テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「やっと出会えた……」
彼は、彼女の身体をフワリと抱き寄せ、柔らかな髪をそっと撫でている。
「俺が本気で向き合いたい…………恋をしたい女性……」
波を打つような髪に触れていた彼の手が、滑るように色白の頬を包んだ。
「君から見たら、俺は…………女にだらしがなくて、遊んでいて、軽薄で…………どうしようもない男に映っているかもしれない。でも……」
彼の胸に顔を埋めていた彼女は、辿々しく顔を見上げる。
「君が笑顔を失っていた分…………俺が君を……たくさん笑顔にさせるから……」
穏やかな声音に安心したのか、エキゾチックな彼女の瞳から、静かに雫が流れ落ち、痕跡を残しながら頬を伝った。
「君が愛情を注がれなかった分…………俺が……君を…………嫌というほど……愛するから……」
筋張った指先で、涼しげな目元に溜まっている涙を、そっと掬う。
濡れて揺らぐ瞳に視線を絡められ、彼を捉えて離そうとしない。
そんな彼女に愛おしさが震えた彼は、堪らず華奢な身体を掻き抱いた。
彼に対して誠実に向き合ってくれたのは、彼女だけ。
彼女は彼にとって、人生を賭けて守りたいと思える、唯一の女性だから。
こんなセリフを言ったら、キザな男と思われるだろう。
だが、そんな事は関係ない。
彼の、今の正直な気持ちなのだから。
「俺と…………恋を始めよう」
胸に秘めていた全ての想いを告白すると、彼女は、蕾が綻ぶような微笑みを、ゆっくりと開花させていった。
コメント
2件
早速飛んできました!連載楽しみにしています。頑張ってください! 他の作品も読みたいです。