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31 - 第31話 月子の嘘?

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2025年05月18日

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◻︎月子の家




夫の実家から郊外へ30分ほど車を走らせたところに、月子の家がある。結婚してすぐに駅近くにマンションを買ったけど、それが値上がりしたからとさっさと売り払って、この新興住宅地に建売を買ったらしい。


「考えてみたら、私、ここに来たの初めてだわ」


「僕も2回くらいしかないよ。確か、こっちだったはず」


似たような家が立ち並び、一度来ただけでは覚えられないなと思う。


「あった、ここだ」


門扉の表札を確認して、チャイムを押す。普通の二階建て、建売らしい外観。まだそんなに古くはないけれど、玄関先に積み上げられている植木鉢やプランターが気になる。おそらく、当初は可愛らしい花や植物がこの玄関を彩っていたのだろう。そして枯れてしまったあと、そのまま放置というところか。

他にも、庭の方にはもう絶対乗っていないだろう自転車や、壊れたブランコが見えた。


「ね、まさかとは思うけど、家の中って大変なことになってない?」


「わからないな、一体どんな暮らしをしてるのか」


誰も出てくる気配がない家のチャイムを、もう一度鳴らす。ガレージにはあの高級車が2台あるから、留守ではないはずだけど。


ガチャと音がして、やっと玄関ドアが開いた。中から顔を出したのは月子の夫、みつるだった。


「あ、お義兄さん……」


充は私と光太郎を交互に見た。何か言いたそうに見えるのは、この人の雰囲気なのだろうか。


「よぉ!月子が体調崩したって聞いて、心配になったから来てみたんだけど」


「もしかして、寝込んだりしてる?うるさいかな?」


「あ……今は上にいます」


「寝てるのか?」


「はぁ……」


「起こさないように静かにするから、とにか家に入れてくれないか?ここだと話しづらいから」


光太郎に促され、やっと門扉を開けてくれた。


「どうぞ、散らかってますけど」


そう言われて入った玄関は、確かに狭かった。でも散らかっているというよりは、たくさんの物で溢れて足の踏み場がないという状況だ。よくテレビで見るような、ゴミが溢れているというのとは違う。


「なんだ、コレ。買ってそのままのものばかりじゃないか、なんでこんなところに置いておくんだ?」


光太郎も気づいていた。そこに置いてあるものは、買ってきてそのまま置いたものばかりのようだ。


靴が入った箱や、空気清浄機、スムージーを作るミキサー、体脂肪率計、ロボット掃除機、腰用マッサージ機、髪にいいドライヤー……、あとは下になってわからないものが多数ある。玄関からリビングへ続く廊下に、所狭しと積み上げられたモノ。それはリビングの中にも同じように積み上げてあった。



「ね、ちょっとこれ、どうして?」


買ったはいいけど封も開けてないものばかりが、広いとは言えない家の中に溢れかえっている。


「それが……月ちゃん、次から次に買ってしまうんです。それが必要かどうかなんて関係なく」


「それって、あれか?買物依存てやつか?」


「わかりません、気がついたらこんな状態になってしまってて」


ぽりぽりと頭をかく充。


___いや、気がつくのが遅すぎるだろ!


ふーんと言いながら、箱を持ち上げて中身を確認してみる。光太郎も同じことをしている。


「「あのさ!」」


光太郎と二人同時に声が出た。


「ん?」


「あ、あなたからどうぞ」


発言権を光太郎に譲った。なんとなく考えていることが同じような気がしたから。


「あのさ、こんなふうに置いてあるものって使わないんだよね?だったらこういうものを買い取ってくれるお店に持っていったら?新品ばかりだから、そこそこの値段で引き取ってくれると思うけどな」


「私もそう思った、使わないんだよね、コレ全部。だったら早いうちに処分した方がいいと思うよ」


「はぁ、まぁ、そうなんだけど……」


なんだかもにょもにょ言ってる充。その様子を見て、二階に寝ているという月子に聞こえないように、声を潜めて光太郎が話す。


「お袋から聞いたんだけど、ローンの支払いに困ってるそうじゃないか?だったら売れるものは売って、できるだけ支払いに充てて減らすべきだろ?悪いけどお袋たちも僕達も、お金を貸してやれるほど余裕はないんだよ」


うんうんと私も隣でうなづく。


「はぁ、それはそうなんですが。ここを片付けてもまたきっと、月ちゃんは買物してきちゃいます。今までにもこういうことがあったので」


光太郎と私は目を合わせた。ということはやっぱり、精神的な何かが月子を追い詰めているということだろう。


「じゃあ、月子がこうなってしまう原因を突き止めないと、また同じことを繰り返すってことだな。でもまだ学費が必要な子どもたちがいるんだから、このままじゃダメだろ?なんとかしないと」


「ね、充さん、月子さんの病気って、どんなものかわかってるの?」


「え?病気?」


「そう。何かしらの病気になってしまってしばらく会社を休むことになったから、給料が減るからお金を貸して欲しいってお義母さんに相談したんでしょ?」


充は、目を白黒させている。どうやら初耳のようだ。


「確かに先週末3日ほど、仕事は休んだけど。病気というほどのことはなくて体調不良みたいです。多分更年期のせいだと月ちゃんは言ってたけど」


「は?」


お義母さんに言ってたことと少し違う。これはちゃんと話を聞かないと。


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