされるこっちのみにもなって欲しい。
そんな、二人で売り出しているわけでもないのに、どうして、此奴と組まされることが多いのだろうかと。
(はあ……紡さんに帰って良いっていっちゃったから、帰っちゃったし)
待っててくれるかなあ、何て期待した僕も僕だけど。
レオ君の演技は、確かに進化していた。進化するきっかけになったのは、何か予想はつかないけれど、ここ四年で急激にその演技は伸びている。見れば分かる。たまに、追い抜かされそうと思うときはあるけど、別に焦ったりはしない。だって、僕は別にそれで勝負なんてしていないから。
にしても、僕のプライベートに突っ込んでくるって、デリカシーないな、とは思うけど。
「あと、我儘って、別にあれくらい普通じゃん。それとも、僕が甘えられる人いるの羨ましいわけ?」
「いや、祈夜らしいって思っただけだ」
「だから、何、そのらしいって」
らしい、らしい、煩いけど、僕らしいって何、と僕は聞く。
だって、その言葉は不快だった。きっと、レオ君は僕のこと何も知らない。レオ君がみて、憧れていて、肩を並べたいのは、僕じゃなくて、俳優の祈夜柚だから。素のぼくのことなんて、どうでもイイだろう。演技とは無縁に生きたい。普通になれない空っぽな、僕なんてきっと興味も無い。
レオ君は表情にでにくいだけで、何を言いたいか分かる。バカみたいに、心の中で頭の中で喋りすぎているせいで、言葉がまとまらないだけだと思っているから。
レオ君は、らしい、について答えられないのか、頭を捻っていた。分からないなら、安易にその言葉でまとめないで欲しいと思う。
「らしい……祈夜は祈夜だって……何というか、そうだな。甘えたいが、演じないと、甘えられないとか」
「……っ、知ったような口利くねえ。今日は良く喋るじゃん」
「それで、さっきの人は誰なんだ」
「ほんとマイペース。僕の話し聞かない? ね? ちょっとは、聞こう?」
紡さんに、僕は自由人だと言われたけど、この自由さ、マイペースさは此奴からうつったんじゃないかと。元祖マイペース。
レオ君は、僕の話なんて無視して、というかそもそも、聞えなかったとでもいうように、さっきの人は誰なんだと聞いてきた。僕に興味を持つのは昔から変わっていない。憧れの人に話しかけに行って、何かを得ようとするその向上心の塊、真面目君は本当に苦手。
「誰って、知り合い」
「そんな風には見えない」
「じゃあ、ちょっと付合って貰っている人」
「恋愛的にか?」
「どうでもイイじゃん」
「俺にも、好きな人がいるから、分かるぞ」
「何が?」
だから、人の話聞かなさすぎる。と、思っていると、思ってもいない返答が帰ってきて、僕は、思わず聞き返してしまった。
レオ君に好きな人がいるとかはどうでも良くて、その次。
(分かるって何? それじゃあ、僕が紡さんに恋しているって言いたいのかよ、此奴)
そういうことを言いたいんだろう。全然顔と声とで伝わってこないけど。
紡さんは、ちょっと利用できそうなお人好しだからずっと利用してきたけど、確かに、他の人よりかは嫌いじゃないし、一緒にいたいとは思っている。でも、それが恋だなんて思ってない。
僕が一方的に利用していて、罪悪感すら感じてきている。
だって、紡さんに告白されちゃったから。紡さん、本気になっちゃって、そこまでさせるつもり無かったから。
僕は僕の心が分からないから、これでいいのとか、そういうのも分からない。けど、このままじゃいけないことぐらいは分かってる。
あの答え、出すまで、紡さんは辛いままだろうし。でも、振ろうとも思わない。
「……」
「好きなんだな、あの人のこと」
「何で分かるんだよ」
「だって、俺と同じ顔していた。俺も、好きな人に対しては、あんな感じだ」
「どんな」
「甘えたいって思うのもあるし、自然と目で追ってしまう。好きな人からかけられた言葉はどれも特別に聞えるし、離れたくないって思う。兎に角特別なんだ、人と比べて」
「真剣な恋だねえ」
僕は、軽く返したが、本気で語ってくるレオ君が眩しくて視線を逸らした。
いつ、レオ君に好きな人が出来たとか、僕以外の憧れや特別を抱き始めていたかなんてどうでもイイし、知りたくもない。でも、きっとそれがレオ君の演技を押し上げた、高見へとのぼらせた一つの原因だろう。
(……みないうちに、成長してさあ)
努力が天才に増さると思っているのか。
いい、ぶちのめす。
「まあまあ、後半頑張ろうよ。お互い」
「ああ、そうだな。今度は噛まないように頑張る」
「主演なんだから。僕に食われないでね」
まあ、食われて、泣きべそかけよ、クソ真面目君。
僕は、レオ君の肩を叩いて、先ほどまでもやもやっとしていた気持ちを押しつけ、残ったものは蓋をするようにして、俳優・祈夜柚に切り替えた。
(……紡さんを好きかって? まだ、分からない……分からないから、答えだしてないんでしょうが)
前向きに検討。それは、口から出任せだ。
けど、確かに、何処かで……きらっと光る何かを見てしまったのは、確かだった。
(くだらないかも、僕らしくない……)
らしくないって、嫌いなのになのになあ、なんて思いながら、僕は道ばたにあった石ころを蹴飛ばした。