テラーノベル
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ルカ🐬💤
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仕事終わりがまちまちな職業にとって、深夜まで開いている飲み屋は非常に有り難い。
「おっ、案外早かったな。今日もお疲れさーん。取り敢えず生?」
「おっち…あ~、マジくったくた。楽しいけど疲れんね。ん、駆け付け一杯はやっぱ生っしょ」
「まーなー、30過ぎると色々来るわ。オッケー、後はお前に任せた」
「言うなよ、それぇ。現実が体中にずーんって来たじゃん。きちー。…ええ~と、鉄板のチーズとぉ」
胡座をかいた深澤の対面に腰を落とす佐久間は、疲労色を帯びても笑顔が咲いている。それは深澤も同じだ。気の置けない仲間との束の間が、何よりもの癒しなのだから。
届いたグラスをどちらからともなく掲げ、店内を考慮した無言の乾杯。子気味良い響きに続き豪快な嚥下音が流れる。白髭の着いた顔を見合わせ笑った。
暫くは料理を摘みながら近況報告。共有アプリを介して知っている事でも、直接耳で聞く方がいい。他愛のない話と酒が進む中、追加をしようと佐久間がメニューと睨めっこするタイミングで深澤が切り出した。
「でさー、今日のアレ何だよ?めめあんま虐めんなって。見ててヒヤヒヤしたわ」
「あー…アレね。だって分かってても羨ましいんだもん、ついつい…さ」
「いや分かるけど、威嚇しなくてもだろ。可哀想に、あのめめがちょっと動揺してたじゃん。もう一人は気付いてもいなかったけどねー」
「…はい、大人気なかったです。すみませんでした。~…ねぇ、何であんなに鈍いの?ちょ~頭いいのに、何で?」
「仕事に支障出るようなら照に言うからな。…ん?さぁ。でもそこが阿部ちゃんのいい所じゃないの」
「それは許してっ!ほんとに反省してるから!は~…何でって聞いてんのに、明後日の方から返すなよ。でも、そう…そこも可愛いんだよねぇ。見詰められるとチューしたくなっちゃう」
「本人が分からんのに俺が分かる訳ねーだ……おいおい、反省してない言葉が出たぞ。止ーめーろって」
「いって!────…何だよ、もーう。お前も阿部ちゃんもままならないなぁ」
結んだおしぼりの空袋を深澤が投げる。佐久間の額に当たったそれが跳ね、新しいグラス内へ落ちた。爪先で拾い投げ返すも深澤は華麗に躱す。面白くない佐久間はテーブルに片頬を預け、くだを巻く。腕を組んで身を乗り出し、笑う深澤。
「なに、本気で阿部ちゃんと付き合いたいの?違うんでしょ。だったらそっとしといてあげなって。なべみたいにさ」
「つっ…~き合いたいのは本音だよ、マジで。けど、蓮が好きなんじゃどーしようもないじゃん。阿部ちゃん困らせたくないし。…あーね、翔太。やっぱ気付いてんだ」
「うーわ、顔真っ赤!ガチ中のガチ来たっ!大分拗らせてんねー、佐久間。うん、だってめめの阿部ちゃん関連の独り言、近くで一番聞いてんのなべだもん」
「く、…言うなって二回目ぇ。ぷっ…ひゃっはっはー!翔太ご愁傷さまーっ!!」
腹を抱えながら高らかに言い放つ佐久間へ、深澤はしーのポーズを取る。咳払いして双方居住まいを正す、間が空く。頭をかきかき深澤が息を吐いた。
「…つーかさ。改めて思うけど、みんな仲間思いだよな。いい意味で気遣い合ってるって言うか。本気だったら本気で奪いに行くじゃん、ふつー。お前絶対しないって分かるの、多分俺だけじゃない」
「にゃははー、寝盗られ展開好きじゃないからねん。推しには笑ってて貰わないと!ん…大切な仲間だから、みんな幸せでいて欲しい。なーんて思っちゃうの、自己犠牲が過ぎたりする?」
「推し?阿部ちゃんそのカテゴリーなの?…あーあ、重症だねー。みんなの幸せの為なら我慢するって?俺にとっては佐久間も大事な仲間なんだけど」
「そっ!大好きな阿部ちゃんは尊い推し!あっ…はは、リアコ深澤久々見たわ。貴重ー。ん~と、あのね。俺は阿部ちゃんも蓮も可愛いんだよ。そんだけ」
「…頼むから阿部ちゃんに心労掛けんなよ。貴重なのはお前の照れ顔もだわ。お言葉そっくりお返ししまーす。……あっそ。なべも佐久間もちょー仲間大好きだね」
「お前もな」
「お前らがだよ」
ふと深澤がスマホに目をやる、零時近い。う~んと伸びをし、極々自然に伝票をさらう。気付いた佐久間が頭を下げる。
「ゴチでやんす、深澤大明神!あ~、飲んで食って喋ったぁ!満足、満足っ!」
「次、佐久間だからな。あ…阿部ちゃんと言えばさ、今頃何してんだろうね。勝手に話の肴になってるなんて思ってないってー」
「ラジャーっ!んん~…確か蓮の家行くって言ってたような?いい時間だし寝てるか……ヤってたりして」
「……………」
「……………」
「「想像してんじゃねーよ!!」」
完
コメント
2件
掛け合い最高面白いです😂💜🩷