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橘靖竜
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観測される側
夜。
野村花子の部屋。
全体にサッパリしている。
小さなテーブル。
ノート。
ペン。
そしてノートパソコン。
花子は画面を見ながら、ゆっくりと息を吐いた。
「……変」
小さくつぶやく。
彼女の画面には
マルトクの利用者ページが開いている。
ハヤトの予定。
家事タスク。
週のスケジュール。
いつも通りの画面。
その中に生じた、
うっすらとした違和感を見逃さなかった。
花子はノートに書く。
違和感①
タスク更新のタイミング
いつもは
夜の三時前後。
だが今日は
21:14
明らかに早い。
花子は指で画面をスクロールする。
履歴ログ。
そこにある更新履歴。
21:14
管理調整
花子は眉をひそめる。
「管理?」
この表記は珍しい。
普通は
自動最適化
と表示される。
花子はノートに書く。
違和感②
管理調整
彼女は椅子に深く座った。
しばらく考える。
頭の中で
最近の出来事を並べる。
・村田の予定が突然消えた
・顧客コミュニティの噂
・ハヤトの挙動の変化
そして
公園デート
花子はペンを止めた。
「……あ」
小さく声が出る。
花子は新しい行を書く。
仮説
村田関連
彼女はキーボードを打つ。
マルトク利用履歴
過去ログ。
そして
村田の名前。
表示された履歴。
少ない。
花子はそれを見て
逆に確信した。
「……削られてる」
通常の履歴量じゃない。
整理されすぎている。
花子はノートを閉じた。
代わりに
もう一つのタブを開く。
通信ログ。
普通の利用者は
ここを見ない。
だが花子は
元々システム系の仕事をしていた。
簡易ログなら読める。
数分後。
花子の目が止まる。
observer-tag
一行。
花子は首をかしげる。
「observer?」
もう一度見る。
その下に。
linked-staff
murata
花子の手が止まった。
静かな部屋。
時計の音だけ。
花子はゆっくり息を吐いた。
「……あー」
そして少し笑う。
ノートを開く。
新しいページ。
大きく書く。
“仮説更新
私は観測対象”
花子はさらに書く。
“理由
村田”
彼女は少し天井を見る。
「なるほどね」
声は落ち着いていた。
普通の利用者なら
ここで怖くなる。
だが花子は違う。
むしろ
興味が強くなっていた。
「観測ってことは」
ペンを回す。
「価値があるってことだよね」
花子はノートをめくる。
前のページ。
そこには
溺愛プラン構造
の分析が書いてある。
花子はそれを見ながら言う。
「マルトクは」
一拍。
「関係を管理する会社」
しかし村田は違う。
村田は
関係を作る。
花子はノートに書いた。
仮説
村田はシステム外
そしてもう一行。
だから監視
花子はペンを置いた。
そして笑って、
「面白い」
その時。
スマホが震えた。
メッセージ。
送信者
村田孝好
花子は少し驚いた。
メッセージを開く。
> 明日ヒマ?
花子は少し笑った。
返信を書く。
> どうしました?
すぐに返事が来る。
> コーヒーでも
> 奢ります
花子は画面を見ながら
小さくつぶやいた。
「……なるほど」
ノートをもう一度開き、
新しい行を書く。
追加仮説
村田本人は
監視を知らない
花子はペンを止める。
そして静かに笑った。
「それ
かなり危ないよ」
窓の外。
夜の東京。
街は静かに光っている。
その頃。
マルトク本社。
管理サーバー。
ログが一つ増える。
observer-target
hanako nomura
そしてそのログを
静かに見ている人物がいた。
佐伯。
彼は画面を見ながら言う。
「気づくかな」
数秒。
そして小さく笑った。
「気づくだろうな」
なぜなら
彼は理解していた。
花子は
普通の利用者ではないと。