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夜。
部屋の灯りは、
少しだけ暗い。
スマホを、
机に置く。
画面を見る。
約束の時間。
まだ、
鳴らない。
通知音を、
一度だけ確認する。
音量は、
いつもより小さい。
手に、
汗。
画面が、
光る。
涼真
今、話せる?
短い。
既読は、
すぐついた。
紗良
うん
送信。
すぐ、
着信。
画面いっぱいに、
名前。
一度、
深呼吸。
出る。
「……もしもし」
自分の声が、
少し高い。
間。
「こんばんは」
低い。
近い。
耳に、
直接。
文字と、
違う。
笑っていないのに、
やさしい。
「急にごめんね」
“ごめん”。
でも、
説明はない。
それでも、
声は自然だった。
「今日、疲れてた?」
質問は、
軽い。
答えやすい。
「……うん、少し」
正直に、
なった。
間。
息。
「だよね」
それだけ。
慰めじゃない。
決めつけでもない。
でも、
安心する。
怖い。
「……昨日のことさ」
一瞬、
体が固まる。
「会ってみたい、って」
言われた。
声で。
逃げ場が、
なくなる。
「正直、嬉しかった」
短い。
迷いが、
ない。
「急に連絡しなかったのは、
期待させたくなかったから」
理由。
言葉は、
整っている。
納得、
できそうになる。
「紗良が決めていいよ」
決めていい。
でも、
もう近い。
「会うかどうか」
その言葉が、
耳に残る。
「声、聞いたら
ちゃんと話したくなった」
会う、
じゃない。
でも、
戻れない。
「……うん」
返事は、
短い。
「じゃあ、また連絡するね」
通話が、
切れる。
音。
静寂。
スマホを、
置く。
心臓が、
早い。
文字より、
近い。
会うより、
怖い。
それなのに。
声を聞いたら、
もう他人じゃなかった。
——静止。