テラーノベル
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「ルミナお姉ちゃん!!」
すぐさまルミナを抱き抱え、回復魔法を当て始めるアルテア。
「うふふ……アルテアの治療を受けられるなんて……嬉しいわ……」
「いいから喋らないで!!」
必死な顔のアルテアが、光が飛んできた方向に視線を移す。
「ルミナ様……!?」
「一体何が……」
ざわついている信者達。
「あなた達も早くこっちに来てください!!」
そう叫びながら、片方の手を信者達の方にかざし、信者の後方に防護結界を展開させるアルテア。
「そんなことまで……」
「だから喋らないで!!」
不幸中の幸いか……出血そのものは傷口が焼け焦げたおかげでそこまで多くはない。しかし……抉られた傷がそもそも大きすぎる。
抉られたルミナの脇腹に片方の手を当て、必死に回復を進めるアルテア。
アルテアの叫びに反応した信者達が混乱した様子でアルテア達の元へ走ってくる。
「一体何だったんだ!?」
「ルミナ様は……ルミナ様は大丈夫なの?!」
そんな集団の中……
「ちっ……」
明らかに不服そうな顔をした信者の舌打ちを聞き逃さなかったフィニス。自分の目の前を通り過ぎようとした瞬間、その信者の首根っこを掴んで地面に叩きつけた。
ドン!
「お前……何をした!!」
もう片方の手で剣を抜き、倒れた信者の頭のすぐ横に剣を突き立てる。
「フィニスさん!その人じゃないわ!魔法は信者達の後ろから飛んできていた……!」
地面に叩きつけられた信者が苦痛の表情を浮かべながらもニヤリと笑う。
「ですってよ?英雄様」
「ぐっ……!くそ!」
信者から目を離し、剣を引き抜くフィニス。信者はゆっくりと起き上がり、そのまま他の信者達の元へ歩いて行った。
「エラリスみたいに魔力の波長を合わせるのが上手な魔族がいるみたいね……こんなに近くにいるのに全く気が付かなかったわ……」
そう言いながら、上空を目掛けて中指を弾くエレノア。
『全神経を探知に向けないとこれは気付かないわよ!』
エレノアが指を弾くと同時に両手をかざすゼフィリア。次の瞬間、エレノアの指先からものすごい速さの空気の塊が弧を描くようにアルテアの結界を飛び越え、木々の間目掛けて飛んでいった、その時……
パァーン!
風の塊がどこかに触れる訳でもなく、空気中で突然四散し、砂煙を巻き上げていった。
『もう見つかっちゃった』
煙の中から聞こえる声。
その中から現れたのは……
ステラの神殿で見かけた……双剣の魔族と共にいた魔族のひとり……
『まぁ……命令は遂行できたし。目的は達成したのかな?』
腕をゆっくりと下ろす白髪ショートカットの魔族がそこに立っていた。
「あいつ……神殿の時の……!!」
フィニスが剣を構えるも、魔族はその場で大きくあくびをしていた。
『ふぁ〜……でもそういえば……』
目をゴシゴシと擦り終わると、鋭い視線をフィニス達の奥へ向ける。
『このままだとムカつくよね』
そう言い、足で地面を軽く叩く魔族。魔力が魔族の足元からフィニス達のいる方向へと伝っていく。
「アルテアちゃん!来るわよ!」
「アルテア!来るぞ!」
地を這う魔力を感じ取ったエレノアと、魔族の足元から不自然に舞い上がった土煙と地を伝う僅かな揺れに気づいたフィニスが大声で叫ぶ。
「アルテア……私のことは……いいから……みんなを守ってあげて……」
「っ!うるさい!黙ってて!」
涙目になりながらも必死に治療を続けるアルテア。しかし、フィニス達の声も聞こえている。結界の方に意識を集中すれば、治療がおろそかに……
このまま治療の方に専念すれば、結界の隙をねらって……最悪は結界を破壊して攻撃してくるかもしれない。
どうしたらいいのか分からなくなり、目に溜まった涙が今にも溢れそうになっている。
ルミナが守ってくれと言っている人達は、あたふたと困惑しているばかり。何もせずに周りで見ているだけである。大神官が瀕死になっているのにもかかわらず、何もしない信者達に若干の苛立ちを覚えながらも、それらの感情をできる限り押し殺して大声で叫んだ。
「ぼーっとしないで!結界を張れる人は結界を……それができない人は治療を手伝ってください!!」
その一声で落ち着きを取り戻した信者達。それぞれが声を出し合い、結界を張ったり、アルテアに指示を仰ぎながらルミナの治療にあたり始めた。
『ばかみたい』
信者達の力も加わり、先ほどアルテアが張ったものよりも強い結界が張られている。しかし、そんなこと気にも留めず、呆れたように笑う魔族。
地面を伝う魔族の魔法が、結界の手前で止まって消えて行った。
月城 蓮桜音
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羽海汐遠
16,054
みおん
2,955
お餅
23
「……消えた?」
エレノアが呟き、ゼフィリアも結界の手前の地面を凝視している。
ゴ……ゴゴ……
「違う!後ろ!!」
足元から伝わる微かな振動が、正面から後ろへと動いているのを感じたフィニスが後ろを向いて叫んだ。
その声で身構える信者達。そんな中、先ほど舌打ちをした信者がアルテアの背後に忍び寄っていた。
「アルテア!!」
フィニスがそう叫んだ次の瞬間……
ゴゴゴゴゴ……ドゴーン!!
信者の足元が一気に隆起し、そのまま信者を空高くまで打ち上げる。
「ガハッ……」
隆起する地面に全身を打ちつけて宙を舞う信者。
「?!」
アルテアは、すぐ後ろで起こった出来事にびっくりしながらも、治療をする手は止めず、視線だけを上空に向ける。
『私たちはアンタの言うことを聞いた訳じゃない。アニタ様の命令で従ったふりをしてたの。私たちがアンタを利用しただけだよ』
魔族が何も持っていない手で、弓を構えるそぶりをする。
『調子に乗りすぎ』
そのまま矢を射るように右手を離す魔族。
バリーン!!
アルテア達の結界が粉々に砕かれる。
ピュン!!
目に見えない何かがフィニス達の真横を通り過ぎ……アルテアの手前で方向を変えて上空へ。
そして……
『バイバイ』
魔族がそう言い放った瞬間……上空に打ち上げられた信者が粉々になって吹き飛んでいた。
コメント
1件
いや、今回のエピソードは本当に緊張感が凄かったですね……。先週の展開から一気に動きましたね。 まず、ルミナが狙われるという衝撃的なオープニング。アルテアの必死の治療と、それを受けながらも「アルテアの治療を受けられるなんて嬉しい」と笑うルミナの台詞がもう……この二人の関係性がじんわり来ます。 それから、魔族が「信者に化けて潜伏していた」という構造、本当に上手いなと思いました。神殿の時から伏線を張っていたんですね。最近読んだミステリーでも感じたんですが、読者に気づかせずに情報を配置する技術が秀逸です。 ただ……アルテアが治療と結界の両立で追い詰められていく場面、読んでいて心臓が痛くなりました。あの状況で「ぼーっとしないで!」と叫んで信者たちを動かしたのが本当に彼女らしい。 最後の「バイバイ」で内通者ごと始末する魔族の冷徹さも怖かったです。改めて思いましたが、この魔族の狙いはルミナ個人ではなく、教会の混乱そのものなんじゃないかな。次回のタイトルが気になりますね。月白さんの構成力、今回も存分に味わわせていただきました。