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『未来の落し物』あらすじ
笹波駅——そこは「未来で失くしたものが、落し物として現れる」と噂される小さな駅。ベンチの下や改札脇に現れるそれらは、誰もが一度は出会うと言われる不思議な品々だ。小学生の石野が拾ったのは、自分の未来の遺書。売れない作家は、未来で書くはずの傑作の冒頭十行を手にする。中年の営業マンは、自らの死亡日が記された保険証のコピーを発見し、健康を見直す決意を固める。亡き子の声が録音されたぬいぐるみ、未来の別れ話が残るスマホ、廃棄日が刻まれた婚約指輪——どの落し物も、持ち主の“今”に揺らぎをもたらす。老人は孫が未来に描く絵日記を見て、会える日のために笑顔を用意する。不登校の少年は未来の卒業証書を受け取り、家路につく。犬の迷子札、未来の自分からの手紙、乗れば戻れない電車の時刻表、そして「はじまりの旅」と刻まれた切符——それぞれの物語が、拾った人の心を少しだけ変え、笹波駅に未来の気配を残していく。