見慣れない天井
はっきりとしない頭を働かせ、
状況を把握する
ここはどこだろう、俺は何をしていた?
白と通学路で一緒に喋って、
そこからの記憶が無い
ぼんやりと窓の外の鳥を見つけながら
記憶を遡る
「あ、黒くん!起きた?」
「白、?」
カーテンを開けたと同時に俺に
抱きついてきた白
その反動で思わず後ろに寄りかかる
「ほんま心配したんやで!?」
「いきなりぶっ倒れるんやもん!」
どうやら、白の話によると
俺は突然動きが止まり、過呼吸になって
倒れたという
周りには誰も人がおらずに、
白が泣きながら学校の保健室まで担いだとか
学校にも家にも遠かったあの場所で、
白は相当パニックになったんだろうな、と
少し微笑んだ
「何笑ってんねんぶん殴るぞ」
「すまんすまん、…あんがとなw」
ブーブーと拗ねる白を撫でて、再び窓を見る
透き通った水色と紫色だった
水と白見たいやなぁ、と軽くつぶやくと
「そうやね」と優しく笑みを返してくれた
そういえば、水は今は元気かな
辛くて泣いてないといいな、
あいつは笑顔が1番可愛いからな
「あ、そういや黒くん、お兄ちゃんが迎えに来るらしいで」
「桃兄ちゃんが?」
家族は来ないと思っていたので、
少し驚いたが、妙な気分だ
なぜ母親が来ないんだろう
母は兄と俺が仲が良くないことを知っているはずだ
それに、俺が通っている学校は、兄が休んでいる学校でもある
「不登校」ということは、
視線の標的に合うに違いない
分かっている、迷惑だってのも
水の方が体調が悪いのも
優先順位なら、水の方が格上だってことも
自分が母にあまり愛されていないことも
全部、全部わかってる
「僕も早退できないかなぁ、」
白は表情が暗くなった俺に気を使ってか、
とんだ冗談を口にした
そして白は俺に向かって上目遣いをした後
担任の愚痴を話し始めた
普段は優しい彼なので新鮮で面白い
勝手に笑みがこぼれる
何分も白の愚痴に相槌を打っていると
保健室のドアの外から声が聞こえてきた
ドアが開き、兄の顔が見える
何を話そうかと考えているうちに、
鼓動が早くなる
そんな時、兄はゆっくり口を開いた
「黒、帰るぞ」
「あ、…おんっ」
せめて白の前では笑顔を作ろうと
無理矢理にでも明るく返事をする
「あ、黒くんこれバックね」
「何から何まであんがとな、」
「そりゃ親友ですから」
白から離れたくない欲を抑え、
無言な兄の背中について行く
職員室、教室、玄関を通り過ぎ、
何分も通学路を歩く
遅くてもいいから電車が良かったな、と
兄は悪くないはずなのに考えてしまう
そんな自分が憎らしい
そんな時、兄は俺がさっき倒れたら辺の付近で 止まった
「お兄ちゃん…?」
俺が口を開くと、兄が手をあげた
何をするんだと手を目で追っていると、
皮膚と皮膚が重なり合った音がする
何をされたんだ、頬が痛い
兄に叩かれた、頬を
実の兄に、14年間同じ家で過ごした兄に
叩かれた頬がヒリヒリする
まだ状況が把握出来ない
なんでだろう
ここ1年何も話していなかったはずなのに
目が合っても逸らされる睨まれる日々だったはずなのに、
いざ見捨てられると、こんなに悲しくなるのはなんでだろう
兄の視線が痛い
兄の瞳は、暗くて、冷たくて怖かった
あの頃の、暖かく微笑んでくれた眼差しとは違う
笑う度に見えてた八重歯も、固く口を閉ざしている
あの頃にはもう、戻れないんだな
その事実はだいぶ前にわかっていた
受け止めなかった俺が馬鹿だった
「いつか」を信じた俺が阿呆だった
「過去に戻れない」
この事実が僕の、涙を止まらせない事実だ
コメント
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まって、、出てたの気づきませんでした……😭 ごめんなさい………🙇😭 最高すぎました…!!!✨️ 黒くんの気持ちがめちゃめちゃ分かります……泣けます……