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「そっち持って〜!」
「はいよっ」
体育祭と文化祭に向けて準備を進めている
「よーい… ドンッ」
「はぁっ、…はーっ」
「心琴すげぇよ!24秒ぴったし!本当にすげぇよ!」
「無駄にバイトで鍛えられてねぇからな…」
「お、おう」
その時心琴の顔がとても恐ろしかったことを覚えている
そう、心琴はやると決めたら100%本気でやる
そして意外と
「ははっ、今で24秒だったら陸上部の顔蹴散らせて泣きっ面拝めれるぜ」
性格が悪い
「でも本当にそうだよなぁ、陸上部でも運動部でもない、まさかの帰宅部所属のお前がこんなに走れるなんて思わないだろうな…」
「24秒ってそんなにすげーの?」
「いや分かってなかったんかい!?
あのなぁ、だいたい平均は25秒ぐらいな」
「じゃあ少し早いだけじゃん」
「お前なぁ……」
そして少しマヌケ
「津野のタイムは?」
「………25秒ぐらい」
「俺の方が速いじゃねーか!」
「これでもバスケ部の中で早い方だわ!
お前がおかしいんだよっ」
心琴は所々おかしい
そんなの昔からわかっていたけどさっ!
「………」
心琴は急に黙る 黙ると言うか沈黙…?
静かな心琴は怖いし何を考えているのかわからない、だけど顔が無駄に良いからなのかとても綺麗に見える
「おい」
「あっごめん」
「考え事?」
「いや、あれ」
指さす方向に鳥の巣があった
けどきっと鳥はいない
だって季節じゃないんだから
「鳥の巣がどうした?」
「いや、何でもない」
時々みことは何を考えているのか分からない
その魅力が心琴をより輝かせているのかも
「お前の所誰か来るの?」
あっ
直前になって口を塞いだ
「そんな顔しないでよ
俺のところは誰も来ないよ」
淡々と表情を変えないで言う心琴が一瞬ロボットのように見えた
そして、 きっと言葉ではなく俺のしぐさが心琴を苦してめいる
「津野は家族来るの?」
「母ちゃんと…姉貴達は分からないな..」
「来るといいね」
心琴はケラっとしたように笑う
「えぇ……」
突然クラスの女子からお願いされた
「心琴くんが私の理想のキャラなの!」
2年1組の矢部《やべ》さん
1組は演劇をやるらしい
激の中に登場するキャラが僕と雰囲気が似てるらしい
「本当にお願いしますッ!」
必死に頭を下げる矢部さんを見て
「(あぁ、この人は凄いな)」
と少し感心した
「まぁ、難しくないのならいいけどどんな役なの?」
「えっとね」
オリジナルの演劇で題名は「愛と十」
主人公のジンは盗賊でよく人のものを盗んで生活をしていた。そしてジンはお城を狙い金銭を盗み逃亡しようとしたがお嬢様のミレイと出会い2人は恋に落ちた
そのうち2人は秘密の場所で合うようになり親密な関係になった。
だがミレイの父親はそれを許さずジンを捕まえ斬首した。
最後のジンの言葉が「愛してる」
それはミレイに向けての言葉だった
ミレイは絶望に打ちひしがれ最後はお城を燃やし海に飛び込み2人は幸せになる
「よく見るラブロマンスだと思ったけど結構切ない話だね」
「俺”、まぢ泣いたわ」
「そしてね!そのジンを斬首する役をやって欲しいんだ」
「なんでまたそんな役を…」
「人手不足もあるんだけど、本当はミレイのことが好きな人でね最後はその役が泣いて終わるんだ!」
「いや、俺泣けないよ」
「大丈夫大丈夫!悲しそうな顔すればいいから!」
「引き受けてしまった」
「お前お人好しすぎなんだよ… 心琴は今日バイトあるの?」
「いや、店長が今旅行中で定休日という事で土曜から金曜日まで1週間休み」
「心琴さんはやる事あるんですか?」
「寝る」
「即答かよっ!」
「あっ、でも明日絃葉が家でお友達とお泊まり会するとか言ってたな」
「何それ可愛いな」
「何かあったらいけないからその日はずっと家だな」
「そうなんですね、明日以外は?」
「……暇だな」
「………」
高井のやつ無言だけど今は強者のオーラが滲み出てるぞ、
「じゃあ遊びましょうよっ!ね?津野先輩」
「いやなんで俺!?」
「(津野先輩?僕が心琴さんと一対一で理性保ちながら話せれる余裕なんてあると思います?)」
「(………承諾した)」
「心琴さんダメですか…?」
「いや、そんな子猫オーラ出さなくてもいいよ…遊ぶから」
「高井って結構策士だよな」
「なんですか?」
「いやなんも」
……怖い
「ただいま」
「心琴」
「……母さん今日は早いね」
「あと数分したら来客が来るの、だから絃葉と奏汰を外に出してくれない? 」
は?
「家で静かにしてるとかじゃダメなの?」
「ダメなの真剣なお話だから 」
そう言って千円を俺に握らせた母親の姿は今でも目に焼き付いている
「いってらっしゃい」
「お兄ちゃんどこ行くのー?」
「どこか行きたいところある?」
「俺おもちゃ屋さん行きたい!」
「私服欲しい!」
「分かったいいよ!行く前に少し寄り道していいかな?」
千円で何をしろって言うんだよ、
画面に出た自分が今持っている口座残高に驚いた
「自分こんな持ってたんだ」
目の前のことで精一杯で自分の果たした成果を見ていなかった
別に一度も手を出していないわけではない、必要な物を買っていたぐらいだけど
「……今日は電車乗って遠いお店でも行くか!」
「えー!いいのぉ?」
「やったー!いっぱい買っていい!?」
「 いいに決まってるさ」
「やったぁ!」
「電車だー」
「俺初めて乗った」
そういえば俺も初めて乗ったな
初めて電話に乗り初めての遠出
初めて
『いってらっしゃい』
……忘れよう
明日高井たちと遊ぶけど絃葉たちをあの家に置くのは心配だな、
「わぁーっ!」
「でっかいでっかい!凄いよお兄ちゃん!」
「あまりはしゃぎすぎてはぐれるなよー? 」
確か2人にはいつも同じものばかりで新しいものを買ってやれなかったな
「お兄ちゃん見て!可愛いお洋服!」
「いいな!欲しいか?」
「欲しいっ!」
楽しかった
初めて兄弟で買い物をした
絃葉や奏汰が欲しいものや好きな服の種類を初めて知った
もっと向き合うべきだったな
「お兄ちゃん!」
「ん?」
「楽しい!」
「俺もとっても楽しいよ」
俺ってこんなに笑えたんだ
「んんっ、…」
「絃葉寝ちゃったな!」
「初めての買い物だったから楽しかったんだろうね」
ブー ブー ブー
ん?こんな時間に電話?
あ、周さん!?
「もしもし、どうしました?」
「勝手ながら今心琴くんの家の前にいるのだが、今家にいるかな?」
「すみません!今外にいて不在なんです!
ですけどもうすぐで家なので少し待っててください!」
「わかった、突然かけてごめんねまってるよ」
ピッ
「……」
「お兄ちゃん顔やばいよ」
「周さん!」
「心琴くん!ごめんね急に」
「いえいえこちらこそ!どうしたんですか?」
「梨を沢山貰ってね」
ダンボールを指さす
「結構ありますね、?」
「一応連絡入れたんだけど気づいてなかったかな?」
「あっ!すみません、携帯電源OFFにしてましたっ」
「いいんだよ!」
周さんに会えて嬉しい、
だけど家に帰りたくない
絃葉たちに何かあったら危ないよね
「周さん本当にすみません、妹たちを一瞬見て貰えますか?」
「全然大丈夫だよ」
周さんの優しい笑顔を見るとこっちまで心が安らいでくる
「ふぅっ」
ドアを開けたら何が待っているのだろうか
「何もありませんように」