乱暴に自宅の扉を開けると、驚く家族に見向きもせず自室に転がり込んだ。
ベッドに潜り込み、上がった息を必死で整える。
最後に大きく息を吸い、限界まで吐き切る。
呼吸は整った。のに。
頭の中は唇が触れた後の、目を丸くした大森の顔ばかり浮かんで。
耳には”こうだよ”と囁かれた声が響き続けて。
他の同級生とは比べ物にならないほど、甘く艶のある声。
中性的で、吐息の交じった声は刺激が強過ぎて。
自分の中心に宿った熱が全然引かない。
ジーンズの中で窮屈そうにしているソレに手を滑らせる。
しっかり立ち上がっているソレは、俺に快感とともに絶望を与える。
男に対して…大森に対して、こんな欲が自分にあったなんて。
やっと友達になれそうだったのに。
俺は何をやってるんだ?
こんな事、辞めた方がいい。
思考とは裏腹に、上下に扱く手は止まらない。
大森の顔が、声が、触れた唇が、頭の中を支配する。
「…っ、はっぁ…!!」
ベットリ手に広がった欲は、自分を、大森を汚した気がして、情けなさと虚しさしかない。
あまりにもドロドロした感情が身体中に渦巻いて、
一筋伝った涙を、拭う余裕もなかった。
side:mtk
「…なんだアイツ」
勝手に来て、勝手に飛び出して行きやがった。
ギターと一緒に人の事押しやがって。
そりゃ驚きはしたけどさ。
あんなの事故だろ、事故。
掠っただけだし。
すー…っと指で唇を撫でてみたけれど、ギターを弾き続けて固くなった指先は、あの時の感触とはほど遠かった。
コメント
4件
えー書き方上手すぎて…めちゃ好きです
ひょー。続き気になります…。