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#離婚
#ヒトコワ
#仕事
「壊せ!一円の価値もないガラクタ共々、更地にしろ!!」
大河原の怒号と共に、ルーツ・ガーデンの正門前に巨大な重機が数台、牙を剥いて現れた。
株価の暴落で理性を失った大河原は
法的手続きを無視し、「行政の代執行」を装った強行突破に出たのだ。
私と陽太、そして施設の子たちは、植えたばかりの苗木を囲むようにして立ちふさがった。
けれど、重機は止まらない。
金属の轟音が、子供たちの怯えた泣き声をかき消そうとしたその時。
「……そこまでだ。この土地の『一円の信託』、まだ解かれちゃいねえぞ!」
重機と私たちの間に、数台の軽トラックが猛スピードで割り込み、横付けされた。
車から降りてきたのは、かつて直樹に切り捨てられ
私が再起を支援したあの町工場の職人たちや、地元の建設会社の男たちだった。
「詩織さん、遅くなって悪かったな! 道具を持たせりゃ、俺たちの右に出る奴はいねえ。この土地に指一本触れさせねえよ!」
職人たちは、あっという間に重機の前に頑丈な鉄製のバリケードを組み上げ、物理的な「壁」を作り出した。
「な、何だ貴様らは!業務妨害で訴えるぞ!」
大河原の秘書が叫ぶが、職人の一人が鼻で笑った。
「訴える?面白い。あんたたちが今使っているその重機、メンテナンスを請け負っているのは俺たちの仲間だ」
「1ミリの整備不良も見逃さねえ厳格な連中だぜ。不当な工事に加担するなら、今すぐ全車両の『稼働停止』を勧告してやる」
現場は騒然となり、やがて通報を受けた警察と報道陣が雪崩れ込んできた。
カメラの前で、私は父の万年筆を握りしめ、静かに宣言した。
「大河原社長。あなたが信じている『資本』は、今日、人々の『信用』という名の決算で赤字を叩き出しました」
「……見てください。これが、あなたがガラクタと呼んだ人たちが作った、一円の狂いもない鉄の意志です」
生中継される映像
大河原が送り込んだ重機は、市民の怒りと職人たちの意地によって完全に封鎖された。
帝国開発の株価は、さらに底の見えない暴落へと突き進んでいく。
◆◇◆◇
その夜───
静寂を取り戻したルーツ・ガーデンで、私は焚き火を囲む職人たちに、温かいお茶を配った。
「皆さん、ありがとうございます…本当になんとお礼を言ったらいいか」
「何言ってんだ、詩織さん。…あんたからもらった『二度目のチャンス』。その利息を返しに来ただけだ」
「……一円の恩義を忘れる奴に、まともなモノ作りはできねえからな」
【残り20日】