テラーノベル
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翌日午後三時。
祖母に頼まれた買い物を終え、俺は小さな商店街を歩いていた。
そのとき――
「あ」
後ろから声がした。
振り返ると、そこには、昨日図書館で別れた少女が立っていた。
白いワンピースに、昨日と同じ綺麗な黒髪。
「……依鈴?」
「うん。名前、覚えてたんだ」
「そりゃ覚えてるよ」
そう答えると、依鈴は少しだけ笑った。
「でも私は、君の名前知らない」
「あ……」
「昨日、聞くの忘れたから」
「俺、漣」
「漣くんね」
依鈴はそれだけ言うと、町の先を眺めた。
「この辺、詳しい?」
「まあ、それなりに」
「じゃあ、案内して」
「俺でいいの?」
「いいよ」
依鈴が小さく笑う。
その笑顔を見て、俺は少しだけ目を逸らした。
やっぱり、可愛い。
昨日初めて見たときから気になっていた。
でも、話してみると想像していたよりずっと淡々としていて、そのギャップが妙に心地よかった。
「どこ行きたい?」
「どこでもいいよ」
「じゃあ、俺の好きな場所でいい?」
「うん」
そこから二人は町を歩いた。
昔ながらの駄菓子屋。
蝉の声が響く川辺。
町外れに広がるひまわり畑。
そして、最後に俺が一番好きな小さな神社へ向かった。
「ここ、綺麗」
夕焼けに染まる町を見下ろしながら、依鈴が呟く。
「俺、この景色好きなんだ」
「じゃあ、今日から私も好き」
「……それ、ずるいな」
「何が?」
「好きな場所、同じになったみたいで嬉しい」
依鈴は少しだけ目を丸くした。
それから、ふっと笑った。
「じゃあ、よかったね」
その言葉だけで、俺は胸がいっぱいになった。
もっと彼女と話したい。
もっと彼女のことを知りたい。
そんな気持ちが、少しずつ大きくなっていく。
「ねえ、漣くん」
「ん?」
「明日、暇?」
「暇だけど」
「じゃあ、夏祭り行こう」
「……二人で?」
「嫌?」
「いや。むしろ行きたい」
「じゃあ決まり」
依鈴は何でもないことのように言った。
けれど俺にとっては、特別な約束だった。
「楽しみだな」
「私も」
夕暮れの風が吹く。
依鈴の黒い髪が、さらりと揺れた。
俺はその横顔を見つめながら思った。
――明日も、この子と一緒にいられる。
それだけで、明日が待ち遠しかった。
#溺愛
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赤虎 鉄馬
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コメント
1件
第3話読み終わった!依鈴がまた図書館の延長みたいに自然に現れて、「名前、覚えてたんだ」ってクスッとくる会話、いいわ。漣が案内する駄菓子屋とか川辺とかひまわり畑の描写が夏の匂いを連れてきて、最後の神社の夕焼けシーンで「今日から私も好き」って言われたときの漣の心境、めっちゃわかるわ。ああいうさりげない台詞が一番刺さるんだよな。夏祭りの約束まで自然に決まって、青春の甘酸っぱさが詰まってた。続き楽しみにしてる🔥