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#普通
野々さくら
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ありあ
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それからしばらくして、住職を交えた新祠儀式が始まった。
祠の前には簡易的な祭壇が設けられ、白木の台に米、酒、そして清めの水が供えられている。
その周囲を信愛たちと村民が円を描く様に立ち、その中央に住職が立つ。
誰もが言葉を控えて目を閉じ、ただ草木が揺れる音、鳥のさえずりだけが響いていた
やがて住職が一歩前へ進み、厳かな声で口を開く。
「それではこれより、おじろくおばさ
新祠の儀式を執り行います」
住職は信愛へ穏やかな視線を向けた。
「よろしいですね?」
信愛は真っ直ぐ頷く。
「よろしくお願いします」
信愛の言葉と共に、住職が一歩前に出て祠の四隅に清めの塩を撒く。
そして香炉に線香を立てて読経を始める。
「この祠がおじろくおばさの弔い、そして
村の守護となり、平穏をもたらす事を願いて」
住職の低く響く読経が庭園に広がる。
「魂魄光輝土地安魂
陽光礼拝安穏祈願──
罪業懺悔修理固成──
安らかに眠れ──
鎮魂を願いて──
新祠慰霊」
最後に住職は静かに両手を合わせた。
「合掌!」
住職の掛け声で一同は手を合わせて合掌する。
しばしの黙祷を終えると住職は清めの水を祠の屋根注ぐ。
その水は屋根を伝い、それはまるでおじろくおばさの涙の様に滴り落ち、小さな水たまりを作った。
やがて地面には小さな水たまりができ、住職は静かに一礼した。
「これにて新祠の儀式、全て終了になります」
信愛は胸の奥に張り詰めていたものがほどけていくのを感じ、小さく呟いた。
「終わった・・・」
茜も感慨深げに息を吐く。
「やっとだね・・・」
さくらは新しい祠を見つめながら微笑んだ。
「これで終わりなんだ」
焔垂は腕を組み、満足そうに頷く。
「これで弔えたんだな」
朝陽もほっとした表情を浮かべる。
「無事に終了ですね」
その場にいた誰もが、ようやく全ての工程を終えられたことに安堵し、静かに胸を撫で下ろした。
住職は再び一同を見渡し、穏やかな声で告げる。
「そして最後に弔いとして
皆さんでわらべ歌三番を朗読しましょう
これでおじろくおばさも、我々に
許しを与えてくれるでしょう」
信愛は静かに頷いた。
「わかりました」
全員が再び手を合わせる。
静寂の中、一同がゆっくりと歌詞を口にする。
「オジロクオバサニ解放ヲ
贖罪込メテ祠デ拝メ
過去ト今ノ罪ヲ嘆キ
数珠ヲ手ニシテ悔恨謝罪
オジロクオバサヨ眠レ眠レ
オジロクオバサヨ昇レ昇レ」
わらべ歌が終わると、住職は静かに微笑んだ。
「これでおじろくおばさは弔えたんでしょう」
信愛は新しい祠を見つめ、安堵の笑みを浮かべる。
「よかった・・・」
感極まっていた空気を切り裂くように、茜が突然声を張り上げた。
「あ! 信愛!あ、あれ!」
「ん?どうかした?」
首を傾げる信愛に、茜は震える指で祠を指差した。
「あれだよ!あれ!祠に・・・」
「ん?祠?」
信愛はゆっくりと視線を祠へ向ける。
その瞬間、思わず息を呑んだ。
祠の前には、二人の幼い子供が静かに佇み、こちらをじっと見つめていた。
透けるような姿。
風に揺れることもなく、ただそこに存在している。
「あ・・あれは・・・」
信愛は小さく呟く。
「もしかして・・・おじろくおばさ?」
「うっそ・・・」
さくらの顔から血の気が引いた。
「まじかよ・・・」
焔垂も目を見開く。
勇は言葉を失い、美羽も呆然と立ち尽くしている。
「おじろく・・おばさ・・・」
誰もが目の前の光景を信じられず、ただ霊たちを見つめていた。
住職も険しい表情で口を開く。
「皆が目視出来ているとは・・これは一体・・・」
信愛は小さく唾を飲み込む。
その時だった。
子供の霊が一歩、また一歩と、ゆっくり信愛へ近づいてくる。
「先輩!危ないですよ!」
朝陽が慌てて叫ぶ。
「そうだよ!すぐ離れて!」
さくらも必死に声を掛ける。
しかし信愛は静かに首を振った。
「大丈夫だよ・・・」
恐怖はあった。
それでも、その子供たちからは不思議と敵意を感じなかった。
信愛は自ら歩みを進め、子供の霊の前で立ち止まる。
互いに見つめ合う沈黙。
やがて子供は、小さく口を開いた。
「ありがとう・・・」
「え?」
その瞬間だった。
眩い光が信愛の身体を包み込む。
世界が白く染まり、意識が遠のく。
信愛の中へ、おじろくおばさの魂に深く刻まれた記憶が、まるで濁流のように流れ込んできた。
コメント
1件
×××さん、第115話読了しました…! 新祠の儀式、すごく厳かで美しい描写だったのに、最後のあの展開は本当に鳥肌が立ちました。終わったと思った矢先に現れた子供の霊、そして「ありがとう」って…信愛に流れ込む記憶、ここからどうなるのか気になって仕方ないです😭 17話からの伏線が回収される瞬間、静かに震えました。次が待ちきれないです…