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12 - 第11話:時刻表のメモ

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2025年08月18日

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第11話:時刻表のメモ




朝の笹波駅は、通勤通学の人波がいったん途切れ、静けさを取り戻していた。

ホームの柱にもたれて立つのは、旅人風の女性。カーキ色のマウンテンパーカーに深緑のリュック、足元は使い込まれたトレッキングシューズ。首にはカメラのストラップ、肩までの明るい栗色の髪は風で少し乱れている。

名前は村瀬七海(むらせ ななみ)、27歳。地図アプリより紙の地図が好きな、一人旅の愛好家だ。


ベンチに腰を下ろすと、座面に一枚の紙が貼りつくように置かれているのに気づく。

古びた手書きの時刻表のコピー。その隅に、青いボールペンで小さく書き込みがあった。

《11:42 乗ったら戻れない》


七海は腕時計を見た。現在11:35。あと7分。

「戻れないって、どこに?」とつぶやくが、周囲に答える人はいない。


好奇心が胸を押す。彼女はカメラをリュックにしまい、ベンチから立ち上がった。

やがてホームに響く接近音。車体が滑り込み、ドアが開く。

車内には誰もいない。空気はほんのり甘い匂いがして、外より暖かかった。


一歩踏み出しかけて、七海は足を止めた。

——「戻れない」という言葉が、旅行者の胸を高鳴らせることもあれば、凍らせることもある。


彼女は深呼吸し、ドアが閉まる瞬間にホームへ下がった。

電車は無人のまま、音もなく発車していく。


ベンチに戻ると、紙はもう消えていた。

七海は笑いながらカメラを取り出し、ホームの端から水色の空を一枚撮った。

「戻れなくてもいい景色は、今ここにある」



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