テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
アシュレイの屋敷で暮らし始めてから二年が経った。|未《いま》だ魔法を使うことはない。アシュレイに魔法を強要されることもない。平穏な毎日が続いている。ただ魔法を使わないと身体の内に魔力が溜まる。溜まると不調を起こしてしまう。だから時々、夜に屋敷を抜け出して、力を放出していた。 ある夜、いつものように身体の内に溜まった魔力を放出しようと、こっそりと屋敷を抜け出した。屋敷裏の湖の|畔《ほとり》に立ち、湖面に向かって黄金色の閃光を飛ばした。
「何をしている」
いきなり背後から聞こえた声に、心臓が跳ね勢いよく振り返る。
夜着の上から上着を羽織った姿のアシュレイが立っていた。
見られた。見られてしまった。言い訳などできようもない。魔法を使う者だとバレた。
デックは唇を噛み拳を握りしめた。そして意を決して、月あかりの下でも美しい黄色の瞳を見た。
「ずっと…黙っててごめん。俺は、魔法を使う一族の出身なんだ…。今のは、体内に溜まった魔力を放出してた…」
そう小さく言って、アシュレイと見つめ合う。不思議とアシュレイの目に驚きの色が見えない。
デックがアシュレイの言葉を待つ。
アシュレイは、ゆっくりとデックに近づき、優しく頭を撫でた。
「ずっと黙っているのは辛かっただろう。よく話してくれた。ありがとう」
「アシュレイ…驚かないのか?」
「驚いたよ。すごい力だ。だけど、デックはそうだと思っていたからね。俺の予感が当たっていた。嬉しいよ」
「どういうこと?」
デックは小さく首を傾ける。
アシュレイは微笑んだ。そして|湖畔《こはん》にある石で作られた椅子にデックを座らせ、自身も隣に座った。
アシュレイが、湖面に映る月を眺めながら話し出す。
初めて会った時からデックが魔法を使う者だとわかったていた。デックの金髪と赤目を見て確信していた。それはなぜか?
子供の頃、一度だけ父王に同行して隣国に行ったことがある。
その道中、初めての旅が嬉しくて、皆が休憩中に歩き回り、迷子になった。
知らない国で一人になってしまい、どうしようと半泣きで、あちらこちらを歩き回っていた時に、茂みの向こう側に自分よりも更に幼い子供を見つけた。思わず茂みに隠れて様子を伺うと、その子供が空中に向かって手を動かしていることに気づいた。何をしているのか聞こうと立ち上がりかけた時、一帯に落ちていた小枝が空中の一箇所に集まり、|蔦《つた》で巻かれた。それは子供の腕の中にゆっくりと落ちて、子供は枝の束を抱えたまま歩き去った。
アシュレイはとても驚いて、その場で固まってしまった。
そこに家来が来て、「心配しましたぞ」と無事に皆の元へ連れて帰ってくれた。