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その手を引っ張られて、ギデオンの前に座らされた。しかも向かい合わせで。更に抱きしめられて、リオは完全に混乱する。
「えっ、ちょっ、待っ…」
「無事でよかった。…いい、追うな。戻るぞ」
「はっ!」
リオはギデオンの胸から顔を上げて、まわりを見る。アトラスとロジェがいる。皆助けに来てくれたんだと嬉しくて、いきなり涙が出た。
「みんな…ありがと。心配…かけて、ごめっ…」
「泣くなよォ。約束を破ったことは後で怒るけど、とりあえずリオが無事でよかったっ」
「アトラス…」
「早く戻ろう。風邪を引かないうちに」
「ロジェさん…」
「リオ、怪我はないか?熱はないか?」
「ギデオン…少し熱があるかもだけど、大丈夫だよ」
「は?大丈夫ではないではないか!それにおまえが連れ去られる時、血を見たが」
「あー…」
血を吐いた時か。強力な魔法を使ったから、身体がもたなかったんだろうな。デックが治してくれたからもう大丈夫だけど。
リオは、ギデオンのコートの上から硬い胸を押して、少しだけ身体を離す。
「転んで口を切ったんだよ。でも少しだけだったから、もう治った」
「…ならいいが。血を見た瞬間、心臓が止まるかと思ったぞ」
せっかく離した身体が、再び抱きしめられて、また密着する。
ギデオン、どうしたんだろう。こんなに強く抱きしめられて嬉しいやら恥ずかしいやら。アトラスとロジェがすごく見てるし。それにほら、ロジェがすごく困った顔してる!|咳《せき》払いしてる!
「んんッ!…ギデオン様、早く戻りましょう。今回の魔獣のこと、ビクター様が王城に報告されますが、こちらも報告書を提出しなければなりません」
「わかっている。リオ、少々揺れるが、しっかり掴まっておけよ。飛ばすぞ」
「うん、え?このまま?せめて向きをかえ…っ」
リオが話している途中で、ギデオンが|手綱《たづな》を振って馬を走らせた。
自分では決して出せない速さで馬を走らされ、リオは必死でギデオンに抱きつく。アンが|潰《つぶ》れないように少し腰を引いて。
ギデオンもしっかりとリオの腰に手を回した。時おり跳ねた拍子に、リオの額に唇が触れる。
わざとなのか偶然なのか、わからなくてリオは再び混乱した。
休憩を挟みつつ半刻走り続け、小屋に着いた頃には、リオの熱が高くなっていた。