テラーノベル
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「…照くん、またそうやって子供扱いする」
レッスン場の隅。
座り込んでいたラウールが、少しふてくされたように唇を尖らせた。
その視線の先には、スポーツドリンクの蓋を開けて渡してくれた岩本照がいる。
「あ? 子供扱いなんてしてねーよ。気が利く彼氏だろ?」
「ううん。その顔は完全に『よく頑張ったな、ラウ』って思ってる保護者の顔だもん」
図星を突かれたのか、岩本が少しバツが悪そうに視線を逸らす。
確かに、出会った頃の小学生だったラウールの印象が強すぎて、どうしても「守る対象」として見てしまう癖が抜けないのだ。
「……別にいいじゃんか。お前は可愛い最年少なんだから」
「むぅ……。もう二十歳過ぎたのに」
ラウールは立ち上がると、岩本の前に立った。
今や身長はラウールの方が高い。
見下ろされる形になった岩本は、少しだけ圧を感じて一歩下がろうとした。
しかし、その動きは封じられた。
ラウールの長い腕が、岩本の腰をぐいっと引き寄せたからだ。
「……おい、ラウ?」
「逃げないでよ」
ラウールの瞳が、いつもの無邪気なそれとは違う、色気を帯びた光を放っている。
パリのランウェイを歩く時のような、鋭くて美しい「大人」の顔。
岩本は一瞬、心臓が大きく跳ねるのを感じた。
「俺、もう照くんに守られるだけじゃないよ」
「……わかってるよ」
「ほんとに? ……じゃあ、確かめて」
ラウールはそのまま身体を屈めると、岩本の首筋に顔を埋めた。
大型犬がじゃれているようにも見えるが、その体温と吐息は明らかに甘い。
「……照くん、いい匂いする」
「っ、くすぐってぇ……」
「照くんこそ、俺の前だと可愛い顔するよね。……ギャップ萌えってやつ?」
耳元で囁かれた低音ボイス。
岩本はカッと顔が熱くなるのを感じた。
筋力では負けないはずなのに、この長い手足と、底知れない包容力に絡め取られると、不思議と力が抜けてしまう。
「……お前なぁ……調子乗んなよ」
「ふふ、照くん顔真っ赤。……ねぇ、キスしていい?」
上から目線のおねだり。
拒否権なんてないことを分かっていて聞いている。
岩本は「……はぁ」と観念したように息を吐くと、ラウールの背中に腕を回し、その身体を少し強引に引き下げた。
「……生意気なんだよ、ガキのくせに」
強がりを言いながらも、岩本は自ら唇を重ねに行く。
触れ合った瞬間、ラウールが嬉しそうに目を細め、岩本を壊れ物のように優しく抱きしめ返した。
「…大好きだよ、照くん」
「…俺もだ」
いつの間にか、背中を追いかけてくるだけだった「息子」は、隣で肩を並べ、時には自分をドキドキさせる「恋人」になっていた。
その成長が嬉しくもあり、少し悔しくもある岩本だったが、この温もりには逆らえないのだった。
コメント
12件
ラウの逃げないでよのセリフがマジで良すぎる! 誰に言ってもみんな惚れるだろ! 続き待ってます!
らういわ好きなので読めて嬉しいです! 2人の関係性が尊いです!