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「明日の勉強場所どうしよっか。」
勇斗くんと勉強会を始めて6日目の土曜日。
いつも通り図書室で勉強していると、勇斗くんが口を開いた。
「それ俺も思ってたんだよね。どこがいいかなぁ。」
土曜日は部活動があるため、学校がこうして開放されている。
そのため、俺たちは図書室を使うことが出来ている。だが、明日は学校が開いていないのでここに来ることが出来ない。
どこかお店に入ってやるにしても長時間居ずらいし…図書館は遠いんだよな……。
「……集まる場所もないしさ。明日勉強サボってデートする?」
「えっっ!?!?/////」
予想もしていなかった言葉に、思わず心が動揺する。
「こんだけ勉強してたら、1日くらいやらなくても大丈夫じゃない?」
「それはそうかもしれないけど……。」
「どっかその辺でさ、ご飯食べたり買い物したりしてブラブラしようよ。」
勇斗くんのその言葉で少しだけ肩の力が抜ける。なんだ、ただ遊びに行くだけか。
ほっとするような、少し残念なような。
「も、もー!普通に遊ぶだけじゃん。急にデートとか言わないでよ。」
「ごめんごめん笑 でもさ、ちょっと息抜きしないとやってられなくない?どっか行こうよ。」
「そうだね。流石に勉強ばっかで疲れたかも…。」
「やった。じゃあ、どこ行こっか。」
「うーん……、あんまり友達と遊ばないからどこが良いか分かんないや。」
「それじゃ、俺がどこ行くか決めていい?エスコートしてあげる。」
満足気に笑う勇斗くんは、まるでいたずらっ子のようだ。
またからかって俺の反応楽しんでる…。
「またそうやって…..。…明日、楽しみにしてるからね?」
「うん!任せて!」
勇斗くんと学校以外で会うのは初めてだ。
ただ遊ぶだけ。それだけだって頭では分かってるはずなのに、
何でこんなに落ち着かないのか自分が一番よく分からない。
勇斗くんと解散して家に帰ってからと言うものの、ご飯中もお風呂中もずっと頭の中を何かがぐるぐるしていた。
気がつけば、太陽が顔を出すまで寝付くことが出来なかった。
「─────と───んと──仁人!起きなさい!!」
母親の声で深い眠りから現実へと戻される。
「…………っん、、なに……」
「何じゃないでしょ。今日出かけるんでしょ?こんなに寝てて大丈夫なわけ?」
重たい目をうっすらと明け、スマホを確認する。そこには、既に家を出る予定の時間が表示されていた。
「やっば!!!寝坊した!」
布団から勢い良く飛び出し、とりあえず視界に入った服に着替えて洗面所に向かう。
急いで洗顔を済ませ、申し訳程度に寝癖だけ直す。
あーもう……どの服着ていくとかどの髪型するとか予め決めといたのに……。最悪……。
「行ってきます!!」
玄関を飛び出し、全速力で待ち合わせの駅前へ向かう。
勇斗くん……絶対もう待ってるだろうな…。
息を切らしながら待ち合わせ場所に到着する。日曜日の駅前は、いつも異常に混雑していた。
どこもかしこも人だらけで、勇斗くんの姿が見つからない。
人混みをかき分けながら歩いていると、後ろから急に腕を掴まれる。
「っわ!!」
驚いて振り返ると、そこには探していた人がいた。
「は、勇斗くん…!」
「良かった、思ったより人多くて会えないかと思った。」
「待たせてごめんね!俺、寝坊しちゃって……。」
「全然大丈夫だよ。むしろ仁人に何かあったのか心配しちゃった。何もないなら全然おっけー。」
遅刻してしまった俺が悪いのに、勇斗くんは遅刻を許すどころか俺の心配までしてくれた。その優しさに、俺の心にあった罪悪感が少し和らいだ気がした。
「本当にごめんね…?行くところ考えてきてくれたんだよね。時間は、大丈夫?」
「うん、元々余裕もって集合時間伝えてたから。今から行ってピッタリくらいかな。」
「よかったぁ……。」
「そんな気にしなくて大丈夫だよ笑 じゃ、行こっか。」
勇斗くんと並んで歩き始める。
私服の勇斗くんはいつもより大人っぽく見える。スタイルの良さも際立っていて、隣を歩いていて良いのか不安になってしまう。
俺と勇斗くんって釣り合ってるのかな…。
「勇斗くん、ここって……。」
「うん、そう。映画館。」
電車で数駅揺られて着いたのは、大きな映画館。
俺が映画好きだって、前に言ったの覚えててくれたのかな。
なんだか、ちょっと嬉しい。
「はい、これ仁人の分のチケットね。」
「ありがとう。…………え、この映画!」
渡されたチケットに書かれていたタイトルは、俺の好きな映画のシーズン2だった。
「うん。前にこの映画好きだって教えてくれたでしょ?ちょうど続きが公開されたタイミングだったからさ、どうかなと思って。」
「嬉しいけど…これ続きものだよ?勇斗くん、前のやつ見たことあるの?」
「それは大丈夫。仁人とこの映画見たかったからさ、昨日サブスクで見て きた。」
勇斗くんの言葉に、思わず口が半開きになってしまう。
あまりにもスマート過ぎる……。
俺が好きなものを覚えててくれたり、それを楽しむために予習してくれたり。
勇斗くんって本当に気が利く人だな。
でもきっと俺に対してだけじゃない。他の友達にも、多分これくらいの事しているんだろう。
自分だけ特別って勘違いしないようにしないと……。
勇斗くんと座席につくと同時に劇場の明かりが暗くなる。
オープニングの映像が流れ、本編が始まった。
前作に負けないくらい今作も面白い。考察する部分が沢山あって、俺は映画の世界にのめり込んでいた。
思わず前のめりになってしまいそうで、肘掛に手をかける。
すると、何か温かいものが指先に触れた気がした。
見なくても分かる。これ、勇斗くんの手だ。
さっきまで没頭していたはずだったのに、全く映画の内容が入ってこない。
指先が触れているだけなのに、指先から勇斗くんの体温が伝わってきて体中が熱い。
手をどかせば済む話なのに、手を動かすことが出来ない。
勇斗くんは、俺と手が当たってること気づいていないのかな。
気づいているけど、動かさないでいるのかな。
どちらでもいい。どちらでもいいけど、
映画が終わるまで、このままがいいな……。
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