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◆4話 スマートリングとAirWay
【スマートリング:標準アクセサリとしての日常化】
MINAMOが主要通信端末として認可されてから、
街の風景には、もうひとつの“見えない変化”が生まれていた。
駅の改札前。
決済台に並ぶ人たちの手元を見ると、
ほとんどの指にスマートリングが光っている。
現在の普及率は、
社会全体でおよそ8割。
学生も、社会人も、
そこに特別な意識はない。
「財布を持たない」
「スマホを取り出さない」
それと同じ感覚で、
指に何かがあるのが普通になっていた。
【形状・構造】
・C型スマートリング
・O型ではなく開閉できる構造
・専用工具で締めてサイズ調整が可能
・指のサイズ測定が不要
・購入時の心理的ハードルが非常に低い
【サイズ区分(目安)】
・Sサイズ:子供用
・Mサイズ:レディース
・Lサイズ:メンズ
※C型のため、多少の誤差は調整で吸収可能
※店頭・通販どちらでも扱いやすい設計
【主な機能】
・財布機能(決済)
・身分証
・本人認証
・メンタルケア
・心拍、緊張度などの簡易解析
・MINAMOと連携し、状態を静かに通知
・防水(シャワー使用可)
・日常生活で外す必要がほぼない
スマートリングは、
決済だけの道具ではない。
本人認証、
体調の簡易チェック、
MINAMOとの操作連携。
気づけば、
“ないと困る”を通り越して、
“ある前提”の存在になっていた。
【価格帯と流通の現実】
・1500円〜
必要最低限の機能
簡素で安価なデザイン
・3000円〜
高級感のあるデザイン
機能は十分、実用の主流帯
・5000円〜
デザイン性重視
ファッション用途として選ばれる
当初は、
携帯ショップで月額制の高価なモデル
(約30000円クラス)を勧められることも多かった。
だが価格を理由に、
多くの人はAmazonで流通している
2500〜5000円帯の安価なモデルを選ぶようになっていった。
その結果、
「身につけるなら安いもので十分」
という空気が自然に広がり、
この選択の積み重ねが、
スマートリングの普及率を
静かに8割まで押し上げていった。
高級品ではない。
しかし、必需品に近い。
それがスマートリングの立ち位置だった。
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【AirWay:聞こえない会話を支える存在】
一方で、
人々の耳元に目を向けると、
UMI製の骨伝導イヤホン――AirWay。
こちらの普及率は、
およそ98.2%。
MINAMOを購入すると標準で付属するため、
ほとんどの人が自然に身につけていた。
AirWayは、
MINAMOと一体化する形で使われ、
耳掛けとしても機能していた。
テレビ電話の音声、
ナビの案内、
通知、
音楽。
周囲の音を遮らず、
音漏れもしない。
音質は特別に良いわけではないが、
日常には十分。
何より、
「つけていることを意識しなくていい」。
電車内で、
駅のホームで、
人とすれ違いながら。
AirWay越しに、
小さく相づちを打つ人たちがいる。
声は聞こえない。
けれど、会話は続いている。
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【三点セットとしての社会定着】
スマートリングが
“触れる社会”を作り、
AirWayが
“聞こえない会話”を支え、
MINAMOは、
その中心で、ただ静かに機能していた。
りくはホームを見渡しながら、
ふと口に出す。
「……もうさ。
どれか一つ欠けると、不便だよな。」
ミナ坊が、
淡く文字を浮かべる。
『現在の生活環境は
MINAMO・スマートリング・AirWayの
三点を前提として設計されています』
誰かが決めたわけじゃない。
ただ、便利な方へ、
自然な方へ、
人々が流れていっただけだ。
気づいたときには、
それが“当たり前”になっていた。
それこそが、
MINAMO社会のリアルな普及だった。
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