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翌朝、湊は緊張しながら玄関を出た。三年ぶりの高校生活が始まろうとしている。
「おいおいマジかよ」
校門に向かう途中、男子生徒たちが集まっているのが見えた。彼らは一人の少女を取り囲んでいるようだ。
「ちょっと教えてくれよ、そのスキル見せてくれない?」
「いいじゃないか。減るものじゃないだろ?」
少女は困った表情で後退りしていた。湊の胸の中で何かが疼いた。異世界でも似たような光景は何度も見たことがある。
「やめろ!女の子嫌がってるじゃないか!」
突然声を上げた湊に、男子生徒たちの視線が集中した。
「あぁん?誰だテメェ」
リーダー格らしき大柄な男が前に出てきた。湊は一瞬躊躇したが、ここで引き下がるわけにはいかなかった。
「彼女が嫌がってるだろ」
大男が睨みつけながら近づいてくる。湊は拳を握り締めた。
「お前誰だ?新入りか?」
湊は深呼吸して答えた。
「湊だ。今日からここに通うことになった」
大男は鼻で笑う。
「フンッ!どうせお前も低レベルのゴミスキルだろうがな!」
彼のスキルを見ると、ゲラゲラと笑う。
「無能力者じゃないか。よくもまぁ堂々とこんな所に来れたな」
周囲の男子生徒たちも同調して笑い出す。しかし湊は平静を保った。むしろ心の中で炎が燃え上がっているのを感じた。
「確かに今は無能力者だ。だがそれは過去のことだ」
「今何と?」
大男が一歩詰め寄る。
湊は右手を差し出した。
「俺がスキルを得るのに必要なことは一つだけだ」
男子生徒たちが訝しげな顔をする中、彼は手を掴んだ。湊は小声で呟いた。
「記憶改ざん……完了」
突然大男の目が虚ろになり、「ごめんなさい……」と言い残して去っていく。周りの生徒も次々と困惑した様子で立ち去る。
少女は驚きの表情で湊を見つめていた。
湊は微笑みかけた。
「大丈夫か?」
少女は頬を赤らめて頷いた。
「はい……ありがとうございます」
「お礼なんていいよ」と言いながらも湊は内心ほっとしていた。
(これが俺の能力……触れるだけで相手の記憶を変えて、能力と手に入る力か)
異世界での経験と新たに得た力。これが彼の復讐への第一歩となることを確信した。しかし同時に複雑な思いも抱える。
「奪った能力は……」
どうやら彼の能力は身体強化とコピー能力だ。今の彼はどちらも使うことができるようになっている。
湊は静かに心の中で呟く。
(これは素晴らしい報酬だな)
少女が恐る恐る尋ねてきた。
「あの……あなたは何者なんですか?」
「ただの転校生さ」と答える湊。彼の瞳の奥には決意の色が宿っている。
「君の名前は?」
少女は恥ずかしそうに答えた。
「私は鈴村葵といいます」
葵との出会いが新たな展開への幕開けになることなど予想もできずにいた。しかし確かな事実がある。今日という日が始まる。新たな日常と共に。
「これからよろしくね」と湊は言った。
彼の新しい学校生活の一日がついに始まろうとしていたのである。