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「あの時の子供の容姿は、はっきりと覚えている。金髪に赤目だった。デック、おまえだな?」
そう言われてデックは頷いた。
確かにデックだ。そうやって魔法を使い、薪に使う枝を集めていた。
同じ金髪赤目のリオは、手で拾って集めていたから、違う。
魔法のことは、誰にも知られてはならないのに、見られていたのか。商人にも見られて捕まったのだ。|迂闊《うかつ》だった。自身の不用心さに、今更ながら猛省する。
デックは、アシュレイの腕を掴んで懇願した。
「確かに俺は魔法を使える。だけど魔法のことは、誰にも話さないでほしい!」
「わかっている」
アシュレイは、デックの手に手を重ねて頷く。
「絶対に話さないと約束する。だからそんな不安な顔をしないでくれ」
「アシュレイ…」
デックは頷き、アシュレイの腕から手を離すと、|膝《ひざ》を抱えて俯いた。
アシュレイがデックの背中に手を添え、話し続ける。
「もしデックのことが父王の耳に入れば、おまえを取られるだろう。そうなれば、父王はおまえを良いように扱う。ひどい扱いをする。そんなことを俺は望まない」
「うん…。でも俺のこと気づいていて、どうして二年も黙っていたんだよ?」
「おまえに魔法のことを聞いても、素直に答えないだろう?商人にひどい仕打ちを受けても喋らなかったのだ。とても忍耐強い。デックは秘密を守れる強い子だ」
「そんなこと…ないけど」
アシュレイに褒められると嬉しい。でも照れ隠しで否定してしまう。
アシュレイは更に話を続ける。
「魔法のことは、話したくも使いたくもないのであれば、それでいいと思った。俺はただ、デックを気に入ったから、商人に金貨を渡したのだ」
デックがアシュレイの顔を見上げるけど、月が雲に隠れてしまい、どんな表情をしているのかわからなかった。
この夜を境に、デックは更にアシュレイを信頼するようになった。
デックは魔法のことがバレてからも、アシュレイの元で暮らし続けた。
この国の王子の傍にいれぱ、怪しい人達に捕まることはなく安全だと思ったからだ。それ以上に、アシュレイの傍にいたい気持ちが強かったのだけど。
しかし少しづつ、状況が変わっていく。
デックは、魔法を使って、アシュレイを助けることが増えた。誰もが解決できない難題を、アシュレイが次々に解決していく。デックの協力によって。そして徐々に、アシュレイの王子としての立場を押し上げていった。