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静かな空間、白いベッド、頭に巻いた包帯……
それでもこの空間は少し落ち着く。ん?この空間はなんだろう……?
「ッハ!」
気がつくとそこはなんの代わり映えもない病室の一角だった。
(あれ?私はいったい……)
何かを思い出そうとしているのだが、それが何なのか、なぜここにいるのかもよくわからない。
「あ、お目覚めですか?少しお待ちくださいね。」
そう言うと看護師さんはどこかに行ってしまった。少しあたりを見回すと他にも何人か患者がいた。その中の一人はどこかで見たことがあったような……
ガラガラガラ
そんなことを考えていると白衣を着たtheお医者さんという感じの人が来た。
「はい、えー、とりあえず今会話はできますか?」
「はい」
「じゃあ自分のお名前わかります?」
「はい、わかります、えーと……あれ……?」
「思い出せないですか?」
(思い出せない……分かるはずなのに……)
「あ、えっと……はい……」
「では、こちら写真にある果物の名前は?」
「りんごです。」
「じゃあこれは?」
「バナナです。」
「じゃあこちらのご友人のお名前は?」
「え……っと……」
(ダメだ。やっぱり身の回りのことが思い出せない)
「こちらの方は分かりますか?」
「……?えっと……見覚えがある気がするんですけど……すいません……分からないです。」
(その人は確かに見覚えがあり大切な人のように感じた)
「そうですか……あなたはおそらく、頭を打っただけでなくひどいショックで自分に関することや自分の身の回りの人を忘れてしまっているのでしょう。事故が起こる直前で何か覚えていることはありませんか?」
「うーん……よく覚えてないんですが、すごく辛い目にあったような気がするんです。」
「というと?」
「何かこう、逃げ出したくなるような、そんな気分になったんだと思います。」
「それって……今回のことは事故じゃないってことですか?」
「事故?……言われてみればそんなような……すいません……よくわからないです……」
「なるほど……まぁ幸い、命に別状は無いので、不幸中の幸いといったところだと思いますよ。何か思い出せたらまた言ってください。では!!」
「ありがとうございました。」
そう言うと医者は病室から出ていった。
それにしてもこんな大事な記憶だけがなくなってしまったのはなぜだろう?いったい何があったんだ?全く分からない。でも一つ言えることがある。
それは……私にはまだ生きて進めるチャンスがあるということだ。何があったかは知らないが、幸せを掴むチャンスはまだあると思っていいんだとそのとき感じたのだった。