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夕暮れ時。
空から舞う紅く色づいた葉。
肌に触れる冷たく、けれどもなま温かい風。
何故か身体の底から寒さを感じる。
そんな山の中を進むとどこまでも続いているような長い階段。
登ると美しくも醜い鳥居が現れる。
その前に置かれた2つの石像…
狛犬(こまいぬ)とたぬき
理由は分からない、けれども。
こちらの様子を伺っているような。或いは、まるでこの先の鳥居の中にいる何かを守っているかのような。そんな気がした。
………。そして…、
内へ入れば。
本殿があり、
その後ろに、大きな大きな椛の大木があった。
大木は渇きを潤すように、大空からじっとあなたを見つめていた。
そして…
―――――――――――――――――――――
「薫、本当にお金は大丈夫か?」
玄関にて。僕が外に出るため、靴を履いていると父が話かけてきた。父の声は、どこか心配そうだ。
「大丈夫だよ」
今日は一ヶ月前から計画していた一大イベントの日。
秘境巡りだ。
ここ最近は勉強づけだったからこそ、僕は完璧に準備を整えた。
後悔しないように。
「行ってらっしゃい」
という父の声に見送られ、僕は意気揚々と家を飛び出す。
電車を乗り継ぎ、目的地である県の駅に降り立つ。さらにバスに揺られ、最後はタクシーに乗り込んだ。運転手の方からは道中色んな事を教わった。地元の名物。目的地である「秘境の神社」について。そして古い伝承についても…。
車窓に広がる美しい風景を聞いた伝承ともに眺めながら。
「至高の時間だなー…。」
………
……
…
「ご利用ありがとうございました」
赤いラインの入ったタクシーが、霧の向こうへ走り去っていく。
そこから歩いて40分。
「着いた。
ここを登った先に…。」
目的地は在る…!
その時の時刻は18時30分。
―――――――――――――――――――――
伝承
ある山に
「巳魈(みし)」という恐ろしい怪異がおった。
巳魈はかつて、その地を治めておった武家・五月雨家の当主を手にかけたという。その後も巳魈は、夜な夜な山中で獣のような奇声をあげては、里を荒らし回った。
村の人々は恐れ慄いた。
しかし、ある日。
一人の旅の陰陽師が現れ、巳魈を封じこめた。一本の巨大な椛(もみじ)の木へと。
陰陽師は、二度と巳魈が暴れぬよう、その木の傍らに小さな社を建て、「式神」とされる狛犬を据えて立ち去った。
また、不可解なことに五月雨家の家臣たちはその後、その社に「商売繁盛」を願って一体のたぬきの像を奉納した。「他を抜く」という縁起を担いだものだと言い伝えられているが、なぜ荒ぶる怪異が封じられた場所にたぬきを置いたのか、その真意を知る者は今や一人もおらぬ。
ひな
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田中静人
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コメント
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読んでいただきありがとうございます!続きは5月5日までに、一気に2話公開する予定です。