テラーノベル
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フリーデから詳細を聞いた俺達。
「ふざけんなよあの市長、人の良さそうな顔して中身は怪物じゃねぇか!」
テーブルをバンと叩いて憤るヨハンナ。
俺は一息ついて、紅茶を一リットルほどグビグビ飲んだ後、フリーデに向き直る。
「しかし、そなたにも責任はあるな」
「はい、夫トニーに聖剣を盗み出され質屋に売却されてしまったこと、それは私の責任です」
「その通り、トニーは恐らくそなたの動きを見て保管庫の開け方を学び、鍵をこっそり盗んで開けた。そして聖剣を売られてしまったことに気づかなかった」
「はい、責任は必ずとらせていただきます」
「しかし、そのことと市長から脅迫を受け、体を要求されていることは話は別。市長は聖剣を質屋で発見した時点で国に申し出る義務が存在する。それを怠り、保管者を脅迫するなど言語道断。本来であれば、アイゼンヴェルグ家全体に責任をとってもらうところではあるが」
「カメラで動画も撮られちまってるんだろ?」
「……はい」
「ちなみに、それはどこまでの?」
「ら、裸体です……行為は許していませんので、ありません」
セーフ、セーーフ! 恐らくNTRイベント途中で間に合った。
「では、余が派手に動くと、その動画が拡散される恐れがある。秘密裏にドリコ市長を追い詰めるとしよう」
「追い詰めるってどうするんだ?」
「蛇の道は蛇って言うだろ」
「「?」」
ヨハンナ達は頭に?を浮かべる。
俺はメイド姿のフリーデたちを連れて、エスタにある貧民街へと向かう。
華やかな富裕層区や、カジノ区とは違い、盗賊ギルドや浮浪者が多い場所だ。衛生面も終わっていて、そこら辺で酷い臭いがする。
「こんなとこ行くのか?」
「うむ、ヨハンナ、フリーデ、しっかり余とママ上を守るのだ」
「わんわん」
ナハトが僕もいるぞと自己主張している。
ボロボロの服装をした貧民街の住人は、見なりの良い俺達を見て憎しみの視線をぶつける。
彼らにとって金持ちイコール敵であり、王子と知られたら八つ裂きにされてもおかしくないと思う。
後ろからは、武器を持った男が複数人ずっとついてくるし。
俺たちはボロボロの酒場へと入ると、客とマスター全員の視線が一斉にこちらに向く。
「この辺りで一番大きなギルドの者はいるか?」
「…………」
そう問いかけると、しばらく静まり返った後にテーブル席で飲んでした強面の男が声を上げる。
「俺だ、貴族のボンボンが一体なんのようだ?」
「死にたくなかったら有り金と女置いて逃げるんだな」
取り巻きの男たちが、ゲヘヘと笑みを浮かべながら近づいてくる。
「フリーデ、真ん中だけ残して後はのしてくれ。彼らは実力を示さないと、こっちの話を聞かない」
「はっ」
フリーデが男たちの前に出る。
「なんだ、スケベな格好した姉ちゃん。お前が俺達の相――」
男の一人は目に見えぬほどの掌打を顎に受けて、カクンと気絶して倒れ伏した。
「なっ!? ふざけんじゃねぇぞ!」
もう一人がナイフを取り出して振り回すも、フリーデはあっさりと見切り、いとも簡単にナイフをはたき落とす。困惑している男の腹に膝蹴りを入れてノックアウト。
中央でふんぞり返っていた男は、そこでようやくこちらの身分を理解する。
「お、お前ら帝国騎士か!? この強さ騎士以外ありえねぇ!」
「俺達のことなんてどうでもいい。わかったとしても喋るな」
俺はテーブル席に座ると、男を対面に座らせる。
男は先程とはうってかわって、怯えの表情が見える。
「あ、あんた俺達を消しに来たのか?」
「とんでもない。余はドリコという男を洗っている。何か奴に関する話はないか?」
「ドリコって市長のことですかい?」
「そう、カジノ経営をしている。なんか黒い話知ってるだろ」
「そりゃ勿論、あいつには俺達は煮え湯を飲まされてるんだ!」
「例えば?」
「土地の地上げで、俺達ギルドを使ってる。奴が立ち退かない住民に痛い目をみさせろって言うからやったのに、土地が手に入ったら俺達を違法ギルドとして、ギルド連盟から追放した。おまけにお前らも街から出ていけって言い出したんだ。俺達は本当はカジノのある繁華街に拠点を構えていたのに、今じゃこんな小便くさい貧民街に追いやられた」
「なるほど。それを告発しないのか?」
「そんなことしたら消されるのは俺達だ」
その後男から話を聞くと、出るわ出るわ。カジノのVIPルームで、法律を守らない違法レートのゲームをプレイさせていることや、市長選で対立候補を武闘派ギルドに襲わせていること。次の市長選では、貧民街を全て排除して美しい街を作ると公約を掲げていること。
「なるほど」
「奴をぶっ殺してぇと思ってるのは俺達だけじゃない。ここには奴に破産させられた奴がごまんといる。毎日のように自殺者が出てる、この世の地獄さ」
「では、利害が一致しているな。余の頼みを受けてはくれぬか? さすれば、貧民街排除の話はなくなる上、ドリコを市長から引きずり下ろせる」
「あんた、そこそこの身分と見た。あんたも俺達を利用して、後々消すつもりじゃないのか?」
「どのぐらいの人間に見える?」
「……上級貴族ってところじゃないな。帝国軍の偉いさんか……」
「もっと上だ」
「…………」
男はチラッと俺の持つ竜印の指輪に視線を向けると、慌てて席を立って突然床に頭をつける。
「し、失礼いたしました! あなたほどのお方とは思いもよらず!」
「余は悪人には悪で対抗する。そなた達に盗み出してもらいたいものがある」
「なんなりと!」
「余は奴に帝国の宝を盗まれて、非常に憤っておる」
俺は男にカジノ地下にあるゴールドロックから、聖剣を盗み出してほしいと伝える。
「ゴールドロック……」
「鍵の開け方や警備は追って伝える」
「その必要はありませんぜ。ゴールドロックは鍵かかってませんし」
「は?」
「盗賊の中では有名な話ですよ。あれだけ堅牢な金庫が、まさか鍵かかってないとは思わんだろうって」
「いや、鍵をかけない意味がないだろう」
「あれ、10人の魔術師で魔導ロックをかけるんですけど、そのうちの一人か二人が事故で死んで、鍵かけられなくなったそうです」
「なんじゃそら。でっかいハリボテかよ」
「その通りでさぁ。しかしながら警備の厳重さは間違いないんで、そこは手引していただかないと困りやす」
「わかった。聖剣は盗み次第こちらに返してくれ」
「了解しました。信用できる奴ら集めてとりかかりやす。旦那、この件が成功したら、どうか俺達をカジノ地区に戻してくれやせんか?」
「まともなギルドとしてやりなおすなら協力しよう」
「勿論でございます。旦那の黒いナイフにもなりやすとも」
「余は口が軽い男は好かぬぞ」
「ご安心下さい。これでも裏で10年以上やらせていただいてますので」
契約が成立し貧民街を後にすると、フリーデは心配そうに俺に聞く。
「大丈夫でしょうか、あのような裏稼業の人間を信用しても」
「大丈夫だよ。彼、俺の正体に気づいても王子って言わなかったし、口硬いよ」
「にしても、自作自演の盗みとは」
ヨハンナは苦笑う。
ドリコが保管している聖剣を、盗賊ギルドに盗ませ、いざ俺が返してと言ったときには現物が存在しない。
俺は保管してるんじゃなかったのか! とキレちらかし、ゴールドロックの鍵がかかっていない不備を指摘。
その時点で身柄を拘束し、奴の不正を暴き、フリーデの動画も回収する。
お前の化けの皮剥がしてやるから覚悟しろよエロジジイ。
ま-ん-て-ん
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コメント
1件
第79話、読み終えました!王子が貧民街の盗賊ギルドと手を組んでドリコ市長を罠にかける布陣、面白かったです。ゴールドロックが鍵かかってないってオチには笑いました。あれだけ堅牢そうに見せて実はハリボテって、現実のセキュリティあるあるですね。フリーデの一瞬で男2人を沈めたシーンも、地味にカッコよかった。自作自演で聖剣を盗ませて、市長の不正を暴くプラン——どう転ぶか、次が楽しみです。