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帝国開発の社長、大河原は、都内最高級ホテルのラウンジに私を呼び出した。
彼は、かつて父が心血を注いだ事業を「古臭いガラクタ」と切り捨てた男だ。
「詩織さん。直樹君という不幸な障害も消えたことだ。単刀直入に言おう。ルーツ・ガーデンの土地を、時価の3倍……30億円で買い取りたい」
大河原は、まるで慈悲を与えるかのように小切手を差し出してきた。
「君のような女性が一生遊んで暮らせる、素晴らしい『利益確定』だと思わないかね?」
その態度は、かつて直樹が私に生活費を渡す時と、寸分違わず同じ「支配者の顔」をしていた。
「30億……。確かに、数字としては魅力的ですね」
私は、父の万年筆を指先で回しながら、冷たく微笑んだ。
「ですが大河原社長、あなたの帳簿には『一円の信用』も載っていない」
「何が言いたい?」
「……30年前、あなたが父を裏切り、某県の発注事業で談合を主導した際の裏金。……その振込先となっていた休眠口座が、最近、私のプロジェクトの関連先として浮上しましてね」
大原の顔が、一瞬で土色に変わった。
直樹が九条から奪い、私がさらに九条の残党から回収した「闇の資産リスト」。
その中には、大河原が長年隠蔽し続けてきた致命的な「負債」が紛れ込んでいたのだ。
「……何の話だ。証拠でもあるのか?」
「証拠なら、今この瞬間、陽太たちが運営するルーツ・ガーデンの公式チャンネルで、世界中に向けて『土地を守るためのクラウドファンディング』と共に、あなたの過去の『不正決算』の概要として公開されています」
私はスマホの画面を彼に向けた。
そこには、陽太と施設の子たちが笑顔で「僕たちの場所を守ってください!」と呼びかける映像と
その背後に流れる、帝国開発の黒い相関図。
大人が札束で殴りかかってくるなら
こちらは「次世代の純粋さ」と「動かぬ証拠」という名の正攻法で、彼らの信用を一円単位で暴落させる。
「30億の小切手、そんなもの私の子供たちが植えた苗木の一本分の価値もありません。……お引き取りください。」
ラウンジを去る私の背中に、大河原の罵声が響く。
けれど、私の心は一点の曇りもなく晴れ渡っていた。
【残り21日】