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初狩りをしてきたおっさんを倒し直ぐに自宅に戻りカナのENを回復させながら、先程の出来事について2人で話し合う。
「なぁ?」
「……なんだ」
「さっきの戦姫大戦なんだけどさ。」
「あぁ…」
「あの、紅いオーラはなんなの?」
「知らん。」
「えぇ………」
「ただ可能性として一番有り得るのは【スキル】があの瞬間開花したんだろう」
「スキルの開花?」
「戦姫大戦をやるにあたり、戦姫の装備はもちろん性格の把握や作戦、そしてスキルの有無が大事になってくる。で、そのスキルなんだが会得方法は一つのみ。とにかく場数をこなしてランダムなスキルを得ること。それに尽きる」
「つまり、特定のスキルを狙って会得はできないシステムなのか」
「そうね。で、そのスキルなんだけど今回みたいに窮地を脱するスキルもあれば戦況を少し有利にするだけのものもあるし、基本性能を上昇させるものとかまぁ、種類はいくつもある。」
「てことは、別にスキル依存で勝敗が決することはないんだな?」
「余程のことがないとそれは無い。あくまで戦姫大戦は『装備』『戦略』『育成方針』『スキル』これらをどのように扱うが勝つための鍵になるだ。極端に尖った性能はないと思ってもらって構わないな。」
「へぇ〜、プレイヤーとしての立場になると色んなこと知れるなぁ」
「どぉ?少しは戦姫大戦やることに乗り気になってくれた?」
「いやぁ?あくまでカナが楽しんでもらうためのものだと思ってるから、僕自身は乗り気になることはほとんどないよ」
「義務的な扱いなのか」
「そりゃね?『お友達』がボコボコにされたりするの見たくないもん。」
「!!」
「可能ならそういう事はやらないで欲しいけど、それは僕のエゴだし君はやりたいんだからそれを尊重するのが本来の『戦姫』を扱う者のあり方じゃない?」
「思ってたよりアンタ良い奴ね」
「あっそ…」
「とりあえず私はEN回復するから寝るね」
「はいはいお休みね」
カナが寝たのを確認したあと使わなくなった古い毛布を戦姫サイズにカットし、彼女に掛けてとある友人に連絡する。
『おつかれ〜』
『お前から連絡とか珍し!?』
『ま、ちょっと野暮用でね』
『なんだよ?お前から連絡来ることほとんどないから内容気になるだろ』
『別に大した事じゃないぞ?』
『いいから聞かせろ』
『実は僕戦姫を拾って今パートナーにしてるんだけど、戦姫については知識ないから色々教えて欲しいなって』
『は?戦姫を拾った?』
『そう拾った。』
『聞き捨てならない言葉よそれ?』
『あっ、やっぱりそう?』
『そりゃね?』
『じゃあ、あれか?この話チャットじゃなくて会って話した方がいいか?』
『そうだな。それがいいわ』
『それじゃあ、どこ行けば良い?』
『俺の行きつけの店あるからそこで』
『僕そこの場所知らんから、待ち合わせしていこうや』
『なら、待ち合わせ場所は”いつもの”ところな』
『はいはーい。着いたらまた連絡する』
『了解』
そんなチャットを交わしたあと再度外に出る支度をして自宅を後にする。ちなみにカナには安静にしてて欲しいので、寝てる間にこっそりと出掛けることにした。
その後自宅から最寄りの駅まで行き、”いつもの”待ち合わせ場所のとある改札付近で暇を潰す。もちろんしっかり着いたという報告をして待っている。で、僕が着いた10何分かあとで先程連絡した友人が到着する。
「お前さっきの話ホントだろうな?」
「なんで、基本連絡しない奴が嘘つく必要があるんだよ」
「いや、仲が深まったからこそやりかねないやつだと俺は思ってるからな」
「やらないよ馬鹿」
僕とこんなくだらない会話を交わしてるのは数少ない友人の一人【アキト】だ。学力と運動神経に関しては人並みだが、それをカバーするほどの顔面の破壊力。そして、更にそのカバーを一瞬で崩す戦姫オタクだ。そう、彼は俗に言う残念なイケメンなのだ。今でこそ戦姫自体が受け入れられてきているが、出た当初は、それはもう女子から引かれてた男なのだ。今ならその短所は長所になりそうだが、時間というのは残酷でさらに詳しくなった為より残念なイケメンに拍車がかかってきてる。
「とりあえず店に向かいながら事の経緯をざっくり話してくれよ」
「あぁ」
「……はぁ。事の経緯はそんな感じね」
「で、実際のところ僕の今のこの行動は良い悪いの二択だとどっち?」
「うーん…グレーゾーンではあるんだよな。」
「というと?」
「確かに捨てられてた戦姫を拾っただけと言われたらそうなんだけど、リナも知っての通りそういった戦姫は元の販売店が回収するようになってるんだよ。」
「なんか戦姫アプリをアンインストールすることで登録IDが消えて、それを確認次第回収し、AIを初期化して再度販売するって流れだよね?」
「そう、その流れだよ。だから極端なことを言ってしまえばリナはお店の物を盗んだことになるんだ。」
「まぁ、そうなるの、かな?」
「けど、俺の中でちょっと引っかかることがあってさ」
「それは?」
「お前が拾ったっていう戦姫なんだけど、話を聞いてる感じどうも捨てられたにしてはなんかなぁ、て」
「ますます分からんな」
「そもそも戦姫を捨てるヤツの気が知れないのは前提として、もし捨てるなら装備は全て外してそのうえスリープモードにするのが捨てるヤツらの中で常識なんだよ」
「装備を外す理由は何となく分かるが、スリープモードにする理由は?」
「リナみたいに助けを乞う声を出されては困るんだ。戦姫は人間とほぼ遜色ないほどの知能を有してる。だから、元持ち主の名前も顔も覚えているものだ。」
「そうか、それなら拾ってくれた人に情報を提供して特定させることも可能なのか。」
「だからスリープモードにする訳なんだが、リナの場合はスリープモードはおろか、何故か装備も付けられてたままだったんだよな?」
「そうだね。その時の装備はアニメとかゲームとかに出てくるいわゆるヴァルキリーみたいな装備で、重火器は装備されてなくボロボロの盾とへし折れた剣を背にしてたね」
「ヴァルキリー装備、か」
「なんか不思議なのか?」
「いや、ヴァルキリー装備は確かAランク以上の高レア装備で、セットを揃えると特殊効果をもたらす二世代くらい前の装備で今でも前線を張れる性能なんだが……」
「そんなトンデモ装備をしてる奴を捨てた奴がいるってことだろ?」
「ま、まぁモノの価値を見極められないやつは数え切れないほど見てきてはいるが…」
「なんにせよ、僕の戦姫は謎が多いって事ね」
「まぁそうなるな。その本人が居てくれれば助かったんだが……」
「あいにく少し前の戦闘で休養中だ。」
「戦姫大戦をやるのが嫌いなリナが戦姫大戦をやるとはね」
「本人がやりたがってるなら仕方なくやらせるよそりゃね」
「で?初戦闘は勝ち星か?」
「一応勝ち星ではあるけど、初狩り野郎と当たったのは運がなかったな」
「…ちなみにそいつどんなやつだ?」
「えーと、確かオッサンで3〜40いかないくらいで、小太りのいわゆるアニメとかでよく見るクズ上司みたいなやつ。」
「使ってた戦姫の名前は?」
「アサルトナイトとか言ってたな」
「………アサルトナイト、か」
「なんか心当たりが?」
「面倒くさいやつに目をつけられたなって」
「マジ?」
「マジだね。実はそのオッサン、戦姫メーカーの会社のひとつ【ミライソフト】のちょっとした役職者だよ。」
「おいおいそんな奴が初狩りとかしてんじゃないよ……」
「表向きは他社の戦姫性能を調べる為とか言ってるけど、多分目的は別にある。それこそ自社の戦姫を売りつけるとか、ね」
「ほんとにとんでもないクズじゃん」
「けど、よく勝てたね。相手同じランク帯に合わせたとしても装備はだいぶ固められてたはずだけど…」
「それなんだけどさ、僕の戦姫が戦闘中にスキルの開花?をしたみたいで逆転勝利したんだよ」
「へぇ。なかなかやるな。ちなみにそのスキルは?」
「名前は知らないけど、なんか紅いオーラを身にまとってたね」
「!!」
「それを纏ってから全てのステータスに補正が掛かったみたいで、戦姫の速さに装備の火力もアップしてた。まぁ、その分ENを消費したのか疲れ果ててたけど」
「リナ、また今度会えるか?」
「会えるけど……」
「その時今度は戦姫を連れてきてくれよ。やっぱり一目見たい」
「もちろんいいよ。多分今頃アイツも起きて拗ねてるだろうからね」
「それじゃあまた、日程決まったら連絡するか頂戴ね」
「おう。んじゃ今日はお開きにするか」