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よかった🥹🥹
よかった〜
翌日の収録現場。
久しぶりにメンバー全員が揃ったにも関わらず、翔太とはほとんど会話をしなかった。
「おはよう」
楽屋に入っても、翔太は俺をちらりと見ただけで、すぐに視線をそらした。
(……やっぱり、怒ってるのか?)
何度もタイミングを見計らったが、収録が始まるとそんな余裕はなくなった。
そして、気づけば仕事が終わり、メンバーが次々と帰り支度を始める時間になっていた。
「お疲れ!」
「おつかれー!」
そんな声が飛び交う中、俺は意を決して翔太のもとへ向かった。
「翔太」
「……何」
低い声が返ってくる。
「最近、ちゃんと話せてないよね」
「別に、話すことなんかないでしょ」
翔太はスマホをいじりながら言った。
「……俺、なんかした?」
本題を切り出すと、翔太はピクリと指を止めた。
「別に」
「翔太」
「つーか、何? 今さら」
スマホを机に置いて、翔太が俺を見上げる。
「お前が忙しくて連絡してこなかったんじゃん」
「それは……」
「俺のことなんかどうでもいいんでしょ?」
投げやりな言葉に、心がぐっと締め付けられる。
「……そんなわけないから」
「じゃあ、なんで何も言わなかったの?」
「翔太こそ、何も言わなかっただろ」
互いの視線がぶつかる。
「俺が忙しくて、翔太が拗ねるのは分かる。でも、俺だって、翔太の態度が冷たく感じてた」
翔太が驚いたように目を見開く。
「……は?」
「最近、翔太、俺を避けてるよね?」
「避けてないし」
「じゃあ、なんで楽屋でも話さなかった?」
「……それは」
言葉に詰まる翔太を見て、小さく息をついた。
「俺たち、こうやってすれ違って、話もしなくなって……このまま終わるのかなって思った」
「……」
「でも、翔太は別れ話もしてこないし……だから、俺からどう切り出せばいいのか分かんなかった」
「バカじゃねぇの」
翔太は呆れたように言った。
「俺だって、お前から何も言わないから、どうすればいいのか分かんなかったんだけど」
「……じゃあ、お互い様ってことか」
「マジでそう」
一瞬の沈黙の後、翔太がため息混じりに笑った。
「……俺さ、涼太が俺に飽きたんじゃないかって思ってた」
「俺は、翔太が冷めたんだと思ってた」
どちらも、完全な誤解だった。
なのに、素直になれなくて、ずっとすれ違っていた。
「ほんと、めんどくせぇな、俺たち」
「まぁ……そういう関係だし」
その言葉に、翔太がクスッと笑う。
「……ちゃんと話せてよかった」
「俺も」
やっと、少しだけ心が軽くなった気がした。
そして次の瞬間、楽屋の扉が勢いよく開く。
「おぉ〜〜! やっと仲直りした??」
佐久間がニヤニヤしながら入ってきた。
「……佐久間、聞いてたのか」
「そりゃあ、こんな分かりやすい痴話喧嘩、聞かないわけないでしょ」
「うるせぇ」
「いやー、長かったね〜。で、どっちが謝ったの?」
「別に謝るとかじゃねぇし」
翔太がむすっとしながら言う。
「はいはい、そういうことにしときます」
佐久間がひょいっと手を振りながら、楽屋を出て行った。
「……ほんと、うるさいな」
「でも、あいつらがいたから、俺たちもこうやってちゃんと向き合えたのかもな」
「……まぁ、そうかもね」
そう言いながら、翔太が俺の隣に座る。
すれ違いはあったけど、こうしてまた向き合えたなら、それでいい。
「……次、またすれ違ったら、今度はすぐ話すから」
小さくそう呟くと、翔太が頷いた。
「うん。俺も」
すれ違いの夜は、ようやく明けた——。